剛性測定
- Orange Science
- 1 時間前
- 読了時間: 8分
剛性測定とは
剛性測定(Stiffness Measurement)とは、物体や材料が変形に対してどれだけ抵抗するか(=剛性)を定量的に評価する測定です。
測定対象とその意味
剛性測定は多くの分野で行われ、測定対象によって意味が異なります:
工学・材料科学
測定対象: 金属・樹脂・構造部材など
測定の目的: 材料や構造体の機械的特性の評価(安全性・耐久性)
生体力学・医学
測定対象: 骨・筋肉・組織・細胞など
測定の目的: 組織の硬さ評価(例:肝臓の線維化、動脈の硬化、がんの診断)
生理学・神経科学
測定対象: 筋肉、四肢、関節など
測定の目的: 筋緊張やパーキンソン病などの運動障害の評価
測定方法の例
引張/圧縮試験 材料に引張または圧縮力を加え、変位を測定して剛性を計算。
AFM(原子間力顕微鏡)による細胞の剛性測定 ナノスケールでプローブを細胞表面に押し当てて、硬さを測る。
MRIエラストグラフィ(MRE) 非侵襲的に体内の組織(例:肝臓、脳など)の硬さをマッピング。
動的粘弾性測定(DMA) 振動を加えながら材料の剛性を評価する手法。
剛性測定の目的
剛性測定の目的は、物体や材料、または生体組織が外力に対してどの程度変形しにくいか(=剛性)を定量的に評価し、性能・状態・安全性を判断することです。
対象によって目的が異なりますが、主な目的を分野ごとに以下にまとめます。
工学・材料分野の目的
材料の機械的性能の評価
強度や耐久性、剛性設計に必要な特性を得るため。たとえば建築材料、自動車部品、電子部品など。
構造設計や安全評価
建築物、橋梁、航空機などで、剛性が不足すると振動・たわみ・破壊のリスクがあるため。
製品開発・品質管理
製造工程でのばらつき検出やスペック管理のために剛性を測定。
医学・生体分野の目的
病気の診断
例:肝硬変では肝臓が硬くなる → MREやFibroScanで剛性を測定して診断。
組織・臓器の状態評価
組織の硬さの変化は炎症、腫瘍、線維化などの指標になる。
治療効果の判定
治療によって組織の剛性が改善されているかをモニタリング。
細胞メカニクス研究
細胞の剛性変化から分化状態やがん化を調べる基礎研究。
ロボティクス・ヒューマンインタフェース分野の目的
触覚の再現
人工皮膚やロボットの指先で剛性を測定して、触感を再現。
義手・義足の制御最適化
筋肉や関節の剛性を参考にして自然な動作を実現。
共通した本質的な目的
変形や力の伝達に対する応答性の理解
安全性や機能性の保証
材料・組織・構造の健全性の定量評価
剛性測定のアプリケーション例
剛性測定は多くの分野で実用されており、応用(アプリケーション)範囲は広いです。以下に代表的なアプリケーション例を分野ごとに紹介します。
工学・材料分野
1. 建築材料の評価
例:鉄筋コンクリートや合板の剛性測定
目的:地震や風圧に対する耐久性・安全性の確保
方法:三点曲げ試験、圧縮試験などで変形を測定
2. 自動車部品の開発
例:サスペンションやシャシー部品の剛性試験
目的:車両の操縦安定性や快適性、耐久性の向上
方法:荷重を加えて変位を測定し、部品の剛性を評価
3. 電子部品の微小変形評価
例:基板や半導体パッケージの剛性評価
目的:はんだクラックや熱膨張による故障リスクの把握
方法:ナノインデンテーション(微小圧子による押し込み試験)
医学・生体分野
4. 肝硬変の非侵襲診断
例:肝臓の硬さをMRIエラストグラフィーやFibroScanで測定
目的:肝線維化の進行度を評価し、肝硬変や肝がんリスクを診断
方法:外部から微振動を加え、組織の応答速度(剛性)を解析
5. 乳がんなど腫瘍の検出
例:乳房のしこりの剛性を超音波エラストグラフィーで測定
目的:正常組織と腫瘍との硬さの差からがんの可能性を示唆
方法:リアルタイムで組織の弾性マップを取得
6. 筋緊張やパーキンソン病の評価
例:筋肉・関節の剛性を動的計測
目的:神経疾患による運動障害の定量評価
方法:ロボットアームやセンサーを使って関節剛性を測定
細胞・組織工学分野
7. がん細胞と正常細胞の比較
例:がん細胞の柔らかさをAFM(原子間力顕微鏡)で測定
目的:悪性度の高いがんは柔らかくなる傾向があるため、診断指標とする
方法:微細な探針で細胞表面を押して剛性マップを取得
8. 再生医療における足場材料の評価
例:人工的なマトリックスの剛性評価
目的:幹細胞の分化を誘導する足場の最適剛性を決定
方法:ゲル状材料の剛性を変えて細胞応答を調べる
これらの応用例から分かるように、剛性の測定は「硬さ」や「変形しにくさ」に意味があるすべての分野で有用です。
Cellscale社 UniVertによる剛性測定
CellScale社の UniVert は、ミリスケールの材料や試料の機械的特性(特に剛性)を高精度に測定するための万能試験機 です。特に、バイオマテリアル、ゲル、細胞シート、軟組織、マイクロ構造体などの小さくて柔らかいサンプルに最適化されており、剛性測定に幅広く活用されています。

