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蛍光顕微鏡の細胞培養自動化ラインへの応用

  • Orange Science
  • 9月25日
  • 読了時間: 13分

細胞培養自動化ライン

細胞培養自動化ラインとは、細胞培養に必要な作業を自動化して連続的に行えるように設計されたシステムのことです。従来は研究者や技術者が手作業で行っていた培養液交換、細胞播種、培養皿やフラスコの取り扱い、細胞の観察、回収などを、自動ロボットアームや液体ハンドリング装置、インキュベーター、顕微鏡システムなどを統合して一貫して行います。

目的は、細胞培養の再現性や品質を高めると同時に、ヒューマンエラーを減らし、大量かつ安定した細胞供給を可能にすることです。特に再生医療や細胞治療、創薬スクリーニングの分野では、規模の大きな培養が必要となるため、こうした自動化ラインの導入が進められています。


構成要素としては、以下のような装置や技術が組み合わされます。

  • 細胞播種や分注を行う液体ハンドリングシステム

  • 細胞を一定環境で維持するインキュベーター

  • プレートやフラスコを搬送するロボットアーム

  • 顕微鏡やセンサーを用いた細胞状態のモニタリング装置

  • データ管理やプロセス制御を行うソフトウェア


これにより、研究用途だけでなく、臨床応用に耐えうる品質管理された細胞製造プロセスの実現が可能になります。


細胞培養自動化ラインへのetaluma社 LS850 蛍光顕微鏡の応用

研究開発の現場において、細胞観察の自動化と高精度化はますます重要性を増しています。etaluma社 LS850は、そのニーズに応える次世代型の蛍光顕微鏡です。


本製品は明視野・位相差観察対応であり、細胞の多様な状態を正確に捉えることが可能です。また、細胞培養自動化ラインへ応用でき、マイクロプレート装填取り出しロボットとの連携に優れています。これにより、ロボット自動化による連続観察や解析をスムーズに行うことができ、人的リソースの効率化と再現性の高いデータ取得を実現します。


さらに、ベンチトップ型ハイコンテンツスクリーニングに対応しているため、省スペースながら大規模な細胞イメージングと解析を実現でき、創薬スクリーニングや再生医療研究など幅広い分野で強力なサポートとなります。


etaluma社 LS850は、自動化研究環境の効率性と信頼性を大幅に高めるソリューションとして、研究機関や製薬企業にとって最適な選択肢です。


実際の運用例動画


LS850蛍光顕微鏡(明視野・位相差観察対応)は、ベンチトップ型ハイコンテンツスクリーニング用にマイクロプレート装填・取り出しロボットを装備可能。




細胞培養自動化ラインへの蛍光顕微鏡の応用

細胞培養自動化ラインにおける蛍光顕微鏡の応用は、培養中の細胞の状態を非侵襲的かつ定量的にモニタリングする点で非常に重要です。従来の手作業では、培養皿を取り出して観察しなければならず、作業者の主観に依存しやすく、また無菌環境を乱すリスクがありました。自動化ラインに蛍光顕微鏡を組み込むことで、これらの問題を解決しつつリアルタイムで細胞を評価できます。


主な応用は以下の通りです。

  1. 細胞増殖のモニタリング 蛍光タンパク質(GFPやRFPなど)や核染色試薬を用いて、細胞数や増殖速度を自動的に定量化できます。画像解析ソフトと連動することで、ライン稼働中に継続的なデータ収集が可能です。

  2. 細胞形態の評価 細胞の接着状態、伸展、突起形成などを蛍光ラベルで可視化し、細胞の健康状態や分化の進行を判定できます。特にiPS細胞や幹細胞の品質管理に有効です。

  3. 細胞死・生存率の測定 Live/Dead染色やアポトーシスマーカーを用いることで、培養中に発生する細胞死を自動的に検出できます。これにより培養条件の最適化や不良バッチの早期判別が可能です。

  4. 分化・機能評価 特定の蛍光マーカーを導入することで、神経細胞や心筋細胞などの分化指標を自動測定できます。これにより、目的細胞の分化効率や成熟度をライン上で把握できます。

  5. 高スループットスクリーニング 多ウェルプレートをロボットアームで搬送し、蛍光顕微鏡で自動撮影・解析することで、薬剤や培養条件の効果を並列的に評価できます。

  6. リアルタイム品質管理 画像データが自動的にクラウドやデータベースに蓄積され、AIによる画像解析と組み合わせることで、異常な培養状態(汚染や細胞形態異常)を早期に検知できます。


