マウス体温のモニタリング
- Orange Science
- 1 日前
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マウス体温のモニタリングとは
マウス体温のモニタリングとは、実験動物であるマウスの体温を経時的に測定し、その変化を記録することを指します。体温はマウスの生理状態を反映する基本的なバイタルサインの一つであり、健康状態、ストレス、炎症反応、代謝、薬剤応答などを評価する上で重要な指標になります。
マウス体温を測定する主な目的
健康状態の把握 感染症、炎症、脱水、代謝異常、麻酔関連リスクなどの早期発見に用いられます。
疾病モデルの解析 敗血症モデル、炎症モデル、代謝疾患モデルなどで、体温変化が病態の進行指標になります。
薬効評価 体温変化は薬剤の有効性や副作用(発熱、低体温、代謝調整作用など)を反映するため、薬理試験で利用されます。
ストレス評価 取り扱いや環境変化によるストレスの指標として体温が用いられます。
行動・生理学研究 サーカディアンリズム、エネルギー代謝、覚醒・睡眠などの研究で体温リズムが解析されます。
マウス体温の測定方法
直腸温測定(接触式プローブ) 最も直接的な方法ですが、拘束が必要となるためストレスが加わり、短時間の測定に向きます。
埋め込み型テレメトリー(無線式体温計) 腹腔内や皮下に小型センサーを埋め込み、無拘束で連続モニタリングできます。 研究現場では一般的で、長期的データの取得に適しています。
赤外線サーモグラフィ 体表温から体温傾向を推定します。非接触でストレスは小さいですが、深部体温を直接測定するわけではありません。
ケージ内環境センサーと組み合わせた行動・体温解析 近年ではケージ内の自動モニタリングシステムが利用されることもあります。
体温モニタリングが重要な理由
マウスは体が小さく代謝が高いため、環境温度やストレス、病態によって体温が大きく変動しやすい特性があります。そのため体温は生理状態の鋭敏な指標とされ、実験の再現性確保や動物福祉の観点でも必ず確認される項目です。
マウス体温モニタリングの研究分野
マウス体温モニタリングは、多くの生命科学・医学分野で不可欠な指標として利用されています。特に深部体温や体温変動が病態や生理機能に直結する領域では、必須のデータとして扱われます。
1. 感染症研究
ウイルス、細菌、寄生虫などの感染に伴う発熱・低体温は、病態進行度や免疫応答を示す重要な指標です。例:敗血症モデル、インフルエンザ感染モデル
2. 炎症・免疫研究
炎症性サイトカインの上昇により体温が変化するため、炎症応答の強度や薬剤効果を評価する際に体温測定が利用されます。
3. 代謝・エネルギー生理研究
マウスは高代謝動物のため、エネルギー消費量や褐色脂肪の活性変化が体温に直結します。例:肥満モデル、糖尿病モデル、ミトコンドリア機能研究
4. 神経科学・行動研究
視床下部による体温調節機構、睡眠・覚醒リズム、ストレス反応などを解析する際に体温データが不可欠です。
5. 循環器・ショックモデル研究
ショック、低血圧、血流低下などは体温低下に強く反映します。例:出血性ショックモデル、心不全モデル
6. 毒性学・薬理学研究
薬剤が引き起こす発熱、低体温、副作用評価に体温が用いられます。
7. がん研究
腫瘍負荷やがん治療薬(免疫療法、分子標的薬など)の副作用、体調変化の指標として体温モニタリングが行われます。
8. 動物福祉・麻酔管理
麻酔下の体温低下は重大なリスクとなるため、手術や生理実験での体温管理は必須です。
マウス体温モニタリングのアプリケーション例
マウス体温モニタリングは、多くの研究分野で重要な生体指標として利用されます。特に深部体温の変化は、病態、代謝、薬剤応答を直接反映するため、以下のような具体的アプリケーションがあります。
1. 感染症モデル(敗血症・ウイルス感染)
敗血症モデル(LPS投与など)では、体温の急激な低下や発熱が病態進行を示すため、連続的なモニタリングが不可欠です。インフルエンザ、SARS-CoV-2モデルでも体温が重症化指標として用いられます。
2. 炎症性疾患モデル
全身性炎症反応(SIRS)、関節炎、炎症誘導モデルなどで、炎症の強さと経時的変化を体温が反映します。
3. 代謝・エネルギー生理研究
肥満モデルや糖尿病モデルでは、 ・エネルギー消費 ・褐色脂肪の活性 ・熱産生 の評価として体温が用いられます。寒冷暴露実験でも重要です。
4. 神経科学(体温調節中枢の研究)
視床下部の体温調節中枢を操作する実験(光遺伝学、薬理学)では、深部体温の変化が直接的なアウトプットになります。
5. 睡眠・サーカディアンリズム解析
体温は24時間リズムで変動し、睡眠覚醒サイクルや活動量の変化と密接に関連するため、行動解析とセットで測定されます。
6. がんモデル
腫瘍進展や治療薬(免疫チェックポイント阻害薬、抗がん剤)の副作用や体調変化の指標として体温を追跡します。
7. 薬効・毒性試験
薬剤による発熱、低体温、代謝変化を評価するため、薬効・毒性試験で深部体温が重要なバイオマーカーになります。
8. ショックモデル・循環器研究
出血性ショック、心不全、虚血再灌流モデルなどでは、体温低下が循環動態の破綻と密接に関連します。
9. 麻酔・手術時の生体管理
麻酔下のマウスは急激に体温が低下するため、温度維持や安全管理に必須のパラメータです。
10. 動物福祉(ケージ内環境の評価)
ストレス、ケージ環境温度、飼育条件などが体温変動に影響するため、動物福祉評価にも使用されます。
easyTEL+S によるマウス体温モニタリング
― 無拘束・高精度のテレメトリーで、生理データをより深く理解する ―

