マウスの眼電図測定(EOG)
- Orange Science
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マウスの眼電図測定(EOG)とは
マウスの眼電図(EOG)測定とは、網膜色素上皮(RPE)と視細胞外節との間に存在する電位変化(スタンディング・ポテンシャル)を記録し、主に RPE の機能を評価する手法です。 ERG が網膜全層の光応答を反映するのに対し、EOG は光刺激に伴う RPE の生理機能変化を捉える点で異なります。
マウスの眼電図測定で評価できる主な指標
EOG では、暗所と明所を切り替えた際に生じる電位変化(ライトピーク・ダークトラフ)を記録します。
ダークトラフ(Dark Trough)暗順応状態で記録される低い電位。
ライトピーク(Light Peak)明順応へ切り替えた後に観察される電位上昇。RPE の塩化物チャネル活性などに関与することが知られています。
ライトピーク/ダークトラフ比(LP/DT 比)RPE 由来の機能的変化の指標として用いられる。
EOG 測定の目的
RPE 機能評価RPE イオン輸送機能や上皮細胞の生理応答を非侵襲的に評価できる。
網膜疾患モデルの研究加齢黄斑変性、RPE 異常、網膜変性モデルなどで、RPE 機能障害の有無を検証。
治療効果の検証遺伝子治療、薬剤介入、再生医療(RPE シート移植など)の評価に利用される。
マウス EOG 測定に必要な要素
眼周囲または角膜への電極配置
暗順応と明順応を制御しながら刺激を与える環境
RPE の電位を安定して検出できる増幅・記録システム
体温維持と麻酔管理
外来ノイズの少ない計測環境
マウス眼電図(EOG)測定が活用される研究分野
マウス EOGは、網膜色素上皮(RPE)の機能評価に特化した手法であり、以下の研究分野で広く利用されています。
1. 眼科基礎研究(特に RPE 機能研究)
EOG が RPE のスタンディングポテンシャルを直接反映するため、RPE 生理機能、イオン輸送、光応答調節などの基礎的メカニズムの研究に用いられています。
例
RPE のイオンチャネル(Cl⁻チャネルなど)機能解析
光応答に伴う RPE の電気生理変化の研究
光受容体と RPE の相互作用
2. 網膜疾患モデルの研究
疾患による RPE の障害は EOG 波形に反映されるため、網膜疾患モデルの機能解析に使用されます。
対象となる主な疾患モデル
加齢黄斑変性(AMD)モデル
遺伝性網膜ジストロフィー(例:RPE65 欠損モデル)
網膜変性(photoreceptor degeneration)モデル
RPE 機能異常を伴う代謝・ストレスモデル
3. 再生医療研究(RPE 細胞移植など)
EOG は再生医療分野で、特に RPE を対象とした治療効果の評価に利用されています。
例
iPS/ES 細胞由来 RPE 移植
RPE シート移植の生着・機能評価
RPE 再生治療の有効性検証
EOG により、移植された RPE が機能を回復しているかを非侵襲的に確認できます。
4. 遺伝子治療研究
RPE を標的とした遺伝子補充・遺伝子編集治療の効果検証にも用いられます。
例
RPE65 遺伝子補充療法の効果評価
遺伝性網膜疾患モデルに対する AAV ベクター治療
遺伝子発現改善に伴う RPE 機能変化の定量
5. 薬理学・毒性学研究
薬剤の影響が RPE に現れる場合、EOG はその機能的変化を捉える手法として活用されます。
例
網膜毒性の有無を検証する安全性試験
抗酸化剤や抗炎症薬による RPE 保護効果の評価
代謝ストレス応答の解析
6. 加齢研究(Aging research)
加齢に伴う RPE の機能低下や光応答変化を捉えるため、老齢マウスを使用した加齢研究でも EOG が導入されています。
マウス眼電図(EOG)測定のアプリケーション例
EOG は網膜色素上皮(RPE)の光応答機能を反映するため、RPE の異常や治療効果を調べたい研究で利用されます。以下は、特に代表的で広く行われているアプリケーションです。
1. RPE 機能異常の検出
暗順応から明順応へ切り替えた際に生じるライトピーク(LP)の大きさや LP/DT 比を指標として、 RPE の生理機能の異常を評価します。
例
RPE のイオンチャネル(特に Cl⁻ チャネル)の機能異常の研究
光応答調節の障害の検出
2. 遺伝性網膜疾患モデルの解析
RPE の機能不全を伴う遺伝性疾患モデルでは、EOG 波形に明確な変化が現れることが知られています。
例
RPE65 欠損モデル
ベスト病など、EOG 異常を特徴とするモデル
網膜ジストロフィーモデルでの RPE 機能評価
3. 加齢黄斑変性(AMD)モデルの研究
EOG は RPE の光応答を測定できるため、AMD モデルの RPE 障害を検証する際に使用されます。
例
加齢に伴う RPE 機能低下の検出
AMD 関連遺伝子改変モデルでの機能評価
4. 再生医療・細胞移植の効果評価
EOG を用いることで、移植した RPE 細胞や RPE シートの機能回復を非侵襲的に確認できます。
例
iPS/ES 由来 RPE 移植の機能評価
RPE シート移植治療の有効性検証
5. 遺伝子治療の効果判定
RPE を標的とした遺伝子補充療法や AAV ベクター治療の効果検証にも使われます。
例
RPE65 補充療法によるライトピーク増大の確認
網膜変性モデルに対する遺伝子治療の回復度合いの定量
6. 薬理学・毒性試験
薬剤が RPE に与える影響を調べるために EOG を利用し、安全性や治療効果を評価します。
例
RPE 保護薬(抗酸化剤・抗炎症薬など)の効果評価
網膜毒性の検出(薬物、化学物質の毒性試験)
7. 加齢研究(RPE の加齢変化の評価)
老齢マウスを用いた加齢研究では、RPE の応答性低下を EOG で検出できます。
マウス眼電図測定 emka TECHNOLOGIES社 easyTEL +S

