伸展刺激
オレンジサイエンスは、ライフサイエンスの中でも細胞生物学分野に関する研究機器に特化して販売およびサポートをしている会社です。
このページでは、伸展刺激について、細胞伸展刺激システム「STREX」や空気圧駆動でマイクロプロセッサ制御の細胞伸展刺激装置「FlexCell」を例に、伸展刺激とはどんな刺激なのか、伸展刺激が用いられる細胞例やサンプル例、メリットやアプリケーション例、細胞伸展刺激装置についてご説明します。
伸展刺激とは
伸展刺激とは、細胞や組織が体内で受ける伸び縮み方向の刺激のことです。日常的な運動や自然な動きのプロセスでは、体内の細胞や組織に物理的な力(伸展、圧縮、せん断応力など)がかかります。細胞はこのような機械的刺激を感知し、様々な生化学的経路を介して反応しています。
細胞を研究する際には、伸展刺激などを与え、体内に近い環境で細胞を培養することで、体内環境と同じ状態で細胞の研究を行うことができます。
体内にある細胞は何らかの刺激を常に受けて動いており、細胞を研究する際は体内環境と同じ環境を再現し、細胞の培養や観察を行う必要があります。
伸展刺激に用いられる装置
伸展刺激には細胞伸展刺激装置が用いられ、シリコンやPDMSなどの伸縮素材の上で細胞を培養し、伸び縮みの刺激を与えながら細胞を培養します。細胞伸展刺激装置を用いることで細胞に伸展刺激を与えながら培養することができます。
1軸や2軸方向、360度方向の伸展刺激を継続的に与える装置やシート状のサンプルの伸展刺激を得意とする装置、電子刺激を与えながら伸展刺激を行える装置や3Dの組織伸展刺激が可能な装置など、目的に応じて様々な装置が使い分けられます。また、伸展以外にも圧縮刺激や静水圧刺激を行う装置、負荷やフォース測定を同時に行える装置など、多種多様な装置が用いられます。
伸展刺激のメリット
細胞に伸展刺激を与えることで、細胞が成熟する効果や遺伝子・タンパク質発現が見られる、伸展刺激を与えている際の細胞の様子を観察できる、などのメリットがあります。
また、伸展刺激を与えるサンプルと刺激を与えないサンプルを比較することで、細胞活動や細胞の移動変化、細胞増殖、エネルギー代謝、シグナルメディエーター、細胞間コミュニケーション、タンパク質の合成、分泌、分解の速度、薬理作用への反応、最終的な形態などの比較ができます。
伸展刺激のアプリケーション例
細胞への短時間・長時間刺激による研究・観察、各細胞への刺激実験、細胞内のシグナル伝達研究、細胞形態の研究、リアルタイムでの細胞観察、タンパク質発現の研究、遺伝子発現、イオンチャンネル、再生医療に関わる細胞の研究など、多種多様な用途で伸展刺激は用いられます。
伸展刺激が用いられる細胞やサンプル
伸展刺激はあらゆる細胞に応用でき、主に用いられる細胞としては、筋肉、肺、心臓、血管、皮膚、腱、靭帯、軟骨、骨の細胞や心筋細胞、ips細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、血管前駆細胞、血管内皮細胞、幹細胞、脂肪、上皮細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、などの身体内のあらゆる細胞や組織の研究、再生医療に関する研究に用いられます。
伸展・圧縮刺激装置
STREX・CellScale・IonOptix
オレンジサイエンスでは伸展刺激に使用できる研究装置をアプリケーションに応じてご用意しております。1軸方向の伸展刺激、2軸方向の伸展刺激、3D組織伸展刺激、シート状マテリアルの伸展、伸展刺激+電気刺激、伸展・圧縮刺激+負荷測定など、多様な伸展刺激装置を研究用途に合わせてご使用できます。
STREX/ストレックス社
独自のシリコンチャンバーを伸展させることにより、チャンバー上の細胞に伸展刺激を与えることが可能な細胞伸展刺激装置です。顕微鏡搭載モデルは、倒立顕微鏡での伸展細胞の観察も可能です。
CellScale/セルスケール社
Mechano Cultureシリーズの機械的刺激培養装置はモデルにより、360度伸展、シリコンチャンバー伸展、マテリアル伸展、流体圧縮、機械的圧縮+データ測定、マテリアル伸展+データ測定が可能です。

IonOptix/イオンオプティクス社
C-Stretchシステムはシリコンチャンバーを採用した伸展培養装置です。C-Pace EMシステムと使用することにより、伸展刺激と同時に、電気刺激を与えることも可能です。

