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インキュベーター内とステージトップインキュベーターでの細胞の挙動の違い

  • Orange Science
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インキュベーター内培養とステージトップインキュベーター(顕微鏡ステージ上環境制御)における細胞の挙動の違いは、環境の安定性と操作自由度にあります。

インキュベーター内では細胞は最も安定した生理状態を示す一方、ステージトップインキュベーターでは観察・操作を優先する代償として、細胞は環境ストレスの影響を受けやすくなります


1. インキュベーター内における細胞の挙動

環境特性

  • 温度(通常37℃)、CO₂濃度、湿度が均一かつ長時間安定

  • 外乱(光、振動、乾燥、温度変動)が最小限

細胞の挙動

  • 増殖速度が安定

  • 細胞周期、代謝、シグナル伝達が生理条件に近い

  • ストレス応答やアポトーシスの発生率が低い

  • 長期培養において再現性が高い

限界

  • リアルタイム観察ができない

  • 薬剤添加や刺激は「点」での介入に限られる

  • 動的プロセスの直接観察は不可


2. ステージトップインキュベーターにおける細胞の挙動

環境特性

  • 温度・CO₂・湿度は局所的かつ準閉鎖系

  • 対物レンズ(特に高NA油浸・水浸)による熱奪取

  • 観察光によるフォトトキシシティ

  • 培地量が少なく、pH・浸透圧変動が起きやすい

細胞の挙動

  • 短時間では正常挙動を示すが、長時間では微細なストレス応答が蓄積

  • 細胞移動速度や形態変化が変調する場合がある

  • 分裂遅延、シグナル応答感度の変化が生じる可能性

  • 光照射条件によってはアポトーシス誘導リスクが上昇

特徴的メリット

  • タイムラプスによる動的プロセスの連続観察

  • 焦点・ステージ位置を維持したまま薬剤添加が可能

  • 機械刺激、化学刺激、光刺激をその場で介入可能



「細胞挙動」の観点で比較

観点

インキュベーター内

ステージトップインキュベーター

生理的安定性

非常に高い

中〜高(条件依存)

ストレス耐性

高い

低下しやすい

細胞分裂の規則性

安定

遅延・ばらつきが出る場合あり

シグナル応答

自然状態に近い

刺激・光の影響を受けやすい

長時間再現性

高い

システム設計と運用に強く依存



インキュベーター内培養とステージトップインキュベーターにおける細胞挙動の違いと、ライブセルイメージングにおける留意点

ライブセルイメージング研究において、顕微鏡ステージ上で細胞をいかに健全な状態で維持できるかは、取得データの信頼性を左右する極めて重要な要素です。多くの研究室では、温度制御されたCO₂インキュベーター内での細胞培養に精通していますが、顕微鏡ステージ上での長時間維持と観察は、まったく異なる技術的課題を伴います。


インキュベーター内培養における細胞挙動

安定した生理環境

CO₂インキュベーター内では、温度、CO₂濃度、湿度が均一かつ長時間にわたり安定して制御されます。この環境は、細胞にとって最も生理的条件に近い状態を再現します。

観察される細胞挙動の特徴

  • 安定した増殖速度

  • 規則的な細胞周期

  • 代謝・シグナル伝達の再現性が高い

  • ストレス応答やアポトーシスの発生が最小限

このため、インキュベーター内での挙動は「基準となる細胞の正常状態」として扱われることが一般的です。


ステージトップインキュベーターにおける細胞挙動

顕微鏡特有の環境制約

ステージトップインキュベーターは、観察を前提とした局所的かつ準閉鎖系の環境です。以下のような要因が、インキュベーター内とは異なる影響を細胞に与えます。

  • 対物レンズ(特に高開口数の油浸・水浸)による熱の奪取

  • 観察光によるフォトトキシシティ

  • 培地量が少ないことによるpH・浸透圧変動

  • ステージ移動やフォーカス調整に伴う微小な物理的ストレス

細胞挙動への影響

これらの条件下では、短時間の観察では正常に見える場合でも、長時間観察において以下のような変化が現れることがあります。

  • 細胞移動速度や形態変化の微妙な変調

  • 細胞分裂の遅延や不均一化

  • シグナル応答感度の変化

  • 条件次第ではアポトーシス誘導のリスク上昇


両環境における細胞挙動の比較

観点

インキュベーター内

ステージトップインキュベーター

環境の安定性

非常に高い

機器設計・運用に依存

生理的再現性

高い

条件最適化が必須

長時間観察

不可

可能

動的プロセス解析

困難

タイムラプス解析が可能

ストレス影響

最小限

光・熱・培地条件の影響あり


ライブセルイメージング成功の鍵

ステージトップインキュベーターは、リアルタイムでの細胞挙動観察や、観察中の試薬添加・刺激介入を可能にする一方で、インキュベーター内培養と同等の環境再現は本質的に困難です。

