心筋収縮
オレンジサイエンスは、ライフサイエンスの中でも細胞生物学分野に関する研究機器に特化して販売およびサポートをしている会社です。このページでは、心筋がどのような筋肉か、また、心筋収縮についてその仕組みと心筋収縮に関連する研究例や心筋収縮の測定に使用できる装置情報などご紹介します。
心筋の働き
心臓は、血液を全身に巡らせるポンプのような働きを担っており、体内でも重要な組織の一つです。心臓は収縮と弛緩を繰り返し血液を送り出していますが、心臓の収縮と弛緩は心臓の筋肉である心筋によって行われています。
心筋とは
心筋とは、心外膜と心内膜に挟まれた心壁の中間層を構成している筋肉です。心筋は、心筋細胞と線維芽細胞の2種類の細胞から構成されており、電気刺激によって心壁の収縮と弛緩に作用しています。
心筋収縮とは・心筋収縮の仕組み
心筋収縮とは心筋細胞が収縮することで、心筋細胞内のカルシウムイオン(Ca2+)の濃度が変化することによって心筋のミオシン(太い)組織とアクチン(細い)組織間の結合度合いが変化し心筋が収縮します。ミオシン組織とアクチン組織とそれらを構成する心筋の基本的な収縮単位であるサルコメア、カルシウムイオンの濃度が心筋の収縮力に影響を及ぼしています。

心筋の研究
心臓血管疾患は、先進国における主要な死因の一つです。心臓病や心不全の発症は、個々の心筋細胞の機能不全が原因であることがほとんどです。個々の心筋細胞は、イオン調節、力生成、弛緩機能、細胞シグナル伝達、遺伝子発現を調べることができる心筋の最も小さく、完全な機能を持つモデルシステムです。
生化学的、分子的、血行動態的な変化は心筋細胞の機能を根本的に変化させるため、心筋細胞機能の制御因子を理解することは原因の発見と治療の開発において不可欠となります。心筋細胞を用いた研究により、心筋梗塞、心房細動、成人突然死症候群などの心筋症に関する重要な情報が得られ、さらなる研究開発が進んでいます。
心筋細胞の収縮や弛緩の仕組みについてはまだまだ研究途上といえますが、心筋のカルシウムイオンやサルコメアなどの測定・研究を通じて心疾患や心筋梗塞などの心臓に関わる疾患の仕組みの解明や新薬研究、再生医療の研究につながっていきます。
心筋収縮測定装置 MyoCyteシステム
MyoCyteシステムは心筋細胞の機能研究に必要な蛍光光度計とデジタルセルジオメトリー測定を同時に取得できるソリューションシステムです。心筋細胞のカルシウムと収縮力を記録でき、プライマリーの単離心筋細胞の収縮性、サルコメア長の測定と、収縮時に放出するカルシウムの測定が同時にできる唯一のシステムです。
特徴
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プライマリーの単離心筋細胞の収縮性、サルコメア長の測定と、収縮時に放出するカルシウムの測定
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カルシウムフォトメトリと細胞週収縮を同時に同期して測定可能
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成体心筋細胞、骨格筋、iPSC-CMなど様々な種類の細胞に対応
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高速かつ定量的なカルシウム測定
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直感的な過渡解析が可能なソフトウェア
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特定の研究ニーズに合わせてカスタマイズ可能
MyoCyteシステムのアプリケーション例
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心臓病関連の治療薬の検証
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試薬投入後の収縮性変化の検証
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心筋細胞の収縮性、サルコメア長、カルシウムの測定
など、筋細胞の細胞長やサルコメア間隔をカルシウムデータと共に取得することを可能にします。
心筋収縮測定装置 MyoCyteシステムの詳細
20年以上、国内外で数多くの実績がある、マイオサイトシステム(MyoCyte System)は、画像解析による、細胞の収縮、サルコメアの測定、また2波長光源でレシオメトリックス方による細胞の蛍光測定が可能です。
お使いの蛍光顕微鏡にアドオンしてご使用になれます。
(※仕様条件がございますので、お問合せ下さい。)
近年では、この機能をそのままに、高性能カメラが一体となった全自動モデル、MultiCellシステムもリリースされております。

