高スループット薬剤スクリーニング|心筋細胞の収縮・弛緩をCytoMotion+MultiCellで評価
化合物ごとの収縮速度・弛緩速度を測定し、心筋細胞の機能変化を比較する。
心筋細胞を用いた薬剤スクリーニングでは、候補化合物が細胞の収縮と弛緩にどのような影響を与えるかを捉えることが重要です。複数の化合物や濃度条件を比較するには、測定対象の探索、データ取得、解析にかかる時間も課題になります。
IonOptix社のCytoMotion(サイトモーション)は、iPS心筋細胞などの動きを画像から捉え、収縮・弛緩の動態を解析するソフトウェアです。自動測定システムMultiCell(マルチセル)と組み合わせることで、心筋細胞の機能を指標とする高スループット薬剤スクリーニングを支援します。
収縮性の増強を示す陽性変力作用(positive inotropy)の検討から、弛緩動態の変化、心機能への影響を調べる探索研究まで、目的に合わせた測定系を構成できます。



高スループット薬剤スクリーニングとは
高スループット薬剤スクリーニングとは、多数の候補化合物や実験条件を効率よく評価し、目的とする生物学的応答を示す候補を探索する手法です。研究目的に応じて、酵素活性、細胞生存率、シグナル応答、細胞の形態や運動などを評価指標にします。
心筋細胞を対象とする場合は、薬剤添加後の収縮・弛緩の変化を機能的な表現型として捉えます。例えば、収縮が速くなる化合物、弛緩にかかる時間を変える化合物、拍動の規則性に影響する化合物を、同じ測定条件で比較する研究が考えられます。
測定の自動化に加えて、どの細胞モデルを使い、何をもって応答とするかを決めることが、スクリーニング系の設計につながります。
心筋細胞の薬剤スクリーニングで、このような課題はありませんか
細胞を探し、位置や焦点を合わせる作業に時間がかかる。
化合物数や濃度条件を増やすと、測定と解析が追いつかない。
薬剤添加前後で、同じ細胞や解析領域を比較したい。
収縮速度と弛緩速度をまとめて取得し、応答の違いを整理したい。
iPS心筋細胞の形状やコントラストに合った解析方法を使いたい。
CytoMotion+MultiCellでは、画像による収縮解析と自動測定を組み合わせ、化合物ごとの応答の解釈に取り組みやすい測定環境を構築します。
CytoMotion+MultiCellによる高スループット測定の特徴
1時間に数百細胞を逐次測定するMultiCell
MultiCellは、単離心筋細胞の収縮・蛍光データ取得について、1時間に数百細胞を順次測定できます。自動測定により、複数の対象から収縮・弛緩データを集める工程を効率化します。
この数値は細胞の測定数を示す目安です。実際の処理数は細胞種、記録時間、測定項目、ステージ移動、刺激条件などで変わります。iPS心筋細胞の培養形態によっては、個々の細胞ではなく視野内の解析領域(ROI)を測定単位にするため、研究計画に合わせて必要な測定時間を見積もります。
自動セル検出で対象探索を効率化
MultiCellのAutomatic Cell Finderは、設定した条件に合う細胞を探索し、位置を記録して測定するためのモジュールです。細胞の面積や縦横比、細胞間距離などの選択条件を設定できます。
対象選択の条件を明文化すると、実験ごとの選び方を揃えやすくなります。単離心筋細胞とiPS心筋細胞では、形態や解析方法が異なるため、自動検出の適用範囲、ROIの設定、使用するモジュールを細胞モデルに合わせて確認します。
マルチウェルプレートに対応
オプションのMultiWellステージは、ウェル間の移動をプログラムできます。6ウェル、24ウェル、96ウェルなどのプレート用ウェルマップを指定できます。
化合物、濃度、対照条件をウェルごとに配置する実験では、測定順序を事前に決めることでデータ取得を進めやすくなります。採用するプレートは、ウェル数とともに底面の光学特性、対物レンズ、温度管理、電極や灌流系との適合性も確認します。
ラベルフリーでiPS心筋細胞の動態を取得