蛍光顕微鏡は「細胞培養のブラックボックス化」を防ぎ、可視化・定量化するための重要なセンサーとして、自動化ラインに統合されています。


細胞培養自動化ラインに組み込む蛍光顕微鏡の種類と適性

1. 倒立型蛍光顕微鏡

  • 特徴: 培養皿やマルチウェルプレートの底から観察する方式。細胞を培養容器から移さずにそのまま観察可能。

  • 利点: 生細胞観察に最も適しており、培養系で広く利用されている。自動化ラインに組み込む場合も汎用性が高い。

  • 用途: 増殖観察、細胞形態解析、基本的な蛍光マーカー評価。

2. 自動スキャニング型(ハイコンテントイメージングシステム)

  • 特徴: マルチウェルプレート全体を自動で撮影・解析するシステム。ロボットと連携し、多検体を連続的に処理可能。

  • 利点: 高スループットスクリーニングに最適。ソフトウェアと連動して細胞数、蛍光強度、形態パラメータを自動解析。

  • 用途: 薬剤効果の定量比較、大規模な培養条件最適化、品質管理。

3. 共焦点蛍光顕微鏡

  • 特徴: ピンホールを用いた光学セクショニングにより、背景光を抑えて鮮明な断層画像を取得できる。

  • 利点: 厚みのあるサンプルや3次元構造を持つ細胞塊(スフェロイド、オルガノイド)の観察に有効。

  • 用途: 幹細胞分化の詳細解析、3D培養モデルの品質評価。

4. ライブセルイメージング対応顕微鏡

  • 特徴: 顕微鏡本体に小型インキュベーターを組み込み、温度・CO₂・湿度を制御しながら長時間観察可能。

  • 利点: タイムラプス観察により、細胞の動態や分化過程をリアルタイムで記録できる。

  • 用途: 幹細胞からの分化プロセス追跡、細胞遊走や形態変化の研究。

5. 小型・組込み型蛍光顕微鏡(例:倒立蛍光顕微鏡のモジュール型)

  • 特徴: インキュベーター内やロボット搬送系に直接組み込めるコンパクト設計。

  • 利点: 自動化ラインに無理なく統合でき、無菌環境を維持しながら観察が可能。

  • 用途: ルーチン的な細胞生存率評価やコンフルエンシー(細胞の密度)モニタリング。


汎用的な細胞観察には倒立型、ハイスループット解析には自動スキャニング型、3D培養や詳細観察には共焦点顕微鏡、長時間の動態観察にはライブセル対応型、そして自動化ライン専用には小型組込み型が適しています。


