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無拘束ECG測定・非侵襲的心電図

  • Orange Science
  • 9月26日
  • 読了時間: 13分

動物モデルにおける無拘束ECG測定

動物モデルにおける無拘束ECG測定とは、実験動物を拘束具や麻酔にかけることなく、自然な行動状態で心電図(ECG)を記録する方法のことを指します。

従来のECG測定では、動物を固定したり麻酔を使用したりする必要がありましたが、これらは心拍数や心電図波形に影響を与えるため、生理学的に自然な状態を反映しにくいという課題がありました。無拘束ECG測定では、動物が自由に動き回れる状態で心臓活動を記録できるため、より正確に生体に近いデータを得ることが可能になります。


方法としては、大きく分けて2つあります。

  1. テレメトリー方式:動物体内に小型の送信機を埋め込み、心電信号を無線で送信して記録する方法。長期間かつ高精度のデータ取得が可能です。

  2. 非侵襲方式:拘束せずに通路型装置や外部電極で心電信号を取得する方法。侵襲性が低く、短時間の測定に適しています。


この測定法は、循環器疾患モデル、薬理試験、安全性評価、毒性試験などの研究で広く用いられています。


無拘束ECG測定のアプリケーション例

  1. 新薬候補の安全性評価 QT延長、不整脈誘発、心拍変動への影響など、薬剤による心毒性の評価に利用されます。拘束や麻酔の影響がないため、より臨床に近いデータが得られます。

  2. 循環器疾患モデル研究 高血圧モデル、心不全モデル、虚血再灌流モデルなどで、病態進行に伴う心電図の変化を長期にわたって追跡可能です。

  3. 毒性試験 化学物質や環境因子の慢性的な曝露による心臓への影響を評価する際に用いられます。

  4. 自律神経機能解析 心拍変動(HRV)の解析を通じて、自律神経バランス(交感神経・副交感神経活動)を評価できます。ストレスや睡眠の研究にも応用されます。

  5. 遺伝子改変動物の表現型解析 心疾患関連遺伝子を改変した動物で、先天性不整脈や電気生理学的異常の有無を自然な状態で確認できます。

  6. 薬効試験 抗不整脈薬、降圧薬、心不全治療薬などの有効性を心電図指標で評価する際に活用されます。

  7. 薬理試験・安全性薬理 新薬候補の心毒性(QT延長や不整脈誘発性など)を自然な行動下で検証。

  8. ストレスや睡眠研究 行動や環境変化に伴う自律神経反応を心拍変動解析によって評価。


テレメトリー方式と非侵襲方式それぞれの適用例

【テレメトリー方式の適用例】

  • 長期的な疾患モデル研究 心不全や高血圧モデルで、数週間から数か月にわたりECGを連続測定して病態進行を追跡。

  • 薬剤の慢性投与試験 長期投与による心臓への影響(QT延長、不整脈発生率、心拍変動の変化)を評価。

  • 複数生理指標の同時計測 ECGに加え、血圧、体温、活動量を同時記録し、薬理効果や毒性を総合的に評価。

  • 睡眠や自律神経研究 行動データとECGを組み合わせ、睡眠段階やストレス応答の解析に利用。


【非侵襲方式の適用例】

  • 短時間の薬効評価 急性薬理試験で、投与直後の心拍数やECG波形の変化を迅速に測定。

  • 安全性薬理試験のスクリーニング 候補化合物を多数検討する際に、侵襲的手術を伴わず効率的に心毒性リスクを評価。

  • 遺伝子改変マウスの表現型解析 心臓関連遺伝子改変モデルで、短時間のECGを取得し不整脈や伝導異常を確認。

  • 行動・薬理試験との併用 開放場試験など行動試験中に同時に心拍を測定し、行動と生理反応の関連を解析。


無拘束ECG測定は、安全性薬理から基礎研究、毒性評価まで幅広い分野で使われており、長期・高精度のデータが必要な場合はテレメトリー方式、多数サンプルのスクリーニングや短期評価は非侵襲方式が適しています。


無拘束ECG測定が活用される動物モデル

無拘束ECG測定は、心疾患や薬理・毒性評価に関連する多様な動物モデルで活用されています。代表的な例を挙げます。


げっ歯類(マウス・ラット)