心筋収縮測定

CCDカメラで取得された画像の輝度値を2値化し、輝度値の差異がある個所を検出し、収縮値を計測します。
サルコメア測定

サルコメア横紋の明暗部分の輝度を波長表示し、収縮弛緩時の波形の変化を高速フーリエ変換し、値を測定します。
レシオメトリックスCa蛍光測定

レシオメトリック法により、340nm, 380nm, 340/380nmの値から、カルシウム蛍光計測をします。
動画 - システム構成と測定方法
システムの構成、測定方法はこちらの動画をご覧ください。
使用論文一覧
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Leptin Attenuates Cardiac Contraction in Rat Ventricular Myocytes
Marvie W. Nickola, Loren E. Wold, Peter B. Colligan, Guei-Jane Wang, Willis K. Samson, and Jun Ren/ 1 Oct 2000 https://doi.org/10.1161/01.HYP.36.4.501Hypertension. 2000;36:501–505 -
High‐fat Diet‐induced Obesity Leads to Resistance to Leptin‐induced Cardiomyocyte Contractile Response
Jun Ren, Bang-Hao Zhu, David P. Relling, Lucy B. Esberg, Asli F. Ceylan-Isik/ 06 September 2012 https://doi.org/10.1038/oby.2008.381 -
Effects of clenbuterol on contractility and Ca2+ homeostasis of isolated rat ventricular myocytes.
Siedlecka U, Arora M, Kolettis T, Soppa GK, Lee J, Stagg MA, Harding SE, Yacoub MH, Terracciano CM/ 01 NOV 2008 https://doi.org/10.1152/ajpheart.00258.2008 -
OVEREXPRESSION OF HEAT SHOCK PROTEIN 27 PROTECTS AGAINST ISCHAEMIA/REPERFUSION-INDUCED CARDIAC DYSFUNCTION VIA STABILIZATION OF TROPONIN I AND T.
Lu XY, Chen L, Cai XL, Yang HT/ 1 August 2008, Pages 500–508, https://doi.org/10.1093/cvr/cvn091 -
Mitochondrial matrix metalloproteinase activation decreases myocyte contractility in hyperhomocysteinemia
Moshal KS, Tipparaju SM, Vacek TP, Kumar M, Singh M, Frank IE, Patibandla PK, Tyagi N, Rai J, Metreveli N, Rodriguez WE, Tseng MT, Tyagi SC/ 01 AUG 2008https://doi.org/10.1152/ajpheart.00099.2008 -
G Protein–Coupled Receptor Kinase 2 Ablation in Cardiac Myocytes Before or After Myocardial Infarction Prevents Heart Failure
Raake PW, Vinge LE, Gao E, Boucher M, Rengo G, Chen X, DeGeorge BR Jr, Matkovich S, Houser SR, Most P, Eckhart AD, Dorn GW 2nd, Koch WJ/ 17 Jul 2008 https://doi.org/10.1161/CIRCRESAHA.107.168336Circulation Research. 2008;103:413–422 -
Late exercise training improves non-uniformity of transmural myocardial function in rats with ischaemic heart failure
Aït Mou Y, Reboul C, Andre L, Lacampagne A, Cazorla O/ 15 February 2009, Pages 555–564, https://doi.org/10.1093/cvr/cvn229 -
Pim-1 kinase antagonizes aspects of myocardial hypertrophy and compensation to pathological pressure overload
Muraski JA, Fischer KM, Wu W, Cottage CT, Quijada P, Mason M, Din S, Gude N, Alvarez R Jr, Rota M, Kajstura J, Wang Z, Schaefer E, Chen X, MacDonnel S, Magnuson N, Houser SR, Anversa P, Sussman MA/ September 16, 2008 105 (37) 13889-13894; https://doi.org/10.1073/pnas.0709135105 -
Adenosine A2A and β-adrenergic calcium transient and contractile responses in rat ventricular myocytes
Dobson JG Jr, Shea LG, Fenton RA/ 01 DEC 2008https://doi.org/10.1152/ajpheart.00927.2008 -
Hypertrophic cardiomyopathy in high-fat diet-induced obesity: role of suppression of forkhead transcription factor and atrophy gene transcription
Fang CX, Dong F, Thomas DP, Ma H, He L, Ren J/ 01 SEP 2008https://doi.org/10.1152/ajpheart.00319.2008