emka TECHNOLOGIES社の easyTEL +S は、マウスの心電図・体温・活動量・血圧(構成による)などの生体信号を、無拘束かつ連続的に測定できる小動物用テレメトリーシステムです。眼電図測定と組み合わせることで研究の精度と再現性を大きく高めるツールとして活用できます。
全身状態を可視化し、眼電図データの信頼性向上に貢献
マウスの眼電図(EOG)は、麻酔深度、体温、心拍、活動性などの全身状態によって大きく影響を受けます。easyTEL +S を併用することで、眼電図測定中および前後の生理状態をリアルタイムに記録でき、以下のようなメリットが得られます。
麻酔の影響や体温変動が EOG に与える影響を客観的に把握
実験条件のばらつきを減らし、データの再現性を向上
全身コンディションを共変量として扱うことで、解析精度が向上
眼電図の結果をより正確に解釈し、信頼性の高いデータ取得に貢献します。
慢性モデルでの経時解析に最適
網膜変性モデルや加齢黄斑変性(AMD)モデルなど、長期的な病態解析が必要な研究では、眼電図(EOG)による RPE 機能評価と、easyTEL +S による全身生理データを組み合わせることで、1 匹の動物を長期にわたり継続評価できます。
心機能や体温の経時変化
活動量の低下・変動
疾患進行や治療効果との関連性
を同じ個体で追跡でき、治療効果の総合的な評価が可能になります。
実験プロトコルの標準化にも有効
眼電図測定では、麻酔・保温・環境条件の違いが結果に影響しやすく、プロトコルの標準化が重要です。 easyTEL +S を併用することで、実験中の心拍・体温・活動量を客観的に記録でき、条件の最適化や再現性向上に役立ちます。
emka TECHNOLOGIES社 easyTEL +S
マウス眼電図測定を支えるテレメトリーソリューション