  • 高血圧モデル(例:SHRラット) 高血圧進展に伴う心肥大、不整脈、QT延長の評価。

  • 心不全モデル(圧負荷モデル、薬剤誘発モデル) 左室機能不全や心拍変動低下を無拘束状態で追跡。

  • 虚血再灌流モデル 心筋梗塞後の不整脈や電気生理学的異常を解析。

  • 遺伝子改変マウスモデル イオンチャネル異常、先天性不整脈、心筋症などの表現型解析。

ウサギ

  • QT延長やトルサード・ド・ポワントなどの薬剤誘発性不整脈の研究に利用。ヒト心電特性に近いため安全性薬理で重要。

イヌ

  • 不整脈評価や心毒性試験。心拍変動や自律神経応答の研究でも用いられる。

ブタ

  • 心臓の解剖学的・電気生理学的特徴がヒトに近いため、心筋梗塞や心不全研究、安全性薬理試験に広く活用。

その他大型動物

  • サルやヒツジなどで、長期テレメトリーによる安全性試験や心血管研究に利用されるケースもある。


マウスやラットが基礎研究・遺伝子解析に多用され、ウサギ・イヌ・ブタなど大型動物は前臨床や安全性評価で活用されています。


無拘束ECG測定の研究例

無拘束ECG測定は、基礎研究から前臨床試験まで幅広く活用されています。


  1. 薬剤の心毒性評価

    • 新規抗がん剤や抗うつ薬候補の投与により、QT間隔延長や不整脈が発生するかを無拘束テレメトリーで長期的にモニタリング。

    • ICH S7B(心毒性試験に関する国際指針)の一環として利用される。

  2. 高血圧モデルラットでの心電図解析

    • 自然発症高血圧ラット(SHR)において、加齢に伴う心拍変動低下や心肥大進行を無拘束下で追跡。

  3. 心筋梗塞・虚血再灌流モデルの不整脈研究

    • ラットやブタにおいて、冠動脈結紮や再灌流後の不整脈発生を無拘束ECGで解析し、抗不整脈薬の効果を検証。

  4. 遺伝子改変マウスの表現型評価

    • 心筋イオンチャネル欠損マウスで、先天性QT延長症候群や心房細動様の異常波形を自然な行動下で確認。

  5. 睡眠・自律神経機能研究

    • マウスの睡眠覚醒リズムと心拍変動を同時計測し、ストレス応答や睡眠薬の作用を評価。

  6. 毒性学研究

    • 環境化学物質や農薬曝露による心拍リズム異常を、ラットやマウスで非侵襲ECGによりスクリーニング。

  7. 大型動物での前臨床試験

    • ブタやイヌを用いて、新規医薬品や医療機器(例:植込み型デバイス)の心機能への影響を無拘束テレメトリーで長期評価。


これらの研究に共通する利点は、拘束や麻酔による人工的影響を排除し、生理的に近い条件で心電図データを取得できることです。


無拘束ECG測定 emka TECHNOLOGIES社 ecgTUNNEL

emka TECHNOLOGIES 社の ecgTUNNEL は、無拘束での小動物(マウス・ラット)向けの非侵襲的 ECG 測定システムとして設計されています。

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機能概要

ecgTUNNEL は以下の要素を備えています:

  • 4 つの導電パッド(電極板)を備えたベース部。被験動物の四肢(足)をこの電極に接触させて心電信号を取得。

  • 被験動物をやさしく固定する「トンネル(筒状の管)」部。動物をトンネル内に設置することで、極端な動きを抑えながらも麻酔や外科手術は不要にする設計。

  • 最大 6 チャンネル(6 リード)までの ECG 取得が可能。

  • 呼吸(Respiration)指標も取得可能なオプション機能(プレチスモグラフィ形態、気流/圧変化測定を併設できる)

  • データ取得・分析には IOX2 ソフトウェアおよび専用モジュール(ecgAVG モジュールなど)を用いる。ecgAVG モジュールでは、記録中の良好な部分を選択しビート平均化して波形解析する機能がある。

  • スナップショット的な記録(短時間、数分間程度)を前提としており、長時間連続記録には向いていない構成。


ecgTUNNEL の活用可能な用途・利点

ecgTUNNEL を無拘束ECG測定に活用する際には、以下のような場面・目的で有効です。

  1. 麻酔や外科手術が許されない/望ましくない場合の ECG 測定  特に、モデル動物が極めて若齢、体格が小さい、あるいはストレスに弱い(脆弱モデル)といった条件下では、埋込み型送信機手術が負荷になることがあります。ecgTUNNEL はこれを避けつつ、非侵襲で ECG を取得可能です。

  2. 短時間スナップショットレベルでの心電図取得  薬剤投与直後反応や急性効果、1 回/日程度の定点観察(縦断評価)など、数分から数十数分単位での ECG 取得が目的の実験に向きます。ecgTUNNEL は複数日連続で被験動物を測定するような縦断実験にも適用可能です。

  3. 高スループットスクリーニング  外科手術を伴わないため、被験動物数を比較的多く扱いやすく、薬理スクリーニングや候補化合物の初期評価段階で役立ちます。

  4. 遺伝子改変マウス・表現型解析  トランスジェニックやノックアウト/ノックインマウスにおいて、電気生理学異常(QT 延長、伝導異常、心拍変動異常など)を、麻酔や手術操作の影響を排して確認したい場合に利用され得ます。emka の公式資料でも、複数のモデルで ecgTUNNEL を用いた電気生理学的評価事例が紹介されています。