UniVert の剛性測定への活用法
1. 圧縮・引張試験による剛性評価
方法:試料を引張または圧縮し、そのときの荷重–変位データを取得
剛性算出:直線領域の傾き(荷重/変位)から剛性(N/m)を計算
用途:
ハイドロゲルや組織工学用スキャフォールドの剛性測定
生体組織の再現材料の機械的特性評価
微小構造体の剛性試験(例:マイクロピラー)
2. 低荷重・高分解能での微細試料の測定
UniVertは低荷重領域に対応しており、柔らかい試料の変形特性の精密測定が可能。
高分解能の荷重セルと変位センサーを搭載。
3. カスタム治具による多様な形状の試料に対応
ユーザー自身で治具を交換可能(引張、圧縮、三点曲げ、せん断など)
独自形状の試料(例:細長い細胞シート、ミニチュア足場構造)への柔軟な対応が可能
UniVertが選ばれる理由(剛性測定用途)
高感度センサー
μN単位から測定可能な荷重センサーで、柔らかい試料にも対応
高精度な変位測定
マイクロメートルレベルの変位測定で剛性計算が正確
小型・ラボ向き
コンパクト設計で細胞培養フード内にも設置可能
実際の応用例
ハイドロゲルの最適化
ゲルの組成による剛性変化を評価し、細胞分化に適した足場条件を探索
幹細胞足場の評価
細胞応答を引き出す剛性範囲を特定
再生医療用膜材料
心臓や皮膚再生用スキャフォールドの剛性評価
薄層組織の引張剛性測定
細胞シートの機械的強度や破断前剛性の測定
CellScale社 UniVertは、「小さくて柔らかい試料の剛性評価」に特化した万能試験機であり、生体材料・再生医療・細胞工学の分野での剛性測定に非常に適しています。
論文紹介:剛性測定の比較

テキサス大学オースティン校の研究者らは、5つの機械的試験法(引張、圧縮、せん断レオロジー、マクロインデンテーション、ナノインデンテーション)に基づいて18種類のPVAハイドロゲル配合物の剛性測定とせん断弾性率を比較した論文を発表しました。一般に、この論文によると、各手法は同様の結果を示し、それぞれに長所と短所がありました。結論の一部を紹介します:
物理的に大きなサンプルの方が、より信頼性の高いデータが得られた。
長さが2桁以上変化しても、得られた弾性率に大きな影響はなかった(マクロインデンテーションとナノインデンテーションの比較)。
非接触ひずみセンシングの使用により、試験結果が改善された。
球状圧痕試験用のヘルツ接触力学モデルは、この種の材料に適していた。
研究のさらなる目標は、これらの結果を用いて、ハイドロゲルの剛性を推定するための構造に基づく方法に取り組むことです。
製品のご紹介
CellScale社 UniVert/卓上 引張・圧縮・3点曲げ試験機
生体サンプルから工業製品の試験に

CellScale社のUniVertは、生体サンプルなどのバイオマテリアル試験に最適です。クリップやプレートなど様々なアタッチメントに対応し、生体組織、ゲル、フィルム、ファイバーなどの多様なサンプルでの強度測定に優れています。
圧縮、引張、3点曲げなどのモードがあり、ロードセルは着脱式で、4.5N~200N(*1Kgモデルは1Kgまで)での測定が可能です。また、オプションのバスを取り付けることにより、横型、縦型での液中での測定も可能です。
MicroTester
マイクロスケール圧縮強度測定装置
MicroTesterはマイクロスケール生体サンプルや微粒子の粘弾性測定に特化した粘弾性測定装置です。
1㎜以下径のビーム(カンチレバー)とプレートで直接サンプルに接触して、非破壊で約0.005~500µNの粘弾性試験が可能です。生体サンプルの試験に特化し工業用の試験機では実現できないコンパクトさ、試験レンジを実現し、精度の高い試験・解析が可能となりました。チャンバー前方に取り付けられた高解像度カメラにより、サンプルの変位の画像解析も可能です。

オレンジサイエンスが取り扱うその他の製品
オレンジサイエンスでは、測定機器の他にも伸展刺激装置・圧縮刺激装置を取り扱っております。ご不明点や取り扱い装置に関する詳細など、お気軽にお問い合わせください。
CellScale/セルスケール社
Mechano Cultureシリーズの機械的刺激培養装置はモデルにより、360度伸展、シリコンチャンバー伸展、マテリアル伸展、流体圧縮、機械的圧縮+データ測定、マテリアル伸展+データ測定が可能です。

STREX/ストレックス社
独自のシリコンチャンバーを伸展させることにより、チャンバー上の細胞に伸展刺激を与えることが可能です。顕微鏡搭載モデルは、倒立顕微鏡での伸展細胞の観察も可能です。

IonOptix/イオンオプティクス社
C-Stretchシステムはシリコンチャンバーを採用した伸展培養装置です。C-Pace EMシステムと使用することにより、伸展刺激と同時に、電気刺激を与えることも可能です。
