top of page

バイオマテリアル試験・測定

バイオマテリアル試験とは

バイオマテリアル試験とは、医療用材料や生体適合性材料(バイオマテリアル)を評価するために行われる試験の総称です。バイオマテリアルは、人工関節、インプラント、人工血管など、人体に埋め込まれたり接触したりする医療デバイスや部品に使用されます。このため、バイオマテリアルは高い生体適合性(人体への安全性)や適切な機械的特性を持っていることが求められます。

具体的なバイオマテリアル試験には、以下のようなものがあります。

生体適合性試験

生体組織に対する反応を確認します。これは、細胞毒性試験、感作性試験、刺激性試験などで構成され、バイオマテリアルが人体の細胞や組織に害を及ぼさないことを評価します。

機械的試験

材料がどの程度の力に耐えられるか、破損しないか、疲労耐性があるかなどを確認します。引張試験や圧縮試験、疲労試験などが含まれます。

化学的試験

材料の化学的安定性を確認し、時間とともに分解したり、人体に有害な物質を放出したりしないかを調べます。溶出試験や加速劣化試験がこれに該当します。

イメージング試験

生体組織との接触面の観察やインプラントの組織内挙動を画像化して確認することもあります。例えば、顕微鏡を使って表面の状態を確認したり、CTやMRIを使って体内での位置や状態を確認します。

動物試験や臨床試験

最終的に、バイオマテリアルの安全性と有効性を確認するため、動物実験や臨床試験も実施されます。生体適合性を実際の生体環境で評価し、長期的な影響や副作用を調査します。

バイオマテリアル試験は、医療機器の品質と安全性を確保するために非常に重要なプロセスであり、ISOやASTMなどの国際的な基準に従って実施されることが多いです。

バイオマテリアル試験の目的

バイオマテリアル試験の主な目的は、医療用材料やデバイスが人体に安全かつ効果的に使用できることを確認することです。具体的には以下のような目的があります。

生体適合性の確認

材料が人体の組織や細胞にどのように反応するかを確認し、有害な反応がないか評価します。例えば、細胞毒性やアレルギー反応、炎症反応を引き起こさないかを試験し、生体内での安全性を確認します。

機械的特性の確認

インプラントや医療デバイスとして使用する際に、適切な機械的強度と耐久性があるかを評価します。耐久性が不足すると、破損や変形により患者に危険が及ぶ可能性があるため、実際の使用環境を想定した引張試験や圧縮試験、疲労試験などが行われます。

材料の化学的安定性の確認

材料が体液や酵素などの生体環境下で分解や劣化を起こさず、長期間安定して使用できることを確認します。また、分解や劣化によって有害な物質が放出されないかも評価されます。

長期使用の安全性の確認

特にインプラントや義足など、長期間にわたり体内・体外で使用される材料については、長期的な影響や安全性の確認が重要です。動物試験や臨床試験を通じて、体内での耐久性や副作用を評価します。

規制遵守のためのデータ収集

多くの国では、バイオマテリアルや医療機器の製造販売にあたり、ISOやFDA、CEマークなどの規制基準を満たすことが求められます。バイオマテリアル試験は、こうした基準に従い、安全で有効な製品であることを証明するためのデータ収集にも役立ちます。

材料の改良および新規開発

バイオマテリアル試験は、材料の性能評価だけでなく、新しい材料やデバイスの開発・改良にも役立ちます。試験結果をもとに、より高性能で安全な材料の開発が促進され、医療技術の進展に貢献します。

以上の目的により、バイオマテリアル試験は患者の安全性と製品の有効性を確保し、医療技術や治療法の改善に欠かせないプロセスとなっています。

バイオマテリアル試験が活用される分野

バイオマテリアル試験は、さまざまな分野で活用されています。以下のような分野で特に重要です。

整形外科

人工関節、骨折治療用の金属プレートやネジ、脊椎インプラントなど、骨や関節をサポートするためのデバイスや材料に使用されます。これらの材料が生体内で適切に機能し、長期間安全に使用できるか確認するために、バイオマテリアル試験が行われます。

歯科

歯科用インプラント、義歯、詰め物、コーティング材などに使用される材料の安全性や耐久性を評価するために用いられます。特に、口腔内の高湿度環境での耐腐食性や生体適合性が重要です。

循環器系

人工血管、心臓のバルブ、ステントなど、血液と直接接触するデバイスの評価に使われます。血液と接触する材料に対しては、血栓の形成や免疫反応を最小限に抑えることが必要であり、こうした特性を確認するために試験が行われます。