細胞培養自動化ライン+蛍光顕微鏡のアプリケーション例

細胞培養自動化ラインと蛍光顕微鏡を組み合わせた場合、単なる細胞培養にとどまらず、「品質管理」「機能評価」「スクリーニング」などの高度な応用が可能になります。


1. 幹細胞・iPS細胞の品質管理

  • 蛍光マーカー(例:Oct4, Nanog, Sox2など)を用いて、多能性維持や分化状態を自動的に判定。

  • 自動化ラインに組み込むことで、培養過程の各段階でリアルタイムに品質をチェック可能。

2. 分化プロセスのモニタリング

  • 神経細胞や心筋細胞への分化過程を、蛍光マーカーで可視化。

  • タイムラプス撮影により、細胞の形態変化やマーカー発現の推移を自動解析。

3. 細胞生存率・毒性評価

  • Live/Dead染色を自動的に行い、蛍光顕微鏡で細胞生存率を定量化。

  • 薬剤投与や培養条件の変更に伴う細胞応答を、スループット高く測定可能。

4. ハイスループット薬剤スクリーニング

  • マルチウェルプレートをロボット搬送し、蛍光顕微鏡で自動撮像。

  • 薬剤による細胞増殖抑制、形態変化、蛍光強度変化を同時解析。

  • 創薬研究における候補化合物の効率的な選別に利用。

5. スフェロイド・オルガノイド解析

  • 3D培養系の内部構造を蛍光で可視化。

  • 共焦点顕微鏡を組み込めば、オルガノイドの分化状態や内部の細胞死領域を自動評価。

6. 細胞遊走・浸潤試験

  • 蛍光標識細胞を用いて、遊走速度や方向性をタイムラプスで自動解析。

  • がん研究や創傷治癒モデルのスクリーニングに応用。

7. ウイルス感染・遺伝子導入効率の評価

  • 蛍光レポーター遺伝子を利用して、感染効率や発現レベルを定量化。

  • 自動ラインで感染後の細胞群を長期モニタリング可能。


細胞培養自動化ラインに蛍光顕微鏡を加えると、「細胞を培養するだけでなく、その品質や機能をリアルタイムで数値化・記録できる」という拡張性が生まれます。


Etaluma社のLS850倒立蛍光顕微鏡の細胞培養自動化ラインへの応用

Etaluma社の LS850(Lumascope 850)倒立蛍光顕微鏡はベンチトップ型ハイコンテンツスクリーニング用にマイクロプレート装填・取り出しロボットを装備可能です。

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LS850の主な特徴(自動化ライン適用観点から)

3色蛍光 (Blue, Green, Red)

  • LED光源 + 適切なフィルターセットで3色蛍光を取得可能 

  • 細胞マーカー(例:核染色、蛍光タンパク質、蛍光標識プローブ)を複数同時に評価できる。複数マーカーを使った品質判定や機能評価に有用。

XY自動ステージ & Z自動焦点/Zスタック取得

  • 自動移動、焦点合わせ、複数平面取得対応 

  • マルチウェルプレートやマルチサイト撮影を自動化できる。多検体を連続撮影可能。3D 形態解析や断層的情報の取得も可能。

インキュベーター/培養環境内設置可能

  • 顕微鏡本体を恒温・CO₂ 制御環境(インキュベーター内など)に設置可能 

  • 細胞をラインから取り出さずにそのまま観察でき、環境変化によるストレスを最小化できる。時間経過観察(タイムラプス)にも適す。

自動化対応インターフェース

  • ソフトウェア制御、移動・焦点操作をスクリプト化可能なモジュール設計 

  • ロボット系とインターフェースをとって顕微鏡操作を自動化制御できる。自動化ラインとの統合がしやすい。

微小構造観察対応

  • 微流体チップやカスタムウェル構造での観察例あり 

  • マイクロ流路系細胞培養系と連結可能。例えば、血管モデル、流体刺激系との併用が検討できる。

低光毒性設計

  • 長時間観察に耐えるよう設計されており、蛍光励起でのダメージを抑えることを意図した構成 

  • タイムラプス撮影や長時間モニタリング実験でも細胞へのダメージを抑えた運用が可能。


自動化ラインでの応用例と活用シナリオ

以下は、LS850 を自動化系と統合して使うケースとその利点・留意点です。

  1. 長時間タイムラプス観察による細胞の動態解析

    • 自動培養ラインで細胞を一定間隔で LS850 によって撮影。細胞増殖、移動、形態変化を追跡可能。

    • たとえば、分化過程における形態変化、細胞の遊走挙動、細胞間相互作用を時間軸で可視化。

    • LS850 がインキュベーター環境に置けるので、環境維持を崩さずに撮影できる。

    • 多検体を扱う場合、XY ステージと自動移動を用い、複数ウェル同時計測が可能。

  2. マルチウェルプレートでの蛍光指標アッセイ

    • 96 ウェルや 384 ウェルプレートを自動搬送し、LS850 で蛍光撮影 → 解析。

    • 増殖率、マーカー発現、蛍光強度変動を定量化。

    • 高スループットな評価やスクリーニングに適用できる(ただし、LS850 が対応するウェル数やステージ速度を考慮する必要あり)。

  3. 細胞品質管理(幹細胞、多能性マーカー、分化マーカー)