マウス眼電図測定(EOG)では、麻酔深度や体温、心拍、活動量といった全身状態が波形に大きく影響します。emka TECHNOLOGIES社のeasyTEL +S は、これらの生理指標を高精度にモニタリングできる小動物用テレメトリーシステムとして、EOG データの信頼性向上に大きく貢献します。
easyTEL +S は、無拘束かつ長時間の連続記録が可能で、心電図(ECG)、体温、活動量、血圧(構成による)などの生体信号をリアルタイムに取得できます。眼電図測定と組み合わせることで、実験中および前後の生理状態を客観的に把握でき、EOG の解析精度を高めることが可能です。
また、網膜変性モデルや加齢黄斑変性モデルなど、長期的な機能変化を評価する研究においては、easyTEL +S によるテレメトリー計測が、疾患の進行や治療効果を総合的に捉えるための重要な情報源となります。眼の機能評価と全身生理データを統合することで、より深いインサイトを得ることができます。
emka TECHNOLOGIES社のeasyTEL +S は、マウス眼電図測定(EOG)の信頼性向上と研究プロトコルの標準化に寄与する強力なテレメトリーソリューションです。生理学・眼科学・創薬研究など、多様な領域でのデータ品質向上をサポートします。
<測定項目>
3つのモデルをご用意
1) バイオポテンシャル 2ch・体温・活動量
2) バイオポテンシャル 1ch・体温・活動量
3) 体温・活動量
※バイオポテンシャルは、ECG、EEG、EMG、EOGのいずれか
<送信機>
標準電池寿命: 20-45日 (連続使用)
※寿命は、使用状況により異なります
容量と重さ:1.2 cc 2.4g
<特長>
・送信機は電池式の使い捨てタイプ
・専用のソフトウエアを使い最大32個の送信機からデータを取得
・クロストークがないデジタル電波なので、グループハウジング可能
・シグナルに同期したビデオの搭載可能
<システム構成例>
※ご使用には送信機に加え、受信機やデータ解析用システム一式が必要です

ラット・イヌ・サル・ブタなど中大動物用の送信機の種類も、豊富にございます
その他の製品
easyTEL+デジタルテレメトリー

埋め込み型テレメトリー
easyTEL+ デジタルテレメトリーは、小型動物から大型動物まで、複数の生体電位、体温、活動量、呼吸数を測定可能です。また、全身プレチスモグラフィーと組み合わせることで、心肺機能の測定にも利用できます。
easyTEL+ RP
再利用可能なテレメータ



easyTEL+RP 再利用可能なテレメータは、最大4つの低ノイズ生体電位(皮質または穿刺型EEG、EMG、ECG、EOG)および200g以上のげっ歯類の活動を測定できます。また、全身プレチスモグラフィーと組み合わせて心肺機能測定にも使用可能です。
大型動物では、テレメータの外科的埋め込みなしで神経学的変化と活動変化を収集します。被験者は、ジャケットやヘルメットに収納された外部送信機と、頭皮に配置された表面電極を装着します。
外部送信機は、被験者、コホート、研究間で再利用可能であり、大規模な被験者プールを要する行動研究の初期費用を削減します。emka TECHNOLOGIES社の送信機のカスタム設計(電極、電極線、極性)と、ユーザーが設定可能なサンプリングレート、解像度、ゲインを組み合わせることで、ユーザーは多様な研究設計オプションを利用できます。交換可能なバッテリーは、連続記録で最大150時間持続します。
vivoFlow+

げっ歯類用全身プレチスモグラフィー
動物モデルを用いた非臨床研究において、全身プレチスモグラフィーは重要な役割を果たします。呼吸のモニタリングにより、呼吸パターンの変化や呼吸系に与える生理学的影響を測定できます。
vivoFlow+全身プレチスモグラフィーは、同じ被験体でストレスや不快感を与えることなく繰り返し測定が可能です。刺激を導入する前のリラックスした状態において、正常な呼吸機能の基準データ(潮式呼吸量、呼吸頻度、空気の流れパターン)を提供し、その後、実験手順中の呼吸変化を継続的に追跡できます。
全身プレチスモグラフィーとデジタルテレメトリーを同期化されたプラットフォーム上で組み合わせることで、呼吸データと神経学的データの同時分析が可能です。
emka TECHNOLOGIES 小動物用テレメトリー easyTELシリーズ
マウス用テレメトリー easyTELは完全に埋め込み可能なテレメトリー・遠隔測定システムで、意識下で自由に動く体重20g以上の小型被験体から生理学データを送信します。前臨床研究で使用することを目的としたeasyTEL-Sサイズのインプラントはマウスに最適で、生体電位(ECG、EEG、EMG、EOG)*、体温、活動を継続的に記録する能力を提供します。
ラット用テレメトリー easyTEL+は完全に埋め込み可能なデジタルテレメトリー・遠隔測定システムで、意識を持って自由に動く実験動物から生理学的データを送信します。前臨床研究(主に毒性学、薬理学、安全性薬理学研究)やバイオディフェンスで使用することを目的としたeasyTEL+インプラントは、ラットのような200gを超えるげっ歯類に最適です。さまざまなモデルで、生体電位(ECG*、EEG*、EMG*、EOG*)、血圧(動脈圧および/または左心室圧)、呼吸数**、体温、加速度を連続的に記録できます。
オレンジサイエンスはemka TECHNOLOGIESの日本総代理店です。日本では唯一emka TECHNOLOGIES社と取引できる窓口となっております。日本国内で展開される様々な研究プロジェクトを支え、研究者の皆様がより効果的かつ効率的に研究を進められるよう、迅速で専門的なサポートを提供しています。
*心電図(ECG)、脳波(EEG)、筋電図(EMG)、眼電図(EOG)
**胸膜または血圧または横隔膜EMGに由来します。
easyTEL+S マウス用テレメトリー