眼科

角膜インプラントや眼内レンズなど、眼に使用される医療デバイスの評価で用いられます。目は非常にデリケートな器官であるため、材料が目に刺激を与えず、長期間にわたって安定して使用できるかを確認するための試験が必要です。

再生医療・組織工学

皮膚、軟骨、骨、血管などの再生を目的としたスキャフォールド(足場材料)や細胞移植用の材料の開発において、バイオマテリアル試験が重要です。細胞との相互作用や生分解性を評価し、治療効果や安全性を確認します。

ドラッグデリバリーシステム

薬物送達のためのデバイスや材料に対する試験が行われます。生体内で薬物が効率よく放出され、目的の組織に届くように設計される必要があるため、材料の生体適合性や薬物放出特性が評価されます。

皮膚用製品および美容医療

皮膚に使用するデバイスや注入材(例えばフィラーやボトックス)に対しても、バイオマテリアル試験が行われます。皮膚への刺激やアレルギー反応、長期的な安全性を確認するために試験が行われます。

人工臓器および補助デバイス

人工腎臓や人工膵臓などの人工臓器の開発において、長期間にわたり体内で機能するためのバイオマテリアルの安全性や耐久性の評価が不可欠です。

これらの分野でバイオマテリアル試験が行われることで、安全性と有効性が確保され、医療分野の進展に大きく貢献しています。

バイオマテリアル試験のアプリケーション例

バイオマテリアル試験のアプリケーション例として、以下のようなものがあります。

人工関節の生体適合性と耐久性評価

人工関節(膝関節や股関節など)の材料には、摩耗に強く、生体適合性があることが求められます。バイオマテリアル試験では、材料が長期間にわたって摩耗しないか、また、摩耗により有害な粒子が体内に拡散しないかを確認します。さらに、炎症や免疫反応が生じないかも評価されます。

歯科用インプラントの安全性試験

歯科インプラントにはチタンなどの金属が多く使われ、あごの骨と結合する必要があります。バイオマテリアル試験により、骨としっかり結合し、腐食しにくく、周囲組織に刺激を与えないことを確認します。特に、口腔内の環境は過酷であるため、材料の腐食耐性も試験されます。

ステントの血栓形成リスクと生体適合性試験

心臓や血管内に挿入されるステントは、血流に直接触れるため、血栓形成を抑えることが重要です。バイオマテリアル試験により、血栓ができにくい表面加工や材料を用いることで、血管内での安全な使用を確保します。また、長期間体内で機能し、分解や劣化が起こらないことも確認されます。

角膜インプラントの透明性と生体適合性の評価

角膜インプラントやコンタクトレンズの材料には透明性が求められ、また、目に異物感を与えず、目の組織を刺激しないことも重要です。バイオマテリアル試験では、材料が透明なまま維持されるか、また長期間にわたって目の細胞や組織に有害な影響を与えないかを評価します。

再生医療用スキャフォールドの細胞接着性試験

再生医療や組織工学で使用されるスキャフォールド(足場材)は、細胞が効率よく付着し、増殖することが必要です。バイオマテリアル試験により、材料がどの程度細胞と接着しやすいか、また、細胞が正常に成長する環境を提供するかを評価します。また、スキャフォールドが生分解性であれば、分解速度も治療に適したものであるか試験されます。

ドラッグデリバリーシステムの薬物放出試験

特定の病変部位に薬物を効率よく運ぶドラッグデリバリーシステムでは、材料が生体内でどのように薬物を放出するかが重要です。バイオマテリアル試験により、薬物が適切な速度で放出されるか、材料の分解によって有害物質が発生しないかを確認します。

皮膚用フィラーの安全性と持続性評価

美容医療で使用される皮膚用フィラー(ヒアルロン酸フィラーなど)は、長期間皮膚内に留まり、自然に分解することが求められます。バイオマテリアル試験で、フィラーが皮膚内で安定し、炎症や感染を引き起こさないこと、また適切な分解速度で吸収されることが確認されます。

これらのアプリケーション例は、バイオマテリアル試験によって材料の安全性や有効性が確保され、臨床での使用が可能になる具体例です。医療分野の幅広い応用においてバイオマテリアル試験は不可欠です。

バイオマテリアル試験の仕組み

バイオマテリアル試験の仕組みは、材料が生体内で安全かつ効果的に機能するかを評価するため、さまざまな試験を組み合わせて行います。具体的なプロセスは以下のような流れです。

前処理と材料の準備

バイオマテリアル試験の前に、材料を試験に適した形状や大きさに加工し、必要であれば表面処理を行います。また、試験の信頼性を保つために滅菌処理を施したり、材料が試験環境に適応するよう調整したりします。