そのため、研究者には以下が求められます。

  • インキュベーター内での細胞挙動を基準として把握すること

  • 観察後も細胞の生存性や分裂能を評価すること

  • 非照射細胞との比較を行い、光毒性の影響を検証すること



ステージトップインキュベーターで観察される細胞挙動は、最適条件下であるインキュベーター内培養を基準に解釈されるべきものであり、環境制御・光学設計・操作性の最適化が研究データの質を大きく左右します。

研究機器メーカーにとっては、

  • 高精度な温度・ガス制御

  • 高NA対物レンズ使用時の安定性

  • 観察中操作(試薬添加・刺激)の再現性 をいかに実装するかが、ライブセルイメージング用途での製品価値を決定づける重要な要素となります。


ライブセルイメージングの課題に対する解決策

Etaluma社 ライブセルイメージングシステム「Lumascope」


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インキュベーター内で培養された細胞は、安定した生理環境のもとで本来の挙動を示します。一方で、顕微鏡ステージ上での長時間ライブセルイメージングでは、温度・ガス環境・光照射・培地条件など、複数の要因が重なり、細胞は微細なストレスの影響を受けやすくなります。

この「観察したいが、細胞環境を崩したくない」というジレンマは、ライブセルイメージングに取り組む多くの研究者が直面してきた共通の課題です。


観察のために細胞を動かさない、という発想

従来のライブセルイメージングでは、 細胞をインキュベーターから取り出し、顕微鏡ステージ上に移す というプロセス自体が、環境変化の起点となっていました。

Etaluma社の Lumascope は、この前提を見直し、 「細胞を顕微鏡に移すのではなく、顕微鏡を細胞の培養環境に置く」 というアプローチを採用しています。


Lumascope が実現する、インキュベーター内ライブセルイメージング

Lumascope は、CO₂インキュベーター内にそのまま設置可能なコンパクト蛍光顕微鏡です。これにより、研究者は以下のような環境で細胞を観察できます。

  • 温度・CO₂・湿度が安定した培養環境を維持したまま

  • 細胞を移動させることなく

  • 長時間・低侵襲でのタイムラプス観察

結果として、インキュベーター内培養時に近い細胞挙動を保ったまま、動的プロセスを可視化することが可能になります。



ステージトップ観察と比較した Lumascope の優位性

課題

ステージトップ観察

Lumascope

環境変化

観察時に不可避

インキュベーター内で最小限

長時間安定性

条件最適化が必要

培養環境そのものを利用

フォトトキシシティ

高NA・高照度で影響大

低照度LEDによる低侵襲設計

運用負荷

セットアップ・調整が多い

シンプルで再現性が高い

実験再現性

使用者依存

高い再現性


どのような研究者に適しているか

Lumascope は、特に以下のような研究者に適しています。

  • 長時間の細胞挙動(増殖、移動、分化、応答)を観察したい方

  • ステージトップ環境での細胞ストレスを懸念している方

  • インキュベーター内培養条件をできる限り維持したい方

  • 複数サンプルを並行して、再現性の高いデータを取得したい方

  • 専用顕微鏡室に依存せず、日常的にライブセル観察を行いたい方



細胞にとって自然な環境で、信頼できるデータを

ライブセルイメージングにおいて重要なのは、「何が見えるか」だけでなく、「どの環境で見ているか」です。 Lumascope は、細胞にとって最も自然な環境であるインキュベーター内を観察の場とすることで、環境由来のアーティファクトを抑え、研究者が本来注目すべき生物学的現象に集中できる環境を提供します。


インキュベーター内ライブセルイメージングという選択肢は、ステージトップ観察を補完、あるいは置き換える有力なアプローチです。


 Etaluma社 Lumascope は、その実現をシンプルかつ現実的に支援するライブセルイメージングシステムです。


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etaluma社 ライブセルイメージングシステム Lumascope


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 エタルマのLumascope(ルマスコープ)は、優れた感度、解像度、ゼロピクセルシフトを備えた、半導体光学の新しいコンセプトで設計された、倒立型小型蛍光顕微鏡です。


 そのコンセプトのデザインにより、インキュベーター、ドラフトチャンバーなどの限られたスペースの中で使用でき、幅広いラボウエアでのライブセルイメージングを可能にします。



LS820 は、現行のモデルにオートフォーカス機能が追加され、低コストでのオートフォーカス3色蛍光観察が可能になりました。ソフトウエアも新しくなり、より簡単に、高画質な画像データの取得ができます。


LS850 は、現行の自動XYステージのついたLS720全自動モデルの改良版です。新たな位相差技術により、位相差照明をコンパクトにし、オプションのタレットにより、4つの対物レンズを搭載することが可能となりました。 




各モデルの詳細は下記からご確認下さい。







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