emka TECHNOLOGIES社の easyTEL+S は、マウス用に設計された完全埋め込み型テレメトリーシステムです。腹腔内または皮下に小型デバイスを埋め込むことで、マウスが自然に行動している状態のまま、深部体温を含む複数の生体指標を長期間にわたって連続記録できます。
マウス体温は、感染症、炎症、代謝、ならびに安全性薬理といった多くの研究領域で重要なバイオマーカーです。easyTEL+S を導入することで、これらの体温変化を「より正確に」「よりストレスなく」「より長期的に」捉えることができます。
easyTEL+S が体温モニタリングに優れている理由
■ 深部体温を無拘束で連続測定
埋め込み型センサーにより、マウスを拘束する必要がありません。直腸温測定と異なり、ストレスや取り扱いによる体温変動を排除でき、生理的に自然な体温データを取得できます。
■ 活動量など複数パラメータを同時に取得
easyTEL+S は体温に加えて、活動量(x・y・z 各軸)や、機種構成に応じて 心電図(ECG)/脳波(EEG)なども同時記録できます。これにより、体温変化の背景となる生理状態を総合的に評価することができます。
■ マウス研究に最適化されたコンパクト設計
約 20 g 以上のマウスに対応できる小型・軽量のデバイスのため、感染モデルから代謝研究まで幅広い試験で利用できます。長期連続記録にも耐える設計で、慢性モデルやサーカディアン解析にも適しています。
主な活用シーン
■ 感染症・炎症モデル
LPS敗血症モデルやウイルス感染モデルでは、急激な低体温や発熱を minute スケールで捉えられます。活動量と組み合わせることで、病態の重症度や回復過程をより正確に評価できます。
■ 代謝・寒冷暴露研究
寒冷暴露中の体温維持能力や、褐色脂肪の熱産生による回復過程など、エネルギー代謝に関わる体温変化を高精度に追跡できます。
■ サーカディアンリズム・行動研究
24時間連続で体温と活動量を測定できるため、概日リズムの解析や遺伝子改変マウスの行動特性評価に最適です。
■ 安全性薬理・毒性試験
中枢抑制系薬物による低体温、興奮系薬物による軽度高体温など、薬効と副作用の双方を一つのデータセットで評価できます。
■ 術後回復・動物福祉の評価
手術後の体温回復や活動量の戻りを連続してモニタリングでき、異常の早期発見や鎮痛・麻酔プロトコルの最適化に役立ちます。
easyTEL+S が提供する価値
ストレスのない自然な体温データ
複数の生体指標を統合した深い生理解析
急性変化から長期的なリズムまでを網羅
多様なマウスモデルに適合する柔軟性
easyTEL+S は、従来の体温計測では得られなかった「生体の本来の姿」を捉えるための強力なプラットフォームです。感染症から代謝、神経科学、安全性薬理まで、体温モニタリングを必要とするあらゆる研究において、生体データの質と解析精度を大きく向上させます。
emka TECHNOLOGIES社 easyTEL +S

