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細胞形態分析 - 細胞形態学・研究

  • Orange Science
  • 11月19日
  • 読了時間: 13分

細胞形態研究のための広視野蛍光イメージング

細胞が環境に応じて形状を変化させる仕組みを理解することは、遺伝子発現、組織構成、疾患進行の複雑性を解明する上で極めて重要です。UCLAのアレクサンドラ・ベルムデスとニール・リン研究室による最近の研究「“Regulation of chromatin modifications through coordination of nucleus size and epithelial cell morphology heterogeneity” 核サイズと上皮細胞形態の異質性の協調によるクロマチン修飾の制御」では、細胞の密集度、核サイズ、エピジェネティックな変化の間に驚くべき関連性が明らかになりました。


この動的な相互作用を捉えるため、研究者らは広視野蛍光イメージングを用いて、時間経過に伴う細胞および核の変化をモニタリングしました。エタルマ顕微鏡に20×/0.40 NA対物レンズを装着し、5分間隔で6日間にわたる高解像度タイムラプス撮影を実施。低出力LEDによる細胞損傷のない照明システムにより、長期生細胞研究を支える驚異的な成果を達成しました。


広視野蛍光法は、密に詰まった上皮細胞群におけるクロマチン状態の可視化と形態学的異質性の追跡に必要な空間分解能と感度を提供しました。このイメージング技術と自動培地交換、安定した照明を組み合わせることで、研究者は最適な培養条件を維持しつつ、分析用の高品質画像数千枚を収集できました。


エタルマの蛍光顕微鏡はこれらの用途に特に適しています——インキュベーター内で動作可能なコンパクトさでありながら、微細な細胞構造をリアルタイムで可視化する十分な性能を備えています。本研究における広視野蛍光イメージングの統合は、組織環境内の機械的・空間的制約が核構造、ひいては遺伝子調節に及ぼす影響を解明する上で決定的な役割を果たしました。


研究論文全文はこちらからご覧いただけます。





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A ヒストンH3リジン27トリメチル化(H3K27me3)で染色したMDCK細胞の画像。異なる細胞におけるその発現レベルの変動を示す。スケールバー=50μm。B MDCK細胞における正規化H3K27me3発現レベルと核面積の相関関係。N=461。95%信頼区間は[−0.447, −0.194]。C H3K27me3で染色したE12.5マウス上皮組織の画像。スケールバー=25μm。D マウス上皮組織における正規化H3K27me3発現と核面積の相関関係。N=130。95%信頼区間は[−0.459, −0.209]。E ヒストンH3リジン9アセチル化(H3K9ac)で染色したMDCK細胞の画像。スケールバー=50μm。F MDCK細胞における正規化H3K9ac発現と核面積の相関。N=1130。95%信頼区間は[0.183, 0.293]。G H3K9acで染色したE12.5マウス上皮組織の画像。スケールバー=25μm。H マウス上皮組織における正規化H3K9ac発現量と核面積の相関関係。N=713。95%信頼区間は[0.0988, 0.241]。


細胞形態学

細胞形態学(cell morphology)とは、細胞の形・大きさ・構造・配置・内部構造(核、細胞小器官など)の観察と評価を行う学問分野です。細胞がどのような形態をとるかは、細胞の種類、分化状態、機能、外部環境、疾患状態などによって大きく影響を受けます。そのため、形態の変化を正確に観察することは、生命科学・医学研究の基礎となります。



細胞形態研究

細胞形態研究(cell morphology research)は、細胞の形態的特徴を定量的または定性的に解析し、その背後にある生物学的メカニズムや病態を明らかにする研究領域です。一般的には、以下のような目的で行われます。

  1. 細胞の種類や分化状態の判定

  2. 病理学的評価(がん細胞・炎症細胞などの異常形態の解析)

  3. 外的刺激(薬剤、機械刺激、培養条件など)による形態変化の評価

  4. 細胞骨格や細胞接着、細胞運動などの機能と形態の関係解析

  5. 発生・組織形成の過程での形態変化の理解


観察・解析に使用される主な手法

  1. 明視野顕微鏡

  2. 位相差顕微鏡・微分干渉顕微鏡

  3. 蛍光顕微鏡(細胞骨格、核、オルガネラの可視化)

  4. 電子顕微鏡(超微細構造の観察)