用途別
1軸方向の伸展刺激
2軸方向の伸展刺激
3D組織伸展刺激
シート状マテリアルの伸展
圧縮・加圧刺激
伸展・圧縮刺激+負荷測定
伸展刺激+電気刺激
細胞伸展刺激システム - STREX
In-Vitro 培養細胞の機械的伸展刺激
専門的な伸展装置を用いての細胞伸展・物理状態のシミュレート
生きている細胞はダイナミックな物理学的な環境に存在し、様々な機械的な刺激により変化します。
例えば、心筋細胞、上皮細胞、平滑筋細胞それに骨細胞等の細胞は、常に伸展を行っています。
細胞は、機械的受容体と呼ばれる受容体とチャンネルを通して、その機械的環境を把握しており、接着、増殖、運動、形態または人工物の変化による刺激に反応します。しかしながら、自然下でこれらの刺激に取って代わる物が試験管内分析にはありませんが、STREX社製の細胞伸展装置は、特殊なPDMSストレッチチャンバーに細胞を接着させ、それを伸展させることにより、培養細胞に機械的に刺激を加える事ができます。STREXでは、生産性の高い長期間の伸展刺激モデルと、倒立顕微鏡にセットして使用できる生細胞イメージングモデルがあります。
自動伸展刺激装置
手動伸展刺激装置
一軸伸展刺激システム
二軸性伸展刺激装置
伸展刺激装置 Flex Jr
オレンジサイエンスが扱う伸展刺激装置 Flex Jrは、1プレート用の伸展刺激培養装置で、制御された刺激条件を培養細胞に与え、繰り返し可能な用量反応実験を行うことができます。
細胞の移動や増殖、代謝、遺伝子、タンパク質の発現、細胞シグナル伝達経路、薬剤反応を観察したり、組織工学用の3D細胞播種コラーゲンコンストラクトを作成したりすることができます。
Flexcell社の製品は世界中の1,300以上の研究室で使用されており、4,000以上の研究論文に引用されています。
1プレート用 伸展刺激培養装置 Flex Jr.の特徴
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コンピューター制御のバイオリアクター。真空圧と正圧でフレキシブルボトムの培養プレート上の細胞に、周期的または静的な機械的刺激を与えます。
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単層、または3次元の細胞に、制御された静的または周期的な機械的刺激を与えます。
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生体内組織の負荷と周波数を、生体外でシミュレートできます
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最先端のデジタルバルブが、レジメンの真空圧と正圧を自動的に調整します
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筋肉、肺、心臓、血管、皮膚、腱、靭帯、軟骨、骨の細胞のin vivo状態を模倣します。
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細胞を播種する表面に、予めECMコーティング(細胞外マトリックスコーティング)がされているため手間・時間を節約できます。
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消耗品(専用培養プレート)がリーズナブルに購入できるため、ランニングコストを抑えることができます。(6wellが標準のため、1wellあたりのコストが低く抑えられます。)
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専用培養プレートの培養エリアが広いため、観察が容易です。
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FlexSoft®FX-6000™ソフトウェアにより、1つのレジメンで複数の周波数、振幅、波形の変更をプログラムできます
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Windows 10に対応
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Bioflex®培養プレートと円柱状のローディングポストにより、等二軸伸展負荷が可能です。
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ローディングステーションを削除することにより、勾配ひずみ、または無拘束膨張を実現。
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利用可能な波形:静的、正弦波、心臓刺激、三角波、方形波、カスタム
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モーターを使用していないため、不必要な熱が発生しません


等二軸伸展用培養プレート BioFlex
Inverted Stage Flexer(観察用チャンバー)
BioFlexの代わりに、Inverted Stage Flexerを使用することも可能です。
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54mm径のシリコン膜の上で細胞の培養が可能です。(培養エリア 22.9 cm2)
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StageFlexer 上の細胞は、通常の倒立顕微鏡で観察可能です。
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デバイスは、通常の倒立顕微鏡に直接取り付け可能です。
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シリコン膜の伸展範囲は1.6%~12%です。
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焦点距離ニーズを満たすために、Z方向の測定が必要です。
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簡単にセットアップ可能です。(5つのパーツのみ)

Inverted Stage Flexer
伸展刺激培養装置の設置例

注意
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真空圧用のポンプが必要となります。
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Pressure Reservoirはオプションとなります。(エアーのスパイク防止)
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Water TrapはFlexlinkよりも低い位置に設置してください。
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FlexlinkからBaseplateのチューブは3m以下にしてください。(3m以下であれば問題ございません。)
エアーソース(ポンプ)
Flex Jr.には真空圧には下記スペックが必要です。下記メーカー推奨品か、同等品をご用意ください。
真空圧用ポンプ
メーカー:Leybold
型番:Trivac D8B
最大圧力: -100kpa
Flow Rate:5.7 ft³ / min (161 L / min)