CytoMotionは画像のコントラスト変化を用いて、細胞の収縮・弛緩をリアルタイムに捉えます。運動検出のための蛍光標識を必要としないことが特徴です。
形状が不定形なiPS心筋細胞でも、測定した波形から収縮と弛緩の時間的な変化を調べられます。別途カルシウム動態も測定する場合は、蛍光測定系と適切な蛍光プローブを組み合わせます。
バッチ解析で取得後の処理を効率化
解析ソフトウェアCytoSolverを組み合わせると、複数ファイルの波形検出、平均化、フィッティングなどをバッチ処理できます。拍動頻度とそのばらつきの解析にもCytoSolverを使用します。
自動解析では、除外条件を実験目的に合わせて設定します。薬剤による拍動の不規則化や収縮低下も研究対象となるため、除外された波形とその理由を確認し、生物学的な応答を見落とさない運用が大切です。
化合物ごとに評価できる収縮・弛緩の指標
薬剤の応答を比較する際は、一つのピーク値に加えて、収縮と弛緩の時間経過を組み合わせて評価します。CytoMotionでは、以下の動態パラメータを取得・解析できます。
評価指標 | 捉える変化 | 薬剤比較への活用 |
|---|---|---|
最大収縮速度 | 収縮相の動きが最も速くなるときの速度指標 | 化合物による収縮動態の変化を比較 |
最大収縮速度までの時間 | 収縮開始から最大速度に達するまでの時間 | 収縮の立ち上がりの違いを検討 |
収縮時間 | 設定したピーク割合に達するまでの時間 | 収縮過程の短縮・延長を検討 |
最大弛緩速度 | 弛緩相の動きが最も速くなるときの速度指標 | 弛緩の速さへの影響を比較 |
最大弛緩速度までの時間 | 弛緩相で最大速度に達するまでの時間 | 弛緩過程の動態を検討 |
弛緩/再伸長時間 | 設定したベースライン割合まで戻る時間 | 弛緩の促進・遅延を検討 |
拍動頻度・ばらつき | 拍動数と周期の変動 | 自発拍動や拍動の規則性を検討。CytoSolverによる解析が必要 |
速度やピークなどの出力は、画像解析で得られる指標として、使用するアルゴリズムと単位を確認して扱います。特に任意単位で表示されるピーク値やピーク高さは、異なる細胞・視野間で絶対的な収縮性の尺度として比較せず、同じ対象の添加前後の差分などに利用します。
陽性変力作用(inotropy)の評価にどう活用するか
陽性変力作用は心筋の収縮性を増強する作用、陰性変力作用は収縮性を低下させる作用を指します。
画像に基づく薬剤スクリーニングでは、同じ細胞やROIの添加前後の変化に、収縮速度、収縮時間、弛緩動態、拍動頻度を組み合わせ、収縮性への影響を検討します。対照条件と比較しながら、濃度に応じた変化が見られるか、別のウェルや細胞ロットでも応答が再現されるかを確認します。
最大収縮速度の増加だけで陽性変力作用を断定すると、拍動頻度や測定条件の影響を見落とす可能性があります。また、CytoMotionによる画像解析は力をニュートン単位で直接測る方法ではありません。研究目的に応じて、カルシウム動態や力学測定などを併用し、作用の解釈を進めます。
高スループット薬剤スクリーニングへの活用例
以下は、取得できる指標に基づく研究用途の例です。具体的なアッセイ条件と判定基準は、使用する細胞モデルごとに設定します。
候補化合物の機能的な応答を比較
複数の候補化合物を添加し、収縮・弛緩指標の変化を比較します。まず一定の条件で応答を探索し、候補に対して濃度や曝露時間を変えた追加評価を行う設計が考えられます。
収縮の変化と弛緩の変化を併せて整理すると、化合物ごとの応答の特徴を捉えやすくなります。
疾患モデルと対照モデルの薬剤応答を検討
疾患に関連するiPS心筋細胞モデルと対照モデルに同じ化合物を適用し、収縮・弛緩動態の変化を比較する研究に活用できます。
解析では、添加前の機能差と薬剤による変化を分けて考えます。細胞の成熟度、培養期間、播種密度なども揃え、モデル間の違いを解釈します。
心機能への影響を探索的に評価
薬効を探索する化合物について、収縮低下、弛緩の遅延、拍動周期の変化などを調べる研究にも利用できます。