  5. 画像解析(細胞の面積、周囲長、円形度、伸展度、体積、細胞骨格の配向解析など)


細胞形態研究が重要である理由

細胞の形は、その機能や状態を反映します。たとえば、がん細胞の形態異常、神経細胞の樹状突起の伸長、筋細胞の配列、上皮細胞の極性などは、それぞれの生物学的機能や疾患と密接に関連しています。したがって、形態解析は疾患研究、薬剤評価、再生医療、メカノバイオロジー、毒性学など多くの分野で不可欠です。


細胞形態分析

細胞形態分析とは、細胞の形や大きさ、構造、配置、内部構造などを定量的または定性的に評価する手法の総称です。細胞の状態や機能は形態に強く反映されるため、形態変化を測定・解析することは生命科学研究や医療分野において重要な指標となります。


何を評価するのか

一般的な細胞形態分析では、次のような項目が測定されます。

  1. 細胞の大きさ(面積、体積)

  2. 細胞の形状(円形度、伸展度、アスペクト比など)

  3. 細胞骨格の構造(アクチンストレスファイバー、微小管の配向など)

  4. 細胞の配置・密度

  5. 核の形状や大きさ

  6. 細胞の極性や突起形成(神経突起、フィロポディア、ラメリポディアなど)


主に使用される手法

  1. 明視野・位相差・微分干渉顕微鏡

  2. 蛍光顕微鏡(細胞骨格、核、細胞膜、オルガネラの可視化)

  3. 共焦点顕微鏡

  4. 電子顕微鏡(超微細形態の解析)

  5. 画像解析ソフトウェアによる定量解析


細胞形態分析が用いられる主な目的

  1. 細胞の状態評価 分化、増殖、老化、アポトーシス、ストレス反応など。

  2. 疾患研究 がん細胞の形態異常、神経変性に伴う形態変化、炎症に伴う細胞形態の変動など。

  3. 薬剤スクリーニング 薬剤や化合物が細胞形態に与える影響の解析。

  4. メカノバイオロジー研究 機械刺激(伸展、圧縮、せん断応力など)による形態変化の評価。

  5. 再生医療・組織工学 細胞の配列、極性、組織化過程の評価。

  6. 毒性評価 細胞毒性による形態変化の解析。



どのように解析するのか

分析の基本的な流れは次の通りです。

  1. 顕微鏡による画像取得

  2. 対象構造(細胞膜、核、細胞骨格など)の染色

  3. 画像の前処理(ノイズ除去、コントラスト調整)

  4. セグメンテーション(細胞の輪郭を自動抽出)

  5. 定量解析(面積、長さ、配向など)

  6. 統計解析(群間比較、クラスタリングなど)


細胞形態研究の目的

細胞形態研究の主な目的は、細胞の形態的特徴から細胞の状態・機能・変化を理解することです。細胞の形や構造は、内部で起きている生物学的プロセスを反映するため、形態を正確に観察・解析することは多くの研究領域の基盤になります。

目的は概ね次の5つに整理できます。


1. 細胞の状態や機能の理解

細胞の形態は、増殖、分化、老化、ストレス応答、アポトーシスなどの状態を反映します。例えば、伸展した形状は接着・移動が活性化している状態、円形化はアポトーシスや細胞毒性の兆候などと関連します。


2. 疾患・病態メカニズムの解明

がん細胞の形態異常、神経細胞の突起退縮、免疫細胞の活性化形態など、疾患特有の形態変化を解析することで病態理解が進みます。病理学でも形態変化の解析は診断の基本となります。


3. 外的刺激(薬剤・機械刺激・培養条件)の影響評価

薬剤処理、機械的ストレス、基質硬度、培養環境などが細胞に与える影響を形態から定量的に評価します。薬剤スクリーニングやメカノバイオロジー研究で重要です。


4. 細胞骨格ダイナミクスと細胞機能の関連解析

細胞形態はアクチン、微小管、中間径フィラメントなどの細胞骨格によって決まります。突起形成、細胞運動、接着、極性、張力発生などの機能と形態変化を結びつけて理解することが目的です。


5. 組織形成や再生医療の研究

細胞がどのように配列し、極性を持ち、組織を構築していくかを形態情報から解析します。オルガノイド研究、再生医療、組織工学などで不可欠です。


細胞形態分析の研究分野

細胞形態研究は、細胞の形、構造、配置から機能や状態を理解する必要があるあらゆる生命科学・医学領域で行われています。 基礎研究から応用研究まで幅広く利用される共通基盤的な研究手法です。