生体適合性試験

まず、材料が細胞や生体組織に対して有害でないかを確認します。一般的な方法には以下があります。

  • 細胞毒性試験: 培養した細胞に材料を接触させて、細胞が正常に増殖するかを確認します。

  • 感作性試験: 免疫系に異常な反応(アレルギー)が生じないか評価します。

  • 刺激性試験: 材料が皮膚や粘膜に接触した際に、炎症や刺激反応を引き起こさないか調べます。

機械的特性試験

材料が機械的な負荷に耐えられるかを評価します。これは特に、インプラントや骨補填材、義肢など、負荷がかかる用途で重要です。

  • 引張試験: 材料に引っ張る力を加えて、破断するまでの強度を測定します。

  • 圧縮試験: 圧縮する力を加え、どの程度の力で破壊または変形が生じるかを評価します。

  • 疲労試験: 繰り返しの力が加わった場合に、長期間にわたって材料が破壊されないかを評価します。

化学的特性試験

材料の化学的安定性を確認し、生体内での劣化や有害物質の放出がないかを調べます。

  • 溶出試験: 材料が生体環境中で溶け出したり、化学的に変化したりしないか確認します。

  • 加速劣化試験: 高温や過酷な条件で材料を処理し、通常より短期間で劣化をシミュレーションして、長期安定性を評価します。

イメージングと形態観察

顕微鏡などを使用し、材料表面や内部構造を観察します。特に、細胞や組織がどのように材料に接触しているか、また劣化や摩耗が生じていないかを詳細に観察します。

生体内試験(in vivo試験)

最終的には、動物モデルや実際の人体環境において、安全性と機能性を評価します。たとえば、インプラントが体内で炎症を引き起こさず、周囲組織と結合するかを確認します。

  • 動物試験: 小動物(ラットやウサギなど)や大型動物で、材料を埋め込んで長期的な影響を観察します。

  • 臨床試験: 医療機器としての材料を人体で使用する段階で、試験結果をもとに安全性と効果を確認します。

データ分析と報告

各試験の結果をもとに、バイオマテリアルの安全性、有効性、長期的な性能を評価し、データを解析します。この分析結果は、製品の改良や承認申請、さらに規制機関への提出書類に活用されます。

バイオマテリアル試験は、このような仕組みで段階的に進められ、人体に適した医療用材料が安全に使用できるよう確認されています。各段階で得られたデータにより、材料の安全性、耐久性、生体適合性が総合的に評価されることで、製品の信頼性が確保されます。

バイオマテリアル試験に使用される装置

バイオマテリアル試験に使用される装置には、材料の生体適合性や機械的特性、化学的安定性を評価するための多様な機器があります。まず、細胞培養装置では、細胞毒性試験や接着性試験を行い、材料が細胞にどのような影響を与えるか評価します。引張試験機疲労試験機は、インプラントや義肢などの機械的負荷に耐えることが求められる材料に対して、強度や耐久性を調べます。

電子顕微鏡(SEM、TEM)では、材料の表面や内部の構造を観察し、細胞との接着状態や劣化の有無を確認します。また、赤外分光計(FTIR)液体クロマトグラフ(HPLC、GC)を用いて、材料の化学組成や溶出物を分析し、化学的安定性を評価します。

さらに、CTMRIなどのイメージング装置を用いることで、埋め込んだインプラントの位置や組織との関係性を可視化し、炎症や結合状態を確認します。また、血液適合性試験装置により血液との相互作用を調べ、血栓形成のリスクを評価します。熱分析装置(DSC、TGA)では、生分解性材料の熱的特性や分解温度を測定し、耐熱性や生分解特性を評価します。

これらの装置を用いることで、バイオマテリアルが医療用途の要求を満たしているか、長期にわたり安全に使用できるかを総合的に評価します。

バイオマテリアル試験・強度測定装置

オレンジサイエンスでは、生体サンプルのメカニカルテストを得意とするUniVertや、従来できなかった微粒な組織やマイクロスケールサンプルの強度測定を実現した強度測定装置・微粒子計測器MicroTesterの取り扱いがございます。

UniVert
MicroTester

UniVert

生体サンプルの強度測定

UniVert(ユニバート)は、生体サンプルの強度測定に特化した強度測定器です。
ロードセルのレンジを0.5N~10kNと狭めることでリーズナブルな価格でコンパクト、持ち運びやすい形状を実現しました。
非常にコンパクトな形状で場所を選ばず強度試験を実施でき、生体サンプルに特化しているためグリップも簡単にでき、研究のための精度の高い試験・解析・測定が可能となります。
圧縮試験や3点曲げ試験を実施するためのモジュール交換も容易にでき、解析・分析ソフトウェアも標準で付属します。