マウス用テレメトリー easyTEL+Sは完全に埋め込み可能なテレメトリー・遠隔測定システムで、意識下で自由に動く約20gまでの小動物から生理学データを送信します。
前臨床研究で使用することを目的としたeasyTEL+Sのインプラントはマウスに最適で、生体電位(ECG、EEG、EMG、EOG)*、体温、活動を継続的に記録する能力を提供します。
easyTEL+ラット用テレメトリー

ラット用テレメトリー easyTEL+は完全に埋め込み可能なデジタルテレメトリー・遠隔測定システムで、意識を持って自由に動く実験動物から生理学的データを送信します。
前臨床研究(主に毒性学、薬理学、安全性薬理学研究)やバイオディフェンスで使用することを目的としたeasyTEL+インプラントは、ラットのような200gを超えるげっ歯類に最適です。
easyTEL+ 大型動物用テレメトリー
大型動物用テレメトリー easyTEL+は完全に埋め込み可能な大型動物用デジタルテレメトリーシステムです。
意識を持って自由に動く実験動物から生理学的データを送信します。遠隔で管理・設定することができます。
前臨床研究(主に毒性学、薬理学、安全性薬理学研究)やバイオディフェンスでの使用を想定したeasyTEL+インプラントは、1kgを超える大型動物に最適です。

emka TECHNOLOGIES
emka TECHNOLOGIES社は、1992年にフランスで設立され、当初は、アイソレーテッドオーガンバスやランゲンドルフ灌流装置を開発、製造しており、2000年には非侵襲性のテレメトリーをリリース、2014年には、SCIREQ社(カナダ)をグループに入れることにより、呼吸器研究用機器を製品ポートフォリオに加え、幅広い分野の機器を、世界の研究者の方々に提供しています。
オレンジサイエンスはemka TECHNOLOGIESの日本総代理店です。日本では唯一emka TECHNOLOGIES社と取引できる窓口となっております。日本国内で展開される様々な研究プロジェクトを支え、研究者の皆様がより効果的かつ効率的に研究を進められるよう、迅速で専門的なサポートを提供しています。

主な製品
マウス・ラット用テレメトリー
ジャケットテレメトリー
オーガンバス
ランゲンドルフ

主な製品
マウス・ラット肺機能測定装置
マウス・ラット呼吸測定装置
吸入暴露装置
細胞暴露装置
その他の製品
Precisionary ビブラトーム(振動式ミクロトーム)
組織切片作製

Precisionary ビブラトームは細胞や組織の切片を特許取得済みの圧縮技術によりビビリなしで作製し、急性組織上の多くの生存細胞を維持します。肺機能を解析した後、肺を取り出しスライスしたり、肺1つから複数の組織サンプルを取得することが可能です。
従来のビブラトームの5倍の速さで切開し、ブレードを組織に当てる時間を短縮し、より良い切開を実現
Auto Zero-Zテクノロジーにより、Z軸のたわみを1 µm未満に低減
高周波振動メカニズムにより、ビビリマークを低減または除去
持ち運びに便利な軽量設計
完全自動化:切開+厚み調整
360度のアガロース包埋により、切断プロセス中に組織を安定化
Etaluma Lumascope
インキュベーター内で使用できる3色蛍光ライブセルイメージング蛍光顕微鏡


EtalumaのLumascope(ルマスコープ)は、優れた感度、解像度、ゼロピクセルシフトを備えた、半導体光学の新しいコンセプトで設計された、倒立型小型蛍光顕微鏡です。日々顕微鏡を使用する科学者によって考案、設計され、そのコンセプトデザインにより、インキュベーター、ドラフトチャンバーなどの限られたスペースの中で使用でき、幅広いラボウエアでのライブセルイメージングを可能にします。
多点観察モデル、定点観察モデルがあり、様々な観察シーンに対応できます。