呼吸・心拍/呼吸同期応答解析

  呼吸モジュール併用により、心拍と呼吸の同期性や呼吸性変動との関連を解析する用途も可能です(たとえば自律神経応答あるいは呼吸影響を併せて評価したい研究)。


emka TECHNOLOGIES社 ecgTUNNEL

研究開発において心電図の高精度な取得は、安全性評価や循環器疾患研究に欠かせないプロセスです。emka TECHNOLOGIES社のecgTUNNELは、小動物モデルを対象とした無拘束ECG測定を可能にする非侵襲的なシステムです。麻酔や外科的処置を必要とせず、トンネル構造によって動物に過度なストレスを与えることなく、短時間で安定した心電図データを取得できます。


本装置は薬理試験や毒性評価、さらには遺伝子改変モデル動物の表現型解析など、幅広い研究用途に活用でき、従来の侵襲的手法に比べて効率的かつスループットの高いデータ収集を実現します。研究現場において信頼性と利便性を両立した心電図測定ソリューションとして、ecgTUNNELは最適な選択肢です。







<製品紹介>

emka TECHNOLOGIES社

ecgTUNNEL ECG&呼吸測定

マウス・ラット・ハムスターなど小中動物用


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<特長>

・外科手術や麻酔不要で、ECG最大6リード取得

・マウスモデルは15-60g、ラットモデルは300-1100gまで対応

・測定装置とパソコンの接続は USBケーブルだけ

・オプション追加で呼吸測定とネビュライザー暴露が可能




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ベースにある4つの電極パッドに動物の四肢が触れることでECGを測定





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ECG測定だけなら、

カバー(ドーム)は必要ありません




その他の製品

easyTEL+デジタルテレメトリー


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埋め込み型テレメトリー

easyTEL+ デジタルテレメトリーは、小型動物から大型動物まで、複数の生体電位、体温、活動量、呼吸数を測定可能です。また、全身プレチスモグラフィーと組み合わせることで、心肺機能の測定にも利用できます。




easyTEL+ RP

再利用可能なテレメータ

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easyTEL+RP 再利用可能なテレメータは、最大4つの低ノイズ生体電位(皮質または穿刺型EEG、EMG、ECG、EOG)および200g以上のげっ歯類の活動を測定できます。また、全身プレチスモグラフィーと組み合わせて心肺機能測定にも使用可能です。


大型動物では、テレメータの外科的埋め込みなしで神経学的変化と活動変化を収集します。被験者は、ジャケットやヘルメットに収納された外部送信機と、頭皮に配置された表面電極を装着します。


外部送信機は、被験者、コホート、研究間で再利用可能であり、大規模な被験者プールを要する行動研究の初期費用を削減します。emka TECHNOLOGIES社の送信機のカスタム設計(電極、電極線、極性)と、ユーザーが設定可能なサンプリングレート、解像度、ゲインを組み合わせることで、ユーザーは多様な研究設計オプションを利用できます。交換可能なバッテリーは、連続記録で最大150時間持続します。









vivoFlow+


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げっ歯類用全身プレチスモグラフィー

動物モデルを用いた非臨床研究において、全身プレチスモグラフィーは重要な役割を果たします。呼吸のモニタリングにより、呼吸パターンの変化や呼吸系に与える生理学的影響を測定できます。


vivoFlow+全身プレチスモグラフィーは、同じ被験体でストレスや不快感を与えることなく繰り返し測定が可能です。刺激を導入する前のリラックスした状態において、正常な呼吸機能の基準データ(潮式呼吸量、呼吸頻度、空気の流れパターン)を提供し、その後、実験手順中の呼吸変化を継続的に追跡できます。


全身プレチスモグラフィーとデジタルテレメトリーを同期化されたプラットフォーム上で組み合わせることで、呼吸データと神経学的データの同時分析が可能です。






emka TECHNOLOGIES 小動物用テレメトリー easyTELシリーズ


マウス用テレメトリー easyTELは完全に埋め込み可能なテレメトリー・遠隔測定システムで、意識下で自由に動く体重20g以上の小型被験体から生理学データを送信します。前臨床研究で使用することを目的としたeasyTEL-Sサイズのインプラントはマウスに最適で、生体電位(ECG、EEG、EMG、EOG)*、体温、活動を継続的に記録する能力を提供します。