1. 基礎細胞生物学

細胞骨格、細胞極性、細胞接着、細胞運動などの解析。細胞がどのように形を変え機能を発揮するかを研究する中心領域です。


2. 発生生物学

胚発生、組織形成、臓器の形づくりの過程で起こる細胞形態変化を解析します。


3. がん研究

がん細胞特有の形態異常、浸潤・転移に伴う形態変化、細胞骨格再編成などを評価します。病理評価でも形態解析は重要な役割を持ちます。


4. 神経科学

神経細胞の軸索・樹状突起の伸長、シナプス形成、退縮などの形態変化を解析します。


5. 免疫学

免疫細胞の活性化、遊走、貪食に伴う形態変化を研究します。


6. 再生医療・組織工学

細胞配列、極性、組織構築のプロセスを形態情報から解析します。オルガノイドや3D培養系でも必須です。


7. メカノバイオロジー

機械刺激(伸展、圧縮、せん断応力)、基質硬度、細胞張力などと形態変化の関係を解析します。形態は力学環境を反映するため重要な指標です。


8. 薬剤開発・毒性評価

薬剤処理による細胞形態の変化を定量することで、効果・毒性・安全性の評価に利用されます。


9. 病理学・臨床研究

組織切片(肝臓、腎臓、脳、がん組織など)における細胞形態を観察し、診断・病態理解に活用します。


10. 微生物学・感染症研究

ウイルス・細菌感染による宿主細胞形態変化を解析します。


細胞形態研究のアプリケーション例

細胞形態研究は、細胞の形状・大きさ・構造の変化を指標として、細胞機能や状態を理解するために用いられます。


1. 細胞分化の評価

幹細胞や前駆細胞が特定の細胞種へ分化する際、形態が大きく変化するため、その過程を追跡するために利用されます。例:神経細胞の突起伸長、筋細胞の配列、脂肪細胞の肥大化など。


2. がん細胞の形態異常解析

がん細胞は正常細胞とは異なる形態(核の肥大、細胞極性の喪失、異型性など)を示します。形態解析は腫瘍の悪性度評価や薬剤効果測定に役立ちます。


3. 薬剤スクリーニング(フェノタイプスクリーニング)

化合物処理による細胞形態の変化(伸展度、細胞骨格、細胞サイズなど)を指標として、薬効や毒性を評価します。


4. メカノバイオロジー研究

細胞伸展、圧縮、流体せん断応力、基質硬度などの力学刺激に対する細胞形態変化の解析。細胞張力や細胞骨格再編成の評価に用いられます。


5. アポトーシス・壊死の検出

細胞の丸まり、収縮、核の凝縮など、細胞死に伴う形態変化を検出します。


6. 免疫細胞の活性化・遊走解析

マクロファージの貪食時の形態変化、T細胞の活性化による形態・接着変化、好中球の遊走などを解析します。


7. 感染症研究

ウイルスや細菌感染に伴う宿主細胞の形態変化(細胞骨格の破壊、細胞の円形化など)を解析します。


8. 再生医療・組織工学

細胞の極性、配列、組織形成の過程における形態変化を解析し、組織再構築の指標とします。例:オルガノイドの組織化、上皮細胞シートの極性形成など。


9. 神経科学(神経形態解析)

神経細胞の樹状突起や軸索の伸長、分岐、スパイン密度の評価に利用されます。神経発達、可塑性、神経変性研究で広く使われます。


10. 病理学における組織評価

肝臓、腎臓、肺、脳などの組織切片における細胞形態を解析し、病態や病理変化を理解します。


細胞形態研究への Etaluma社 蛍光顕微鏡 LS850 の活用

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Etaluma(エタルマ)社の蛍光顕微鏡 LS850 は、細胞の“かたち”の変化を正確に捉えるために設計された、全自動・倒立型のイメージングシステムです。明視野・位相差・3色蛍光を搭載し、長期間のタイムラプス観察にも対応しているため、細胞形態研究の幅広いアプリケーションで活用されています。