収縮データは、心毒性研究における機能評価の一つです。必要に応じて細胞生存率や電気生理学的な測定を組み合わせ、化合物の影響を複数の観点から評価します。
カルシウム動態と収縮動態を併せて検討
蛍光測定に対応した構成を選択すると、カルシウムトランジェントと収縮動態を併せて調べられます。
収縮の変化とカルシウム応答の関係を確認することで、観察した機能変化の背景を検討できます。蛍光色素、光源、検出器、取得条件は、実験目的に合わせて選択します。
薬剤スクリーニングを進める5つのステップ
ステップ1:細胞モデルと評価目的を決める
iPS心筋細胞、疾患モデル由来の心筋細胞、単離心筋細胞など、研究目的に合うモデルを選びます。主な評価指標を決め、必要な化合物数、濃度数、ウェル数、独立した実験の回数を整理します。
ステップ2:プレート配置と測定条件を設計する
溶媒対照、適切な陽性対照、候補化合物を配置します。温度、培地、記録時間、測定順序を揃え、電気刺激を使用する場合は周波数やパルス条件も設定します。
ステップ3:添加前の基準データを取得する
解析する細胞やROIを設定し、薬剤添加前の収縮・弛緩を記録します。同じ対象を再測定する設計では位置情報を利用し、基準となる波形を保存します。
ステップ4:薬剤添加後のデータを取得する
所定の曝露時間を経て測定します。濃度系列や経時変化を調べる場合は、測定順序と時間を記録します。連続的な濃度変更を行う設計では、前の条件の影響が残る可能性も考慮します。
ステップ5:バッチ解析と候補の確認を行う
収縮速度、弛緩速度、時間指標などを解析し、添加前からの変化と対照群との差を整理します。候補化合物は独立したウェルや別の実験でも確認し、追加の機能評価につなげます。
測定数とともに、比較できるデータを整える
多くのデータを取得するときほど、測定単位と解析条件を揃えることが重要です。
細胞モデルと測定環境を記録する
培養日数、成熟度、播種密度、細胞ロット、温度、培地条件を記録します。化合物間の比較では、測定時点や溶媒濃度も揃えます。
参照画像とROIを適切に設定する
CytoMotionでは参照フレームの選択が解析に影響します。細胞が弛緩しているときの参照画像を選ぶこと、ROIを移動する際に記録を区切ることで解析の正確度を上げることができます。
細胞数と独立した反復を区別する
一つのウェルから多くの細胞やROIを測定した場合、その数を独立した実験数として扱うと結果を過大評価するおそれがあります。細胞・ROI、ウェル、細胞ロット、実験日の階層を整理し、研究デザインに合った解析を行います。
CytoMotion・MultiCell・C-Pace EMの役割
目的に応じて、収縮解析、自動測定、電気刺激培養を組み合わせます。
製品・モジュール | 主な役割 | 構成を検討する場面 |
|---|---|---|
CytoMotion | iPS心筋細胞などの画像に基づく収縮・弛緩動態の取得 | ラベルフリーで心筋細胞の運動を解析したい |
MultiCell | 測定位置の制御と複数対象の自動測定 | 複数条件から効率よく機能データを取得したい |
Automatic Cell Finder | 条件に合う細胞の探索と測定対象の登録 | 対象探索を自動化したい |
MultiWellステージ(オプション) | マルチウェルプレートのウェル間移動 | 化合物や濃度をウェルごとに配置したい |
CytoSolver | 取得した波形のバッチ解析 | 多数の記録を一定の条件で解析したい |
C-Pace EM+C-Dish | 培養中の細胞への電気刺激 | 電気刺激下で培養する前処理条件を設計したい |
CytoMotionは収縮解析、MultiCellは自動測定を担います。C-Pace EMは培養中の電気刺激に用いる関連製品です。
測定時の急性電気刺激について、MultiCellの構成例としてMyoPacer/MyoPacer EPを活用できます。マルチウェルでの刺激制御にはStimSwitchを組み合わせる構成もあります。使用するウェル数に応じて、ステージ、刺激装置、電極の組み合わせを確認します。