MicroTester

マイクロスケール圧縮強度測定装置

MicroTesterはマイクロスケール生体サンプルや微粒子の粘弾性測定に特化した粘弾性測定装置です。

 

1㎜以下径のビーム(カンチレバー)とプレートで直接サンプルに接触して、非破壊で約0.005~500µNの粘弾性試験が可能です。生体サンプルの試験に特化し工業用の試験機では実現できないコンパクトさ、試験レンジを実現し、精度の高い試験・解析が可能となりました。チャンバー前方に取り付けられた高解像度カメラにより、サンプルの変位の画像解析も可能です。

MicroTesterマイクロスケール圧縮強度測定装置
MicroTesterマイクロスケール圧縮強度測定装置測定画面

オレンジサイエンスが取り扱うその他の製品

オレンジサイエンスでは、測定機器の他にも伸展刺激装置・圧縮刺激装置を取り扱っております。ご不明点や取り扱い装置に関する詳細など、お気軽にお問い合わせください。

CellScale/セルスケール社

Mechano Cultureシリーズの機械的刺激培養装置はモデルにより、360度伸展、シリコンチャンバー伸展、マテリアル伸展、流体圧縮、機械的圧縮+データ測定、マテリアル伸展+データ測定が可能です。

STREX/ストレックス社

​独自のシリコンチャンバーを伸展させることにより、チャンバー上の細胞に伸展刺激を与えることが可能です。顕微鏡搭載モデルは、倒立顕微鏡での伸展細胞の観察も可能です。

IonOptix/イオンオプティクス社

C-Stretchシステムはシリコンチャンバーを採用した伸展培養装置です。C-Pace EMシステムと使用することにより、伸展刺激と同時に、電気刺激を与えることも可能です。

図1.png
strex5.png
C-Stretch.jpg

オレンジサイエンスについて

サービス、サポートについて

我々は、機器を提供するだけでは不十分であると考えています。機器の販売前から弊社の製品について、深い知識によるアドバイスを研究者の皆様にご提供します。御購入後も、我々が直接サポートするだけでなく、技術的質問にも迅速かつ真摯に対応いたします。
私共オレンジサイエンスは、高品質の科学研究機器およびソフトウェアの提供を通じて、科学の発展に貢献いたします。

オレンジサイエンスは、高品質の製品とサービスで研究を支援します。

オレンジサイエンスのスタッフは日本で研究する皆様の研究の効率化を実現するために、アメリカとヨーロッパから研究に有用な製品の情報を収集し横浜オフィスに収集しています。横浜のスタッフは、各地のメーカーを定期的に訪れて技術力を向上させています。機器の納品後も継続して研究室をご訪問させていだき、実験の進捗状況についてお聞きし、研究機器についての質問にもお答えします。

 

皆様の御研究が実を結び、我々が間接的にでも多くの人々のクオリティーオブライフの向上に貢献できることを願っております。

オレンジサイエンスについて

私たちは、ライフサイエンスの中でも

細胞生物学分野に関する研究機器に特化して

販売およびサポートをしています。

多種多様な装置を取り扱うのではなく、装置とその用途について深い知識を持ち、ユーザの皆様の研究をよりよく理解することを心掛けています。研究者の皆様への技術サポートを通じて、ライフサイエンスの発展に貢献することを目指す会社です。
北米およびヨーロッパのメーカーと培ってきた国際的背景、そして、長年の経験と日本の研究機器の現場での理解を通して、ユニークな立場から高品質なアドバイス、サービスそして製品を日本の研究者の皆様にお届けします。

オレンジサイエンスの製品について

この分野の装置は、日本が常に一番というわけではありません。日本では国内メーカーの製品が好まれていますが、おそらくアフターサービスの良さが大きな要因だと考えられます。欧米で、より顕著な発展を見せている研究機器を国内メーカーと同じレベルのサポート体制でお使いいただければ、皆様の研究をさらに効率化することができるはずです。

信頼いただけるアフターサービス

私共は、一人一人のお客様にお会いしています。携帯電話の番号をお知らせしますが、コールセンターの番号はありません。一方で、メーカーの技術陣との連絡も大変密に取っています。装置の開発者たちと私共は顔見知りです。つまり、より正確で迅速なサポートをいたします。販売の前から同じ担当者が引き続きサポートいたします。

bottom of page