伸展刺激培養装置 関連製品

伸展刺激培養装置専用培養プレートです。

専用培養プレート(BioFlex)に等二軸伸展を与えるのに使用します。

専用培養プレート(BioFlex)の中心に細胞を培養し、Loading Stationと使用することにより、均一に伸展刺激を与えることができます。
Flexcell社とその製品について
Flexcell社では、in vitroの2Dや3D培養上の細胞に機械的刺激(伸展、圧縮、せん断応力)を加えるダイナミックなセルストレッチングバイオリアクター、アクセサリー、消耗品をデザインしています。細胞の移動や増殖、代謝、遺伝子、タンパク質の発現、細胞シグナル伝達経路、薬剤反応を観察したり、組織工学用の3D細胞播種コラーゲンコンストラクトを作成したりすることができます。Flexcellが開発した細胞増殖用バイオリアクター システム、アクセサリー、消耗品は、世界中の研究者のニ ーズに対応しています。再現性のある機械的刺激や容易なデータ収集を必要とする研究、in vitroでの細胞培養やin vivoに近い環境を必要とする研究など、Flexcellは研究者の方々に最適なセルストレッチングバイオリアクターシステムを提供しています。
Flexcell社の製品は世界中の1,300以上の研究室で使用されており、4,000以上の研究論文に引用されています。
Flexcell 伸展刺激セルストレッチングバイオリアクターの
In Vitroでの働き
Flexcellは30年以上にわたり、独自の真空圧技術を用いて培養中の細胞をストレッチする製品の設計、 開発、製造を専門に行ってきました。Flexcell社は、細胞力学、サイトメカニクス、組織工学、創薬、整形外科、心臓血管、肺の研究などに携わる研究者の方々のために、商業的に利用可能なセルストレッチングソリューションの開発と製造に関する全般的な知識と経験を保有しています。
Flexcell社独自の空気圧式セルストレッチングバイオリアクターは、真空圧を利用して、細胞の増殖と成長に最適なin vivo環境をシミュレートし、in vitroモデルや3D組織を作成することで、細胞力学の研究を一歩先に進めます。
モーター駆動のシステムではなく、正圧と負圧の空圧システムを使用することにより、電界や磁界、振動の干渉を受けずに十分なひずみを加えることができます。Flexcellセルストレッチングバイオリアクターでは、空気圧式真空システムによりメンブレン全体に均等なひずみをかけることができるので、より多くの増殖表面積を確保することができます。特殊なフレキシブルボトム培養プレートは、あらかじめ滅菌され、共有結合した様々なマトリックスコーティングと剛性でプレコートされています。
体外での機械的刺激・伸展刺激
日常的な運動や自然のプロセスでは、体内の細胞や組織に物理的な力(伸展、圧縮、せん断応力など)がかかります。細胞はこのような機械的刺激を感知し、機械的伝達と呼ばれる様々な生化学的経路を介して反応します。メカノトランスダクションに関与するさまざまなシグナル伝達物質、タンパク質、遺伝子などを理解することは、新しい治療法や薬剤を開発するための鍵となります。メカノバイオロジーの分野では、これらの物理的要因が、分子、細胞、組織レベルでの機械的伝達プロセスにどのように影響するかを研究しています。
in vitroでの機械的刺激の変化
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細胞の移動
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細胞増殖
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エネルギー代謝
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シグナルメディエーター
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細胞間コミュニケーション
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薬理作用への反応
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タンパク質の合成、分泌、分解の速度
*静止した環境下で培養された細胞と比較して
クライアントレビュー
「Flexcell Compression Plus システムを使用することで、カスタムデザインのハイドロゲルキャリア内での多細胞凝集体(MCA)の長期圧縮が可能になりました。結果として、上皮間葉転換に関連する遺伝子の発現の変化と、コラーゲンゲル上で圧縮されたMCAの分散の変化を確認できました。」
米国、ノートルダム大学生物科学科・Klymenko博士
「細胞移動の原動力としての流体せん断の研究、すなわち「フロータキシス」の研究、およびそのような挙動を支配する分子メカノセンサーの研究(例えば、本研究でテストされたROCK)は、細胞移動に基づくホメオスタシスの基本的な理解に新たに改善された洞察を提供してくれる可能性があります。フローレジメンは、Flexcell® International Corp.が提供するStreamSoft v.4.1ソフトウェアで制御されたペリスタルティックポンプとOsci-Flowデバイスによって制御することができました。」
米国、ネブラスカ大学リンカーン校工学部機械・材料工学科、Riehl博士
「細胞は,フレキシブルなシリコンボトムプレート(Flexcell® Tension System)に,1ウェルあたり3×105個の密度で播種しました。病的に上昇したサイクリックストレッチは,miR-27aの分泌を増加させました。このmiR-27aは,VSMCからVSMC-MPを介してECに移行し,続いてGRK6を標的とし,ECの増殖を誘発しました。局所的にmiR-27aを減少させることは、高血圧におけるECの異常な増殖を抑制するための新しい治療法となりえます。」
中国、上海交通大学生命科学・バイオテクノロジー学部機械生物学・医用工学研究所・王博士
論文一覧
Flexcellの論文一覧ページでは、Flexcellを用いた論文一覧を細胞や組織毎に閲覧できます。論文一覧リストでは、使用した装置の種類や細胞の種類ごとに分類されてるので、どの装置がどのような細胞に使用されているかを確認できます。
インストラクション動画
インストラクション動画ページでは、Flexcellのセットアップに役立つ動画をご用意しております。
デモ機貸し出しについて
1プレート用 伸展刺激培養装置Flex Jr.デモンストレーション機の貸し出しを無料にて行っております。実際の試験環境や使用環境で装置をお試しいただき、機能や性能、使いやすさ、製品の大きさ等を事前にご確認いただけます。貸出期間や詳細等はお問い合わせください。