研究での使用例
Dinaniらの方法論論文(2023)では、ヒトiPS細胞由来心筋細胞の収縮動態とカルシウム動態を光学的に測定する手法が報告されています。温度を管理した環境で、同じ測定対象の比較を行う方法が紹介されています。
Dinani R, et al. “Real-Time Measurements of Calcium and Contractility Parameters in Human Induced Pluripotent Stem Cell-Derived Cardiomyocytes.” J Vis Exp. 2023;(195):e65326. doi:10.3791/65326. ヒトiPS心筋細胞の光学的収縮測定、温度管理、カルシウム測定を報告。論文情報(PubMed)/出版社ページ
この論文は、CytoMotionを備えたMultiCellとCytoSolverによる測定・解析の使用例として、心筋細胞の薬剤応答を調べる実験系を検討する際の参考資料になります。
高スループット薬剤スクリーニングに関するFAQ
CytoMotionだけで自動スクリーニングを構成できますか?
CytoMotionは画像から収縮動態を取得するソフトウェアです。測定対象の探索やステージ移動を含む自動測定には、MultiCellと研究目的に合うモジュールを組み合わせます。既存のIonOptixシステムへの追加については、カメラ、ソフトウェア、周辺機器の適合性を確認します。
96ウェルプレートで測定できますか?
オプションのMultiWellステージには、96ウェルを含むプレート用ウェルマップが用意されています。実際に使用するプレートと、観察・刺激・温度管理の構成が適合するかを確認します。
1時間に数百の化合物を評価できますか?
公表値は、1時間あたりに順次測定する細胞数の目安です。化合物数は、1条件あたりの記録時間、測定対象数、濃度系列、反復数、薬剤添加後の待機時間などから見積もります。
蛍光標識は必要ですか?
CytoMotionの運動検出はラベルフリーです。カルシウム動態を蛍光で測定する場合は、別途蛍光プローブと対応する測定系が必要です。
陽性変力作用を調べられますか?
画像に基づく収縮動態の変化を用いて、陽性変力作用に関係する応答を検討できます。添加前後の相対変化、収縮・弛緩の時間指標、拍動頻度を合わせて評価し、目的に応じて追加の測定で確認します。
同じ細胞や測定位置を再測定できますか?
MultiCellは測定位置を記録し、同じ対象の反復測定に利用できます。薬剤添加前後の比較では、位置と焦点が再現できること、対象が移動・脱落していないことを確認します。
導入相談では何を伝えるとよいですか?
使用する細胞の種類と培養形態、プレート形式、化合物数と濃度数、記録時間、電気刺激の要否、カルシウム測定の要否をお知らせください。既存の顕微鏡やIonOptixシステムがある場合は、その構成も併せてご相談ください。
高スループット薬剤スクリーニングの測定系をご相談ください
候補化合物の収縮・弛緩への影響を比較したい、iPS心筋細胞の薬剤応答を自動で取得したい、マルチウェルでの評価を進めたいとお考えの研究者様へ。
オレンジサイエンスに、研究目的と必要な測定項目をお知らせください。CytoMotion、MultiCell、解析ソフトウェア、電気刺激関連製品を含めた構成についてご相談いただけます。
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※本製品は研究用です。
ー IonOptix社 製品紹介 ー
MultiCellシステム
MultiCell(マルチセル)システムは、筐体に自動制御のXYZステージ、カメラ、照明が内蔵されており、IonOptixの周辺機器やソフトウェアをアドオンすることにより、さまざまな測定が自動でハイスループットで行えます。データ取得の手間がかからず、研究に集中するこができます。

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