1. 細胞の広がり・配列・コンフルエンシーの評価に最適

LS850は、明視野・位相差観察に対応しており、細胞の広がり方、形状、密度(コンフルエンシー)をクリアに捉えることができます。96ウェルなどのマルチウェルプレートも自動ステージで一括撮影できるため、多条件の比較や薬剤スクリーニングに便利です。


2. 細胞骨格や核形態の蛍光観察が可能

青・緑・赤の3チャネル蛍光に対応しているため、以下のような細胞形態解析が可能です。

・アクチンや微小管など細胞骨格の形態評価・核の大きさ、円形度、異型性の解析・接着斑や細胞膜マーカーを用いた接着形態の可視化

Zスタック撮影にも対応しているため、立体的な形態観察にも活用できます。


3. 長期ライブセル観察で形態変化を追跡

LS850はインキュベーター内でも使用できる構造のため、細胞に負担をかけず長期間のタイムラプス撮影が可能です。これにより、

・細胞移動(wound healing 等)・増殖に伴う形態変化・アポトーシス時の丸まり・収縮

など、時間とともに変化する細胞形態を途切れなく記録できます。


4. マルチウェルでの形態スクリーニングに対応

自動XYステージとスクリプト可能な撮影制御により、多数の条件を同時に撮影できます。薬剤濃度の違いによる形態変化の比較や、細胞毒性評価など、形態を指標にしたスクリーニングに有効です。


5. 組織切片や小型オルガノイドにも対応可能

スライド、ディッシュ、マイクロプレートなど幅広い容器に対応しているため、薄い組織切片や小型オルガノイドの形態観察にも応用できます。Zスタック機能により、厚みのある試料でも焦点位置を調整しながら観察できます。 (※観察可能かどうかは試料の厚みや透明性に依存します。)


LS850は、 ・明視野/位相差/3色蛍光 ・全自動ステージ ・オートフォーカス&Zスタック ・インキュベーター内での長期ライブセル撮影 といった機能を備え、細胞の形態変化を多角的かつ定量的に解析するために最適なプラットフォームです。

細胞の“動き”や“かたち”にフォーカスした研究を進めたい研究者の方に、非常に相性の良い顕微鏡システムです。



Etaluma社 蛍光顕微鏡 LS850

細胞形態研究を高精度に支える次世代イメージングシステム


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細胞の構造変化や機能的な状態を正確に捉える「細胞形態分析」「細胞形態学」の領域では、再現性の高いイメージング環境が不可欠です。Etaluma社のLS850は、明視野・位相差・3色蛍光を搭載した高性能蛍光顕微鏡として、細胞形態研究に求められる観察精度と運用性を両立したモデルです。


LS850は、細胞形態の微細な変化から細胞骨格の再編成、さらには蛍光プローブを用いた遺伝子発現の可視化まで、幅広いアプリケーションに対応します。自動XYステージやZスタック機能により、細胞の位置情報や三次元構造を含む高品質データを効率的に取得でき、長期タイムラプスイメージングにも適しています。


また、インキュベーター内での安定稼働が可能なため、細胞形態の時間経過に伴う変化を生理的条件下で継続的に記録できます。これにより、細胞の分化、増殖、ストレス応答、薬剤処理の影響といった重要な過程を、細胞形態学的観点から包括的に把握することが可能になります。


細胞形態研究において高い精度と運用効率を求める研究施設にとって、Etaluma社のLS850は、信頼性の高いイメージングソリューションとして最適な選択肢です。







etaluma社 ライブセルイメージングシステム Lumascope


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 エタルマのLumascope(ルマスコープ)は、優れた感度、解像度、ゼロピクセルシフトを備えた、半導体光学の新しいコンセプトで設計された、倒立型小型蛍光顕微鏡です。


 そのコンセプトのデザインにより、インキュベーター、ドラフトチャンバーなどの限られたスペースの中で使用でき、幅広いラボウエアでのライブセルイメージングを可能にします。



LS820 は、現行のモデルにオートフォーカス機能が追加され、低コストでのオートフォーカス3色蛍光観察が可能になりました。ソフトウエアも新しくなり、より簡単に、高画質な画像データの取得ができます。


LS850 は、現行の自動XYステージのついたLS720全自動モデルの改良版です。新たな位相差技術により、位相差照明をコンパクトにし、オプションのタレットにより、4つの対物レンズを搭載することが可能となりました。 




各モデルの詳細は下記からご確認下さい。







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