emka TECHNOLOGIES社のeasyTEL +S は、研究現場で求められる高精度かつ再現性の高い マウス体温のモニタリング を実現する、最新世代の テレメトリーシステム です。埋め込み型デバイスにより、マウスを拘束することなく深部体温を連続測定できるため、取り扱いストレスや測定誤差の少ない、質の高い生理データを取得できます。
また、easyTEL +S は体温だけでなく、活動量や心電図など複数の生体指標を統合的に記録でき、感染症モデル、代謝研究、安全性薬理など、多様な研究用途に対応します。マウスの自然な行動下で得られるデータは、病態解析や薬効評価の精度向上に大きく貢献します。
高信頼のテレメトリー技術とマウス研究に最適化された設計により、研究効率を高め、生体データの正確性と再現性を向上させたい研究機関にとって、easyTEL +S は極めて有用なソリューションです。
<測定項目>
3つのモデルをご用意
1) バイオポテンシャル 2ch・体温・活動量
2) バイオポテンシャル 1ch・体温・活動量
3) 体温・活動量
※バイオポテンシャルは、ECG、EEG、EMG、EOGのいずれか
<送信機>
標準電池寿命: 20-45日 (連続使用)
※寿命は、使用状況により異なります
容量と重さ:1.2 cc 2.4g
<特長>
・送信機は電池式の使い捨てタイプ
・専用のソフトウエアを使い最大32個の送信機からデータを取得
・クロストークがないデジタル電波なので、グループハウジング可能
・シグナルに同期したビデオの搭載可能
<システム構成例>
※ご使用には送信機に加え、受信機やデータ解析用システム一式が必要です

ラット・イヌ・サル・ブタなど中大動物用の送信機の種類も、豊富にございます
その他の製品
easyTEL+デジタルテレメトリー

埋め込み型テレメトリー
easyTEL+ デジタルテレメトリーは、小型動物から大型動物まで、複数の生体電位、体温、活動量、呼吸数を測定可能です。また、全身プレチスモグラフィーと組み合わせることで、心肺機能の測定にも利用できます。
easyTEL+ RP
再利用可能なテレメータ



easyTEL+RP 再利用可能なテレメータは、最大4つの低ノイズ生体電位(皮質または穿刺型EEG、EMG、ECG、EOG)および200g以上のげっ歯類の活動を測定できます。また、全身プレチスモグラフィーと組み合わせて心肺機能測定にも使用可能です。
大型動物では、テレメータの外科的埋め込みなしで神経学的変化と活動変化を収集します。被験者は、ジャケットやヘルメットに収納された外部送信機と、頭皮に配置された表面電極を装着します。
外部送信機は、被験者、コホート、研究間で再利用可能であり、大規模な被験者プールを要する行動研究の初期費用を削減します。emka TECHNOLOGIES社の送信機のカスタム設計(電極、電極線、極性)と、ユーザーが設定可能なサンプリングレート、解像度、ゲインを組み合わせることで、ユーザーは多様な研究設計オプションを利用できます。交換可能なバッテリーは、連続記録で最大150時間持続します。
vivoFlow+

げっ歯類用全身プレチスモグラフィー
動物モデルを用いた非臨床研究において、全身プレチスモグラフィーは重要な役割を果たします。呼吸のモニタリングにより、呼吸パターンの変化や呼吸系に与える生理学的影響を測定できます。
vivoFlow+全身プレチスモグラフィーは、同じ被験体でストレスや不快感を与えることなく繰り返し測定が可能です。刺激を導入する前のリラックスした状態において、正常な呼吸機能の基準データ(潮式呼吸量、呼吸頻度、空気の流れパターン)を提供し、その後、実験手順中の呼吸変化を継続的に追跡できます。
全身プレチスモグラフィーとデジタルテレメトリーを同期化されたプラットフォーム上で組み合わせることで、呼吸データと神経学的データの同時分析が可能です。
emka TECHNOLOGIES 小動物用テレメトリー easyTELシリーズ
マウス用テレメトリー easyTELは完全に埋め込み可能なテレメトリー・遠隔測定システムで、意識下で自由に動く体重20g以上の小型被験体から生理学データを送信します。前臨床研究で使用することを目的としたeasyTEL-Sサイズのインプラントはマウスに最適で、生体電位(ECG、EEG、EMG、EOG)*、体温、活動を継続的に記録する能力を提供します。
ラット用テレメトリー easyTEL+は完全に埋め込み可能なデジタルテレメトリー・遠隔測定システムで、意識を持って自由に動く実験動物から生理学的データを送信します。前臨床研究(主に毒性学、薬理学、安全性薬理学研究)やバイオディフェンスで使用することを目的としたeasyTEL+インプラントは、ラットのような200gを超えるげっ歯類に最適です。さまざまなモデルで、生体電位(ECG*、EEG*、EMG*、EOG*)、血圧(動脈圧および/または左心室圧)、呼吸数**、体温、加速度を連続的に記録できます。
オレンジサイエンスはemka TECHNOLOGIESの日本総代理店です。日本では唯一emka TECHNOLOGIES社と取引できる窓口となっております。日本国内で展開される様々な研究プロジェクトを支え、研究者の皆様がより効果的かつ効率的に研究を進められるよう、迅速で専門的なサポートを提供しています。
*心電図(ECG)、脳波(EEG)、筋電図(EMG)、眼電図(EOG)
**胸膜または血圧または横隔膜EMGに由来します。
easyTEL+S マウス用テレメトリー