    • iPS 細胞などの未分化性マーカー(例:OCT4, SOX2 など)を蛍光抗体標識して、一定時点で自動撮像評価。

    • ライン内で不良な細胞群を早期検知し、培養条件変更や除去判断を行う。

    • 分化誘導プロトコル中でも、特定マーカーを追いながらプロセス制御が可能。

  4. 3D 培養モデル・オルガノイド・スフェロイド解析

    • Z スタック取得機能を使って、オルガノイド内部の蛍光マーカー分布や細胞死領域を可視化。

    • 多層構造や生体様構造を持つサンプルに対して、断層像情報を得ることでより詳細な評価が可能。

    • 自動化ラインで 3D ウェルを培養・移送 → LS850 で断層観察 → 返送 などの流れを構築できれば、スループットを保ちつつ 3D 解析を組み込める。

  5. 機能性細胞(例:心筋細胞、神経細胞など)の動態観察

    • 心筋細胞の拍動やカルシウム応答を蛍光マーカーで可視化し、その動態を自動取得・定量化

    • 神経細胞であればスパイン変化や軸索伸展挙動の観察。

  6. 微流路系との組み合わせ観察

    • LS850 は微流体チップ設置例も報じられており、流体刺激系と統合できる

    • たとえば、内皮細胞を流路で培養しながら、蛍光マーカーで透過性・接着分子発現変動をリアルタイムモニタリング。

  7. 蛍光強度変化追跡アッセイ(カルシウム応答、細胞周期マーカーなど)

    • 蛍光プローブ(例:Fluo-4, GFP レポーター、サイクリン蛍光融合体など)を用いて、時間変化を自動取得。

    • 多点撮影、自動焦点補正、長時間観察により、個々細胞の挙動を追える。


利点

  • 顕微鏡操作を自動化できる(XY 移動、焦点操作、Z スタック) → 人手介在を減らせる

  • インキュベーター環境内に設置可能 → 細胞環境を乱さず観察可能

  • 複数蛍光チャネル対応 → 複数マーカー同時計測可能

  • 長時間観察に向く設計 → タイムラプス実験に強み

  • 自動化ラインとの統合性が比較的高い構造とインターフェースを備えている


LS850 を自動化細胞培養ラインに統合する際の実力と役割

Etaluma LS850は、自動化ラインに蛍光顕微鏡機能を付与できる比較的コンパクトで自動化対応仕様を備えた装置です。特にタイムラプス観察、マルチチャネル蛍光観察、複数検体の自動撮像・解析などに向きます。


自動化系における中心的な役割としては、「リアルタイム/定期モニタリングによる品質管理」「プロセス制御フィードバック」「機能性・分化性・細胞動態解析」などが挙げられます。適切な配置(培養器内、搬送ライン上、一時観察ステーション)、最適化された撮像スケジュール、ソフトウェア連携設計を行えば、LS850 は自動化ラインの蛍光・顕微鏡センサーとして有効に機能し得ます。


Etaluma社 LS850 蛍光顕微鏡

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再生医療や創薬研究の分野において、細胞培養プロセスの自動化と効率化は研究成果の質とスピードを大きく左右します。Etaluma社のLS850は、このニーズに応えるために開発された高性能な顕微鏡ソリューションです。


LS850倒立蛍光顕微鏡(明視野・位相差観察機能付き)は、細胞の多様な状態を正確に可視化できるだけでなく、細胞培養自動化ラインにシームレスに組み込むことが可能です。特にマイクロプレート装填機能や取り出しロボットとの連携に優れており、ベンチトップ型ながらハイコンテンツスクリーニングに対応できる柔軟性を備えています。


これにより、研究者は人手に依存しない安定した観察・解析フローを構築でき、細胞品質の一貫性確保や大規模スクリーニングの迅速化を実現します。省スペース設計のEtaluma社のLS850は、限られた実験スペースを有効に活用しながらも、自動化プラットフォーム全体の価値を飛躍的に高める革新的な選択肢です。






etaluma社 ライブセルイメージングシステム Lumascope


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 エタルマのLumascope(ルマスコープ)は、優れた感度、解像度、ゼロピクセルシフトを備えた、半導体光学の新しいコンセプトで設計された、倒立型小型蛍光顕微鏡です。


 そのコンセプトのデザインにより、インキュベーター、ドラフトチャンバーなどの限られたスペースの中で使用でき、幅広いラボウエアでのライブセルイメージングを可能にします。



LS820 は、現行のモデルにオートフォーカス機能が追加され、低コストでのオートフォーカス3色蛍光観察が可能になりました。ソフトウエアも新しくなり、より簡単に、高画質な画像データの取得ができます。


LS850 は、現行の自動XYステージのついたLS720全自動モデルの改良版です。新たな位相差技術により、位相差照明をコンパクトにし、オプションのタレットにより、4つの対物レンズを搭載することが可能となりました。 




各モデルの詳細は下記からご確認下さい。







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