ラット用テレメトリー easyTEL+は完全に埋め込み可能なデジタルテレメトリー・遠隔測定システムで、意識を持って自由に動く実験動物から生理学的データを送信します。前臨床研究(主に毒性学、薬理学、安全性薬理学研究)やバイオディフェンスで使用することを目的としたeasyTEL+インプラントは、ラットのような200gを超えるげっ歯類に最適です。さまざまなモデルで、生体電位(ECG*、EEG*、EMG*、EOG*)、血圧(動脈圧および/または左心室圧)、呼吸数**、体温、加速度を連続的に記録できます。

 

オレンジサイエンスはemka TECHNOLOGIESの日本総代理店です。日本では唯一emka TECHNOLOGIES社と取引できる窓口となっております。日本国内で展開される様々な研究プロジェクトを支え、研究者の皆様がより効果的かつ効率的に研究を進められるよう、迅速で専門的なサポートを提供しています。


*心電図(ECG)、脳波(EEG)、筋電図(EMG)、眼電図(EOG)

**胸膜または血圧または横隔膜EMGに由来します。



easyTEL+S マウス用テレメトリー


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マウス用テレメトリー easyTEL+Sは完全に埋め込み可能なテレメトリー・遠隔測定システムで、意識下で自由に動く約20gまで小動物から生理学データを送信します。

 

前臨床研究で使用することを目的としたeasyTEL+Sのインプラントはマウスに最適で、生体電位(ECG、EEG、EMG、EOG)*、体温、活動を継続的に記録する能力を提供します。




easyTEL+ラット用テレメトリー

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ラット用テレメトリー easyTEL+は完全に埋め込み可能なデジタルテレメトリー・遠隔測定システムで、意識を持って自由に動く実験動物から生理学的データを送信します。


前臨床研究(主に毒性学、薬理学、安全性薬理学研究)やバイオディフェンスで使用することを目的としたeasyTEL+インプラントは、ラットのような200gを超えるげっ歯類に最適です。






easyTEL+ 大型動物用テレメトリー

大型動物用テレメトリー easyTEL+は完全に埋め込み可能な大型動物用デジタルテレメトリーシステムです。

意識を持って自由に動く実験動物から生理学的データを送信します。遠隔で管理・設定することができます。

前臨床研究(主に毒性学、薬理学、安全性薬理学研究)やバイオディフェンスでの使用を想定したeasyTEL+インプラントは、1kgを超える大型動物に最適です。


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emka TECHNOLOGIES

emka TECHNOLOGIES社は、1992年にフランスで設立され、当初は、アイソレーテッドオーガンバスやランゲンドルフ灌流装置を開発、製造しており、2000年には非侵襲性のテレメトリーをリリース、2014年には、SCIREQ社(カナダ)をグループに入れることにより、呼吸器研究用機器を製品ポートフォリオに加え、幅広い分野の機器を、世界の研究者の方々に提供しています。

 

オレンジサイエンスはemka TECHNOLOGIESの日本総代理店です。日本では唯一emka TECHNOLOGIES社と取引できる窓口となっております。日本国内で展開される様々な研究プロジェクトを支え、研究者の皆様がより効果的かつ効率的に研究を進められるよう、迅速で専門的なサポートを提供しています。



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​​主な製品

  • マウス・ラット用テレメトリー

  • ジャケットテレメトリー

  • オーガンバス

  • ランゲンドルフ





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主な製品

  • マウス・ラット肺機能測定装置

  • マウス・ラット呼吸測定装置

  • 吸入暴露装置

  • ​細胞暴露装置




その他の製品


Precisionary ビブラトーム(振動式ミクロトーム)

組織切片作製


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Precisionary ビブラトームは細胞や組織の切片を特許取得済みの圧縮技術によりビビリなしで作製し、急性組織上の多くの生存細胞を維持します。肺機能を解析した後、肺を取り出しスライスしたり、肺1つから複数の組織サンプルを取得することが可能です。

  • 従来のビブラトームの5倍の速さで切開し、ブレードを組織に当てる時間を短縮し、より良い切開を実現

  • Auto Zero-Zテクノロジーにより、Z軸のたわみを1 µm未満に低減

  • 高周波振動メカニズムにより、ビビリマークを低減または除去

  • 持ち運びに便利な軽量設計

  • 完全自動化:切開+厚み調整

  • 360度のアガロース包埋により、切断プロセス中に組織を安定化






Etaluma Lumascope

インキュベーター内で使用できる3色蛍光ライブセルイメージング蛍光顕微鏡



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EtalumaのLumascope(ルマスコープ)は、優れた感度、解像度、ゼロピクセルシフトを備えた、半導体光学の新しいコンセプトで設計された、倒立型小型蛍光顕微鏡です。日々顕微鏡を使用する科学者によって考案、設計され、そのコンセプトデザインにより、インキュベーター、ドラフトチャンバーなどの限られたスペースの中で使用でき、幅広いラボウエアでのライブセルイメージングを可能にします。

多点観察モデル、定点観察モデルがあり、様々な観察シーンに対応できます。









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