マウス用テレメトリー easyTEL+Sは完全に埋め込み可能なテレメトリー・遠隔測定システムで、意識下で自由に動く約20gまでの小動物から生理学データを送信します。
前臨床研究で使用することを目的としたeasyTEL+Sのインプラントはマウスに最適で、生体電位(ECG、EEG、EMG、EOG)*、体温、活動を継続的に記録する能力を提供します。
easyTEL+ラット用テレメトリー

ラット用テレメトリー easyTEL+は完全に埋め込み可能なデジタルテレメトリー・遠隔測定システムで、意識を持って自由に動く実験動物から生理学的データを送信します。
前臨床研究(主に毒性学、薬理学、安全性薬理学研究)やバイオディフェンスで使用することを目的としたeasyTEL+インプラントは、ラットのような200gを超えるげっ歯類に最適です。
easyTEL+ 大型動物用テレメトリー
大型動物用テレメトリー easyTEL+は完全に埋め込み可能な大型動物用デジタルテレメトリーシステムです。
意識を持って自由に動く実験動物から生理学的データを送信します。遠隔で管理・設定することができます。
前臨床研究(主に毒性学、薬理学、安全性薬理学研究)やバイオディフェンスでの使用を想定したeasyTEL+インプラントは、1kgを超える大型動物に最適です。

emka TECHNOLOGIES
emka TECHNOLOGIES社は、1992年にフランスで設立され、当初は、アイソレーテッドオーガンバスやランゲンドルフ灌流装置を開発、製造しており、2000年には非侵襲性のテレメトリーをリリース、2014年には、SCIREQ社(カナダ)をグループに入れることにより、呼吸器研究用機器を製品ポートフォリオに加え、幅広い分野の機器を、世界の研究者の方々に提供しています。
オレンジサイエンスはemka TECHNOLOGIESの日本総代理店です。日本では唯一emka TECHNOLOGIES社と取引できる窓口となっております。日本国内で展開される様々な研究プロジェクトを支え、研究者の皆様がより効果的かつ効率的に研究を進められるよう、迅速で専門的なサポートを提供しています。

主な製品
マウス・ラット用テレメトリー
ジャケットテレメトリー
オーガンバス
ランゲンドルフ

主な製品
マウス・ラット肺機能測定装置
マウス・ラット呼吸測定装置
吸入暴露装置
細胞暴露装置
その他の製品
Precisionary ビブラトーム(振動式ミクロトーム)
組織切片作製

Precisionary ビブラトームは細胞や組織の切片を特許取得済みの圧縮技術によりビビリなしで作製し、急性組織上の多くの生存細胞を維持します。肺機能を解析した後、肺を取り出しスライスしたり、肺1つから複数の組織サンプルを取得することが可能です。
従来のビブラトームの5倍の速さで切開し、ブレードを組織に当てる時間を短縮し、より良い切開を実現
Auto Zero-Zテクノロジーにより、Z軸のたわみを1 µm未満に低減
高周波振動メカニズムにより、ビビリマークを低減または除去
持ち運びに便利な軽量設計
完全自動化:切開+厚み調整
360度のアガロース包埋により、切断プロセス中に組織を安定化
Etaluma Lumascope
インキュベーター内で使用できる3色蛍光ライブセルイメージング蛍光顕微鏡


EtalumaのLumascope(ルマスコープ)は、優れた感度、解像度、ゼロピクセルシフトを備えた、半導体光学の新しいコンセプトで設計された、倒立型小型蛍光顕微鏡です。日々顕微鏡を使用する科学者によって考案、設計され、そのコンセプトデザインにより、インキュベーター、ドラフトチャンバーなどの限られたスペースの中で使用でき、幅広いラボウエアでのライブセルイメージングを可能にします。
多点観察モデル、定点観察モデルがあり、様々な観察シーンに対応できます。

