生体材料・医療デバイスの評価・物性評価・強度試験・測定
- Orange Science
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生体材料・医療デバイスとは
生体材料(Biomaterials)とは
生体材料とは、生体内または生体と接する環境で使用される材料で、生体と直接的に接触しても安全であり、生体機能を補助・代替・修復するために使われるものを指します。
主な特徴:
生体適合性(biocompatibility):異物反応を最小限に抑える
生体安全性(biosafety):毒性がなく、アレルギーなどを引き起こさない
機械的特性:強度や柔軟性などが必要用途に適していること
例:
金属:チタン、ステンレス(人工関節・骨固定器具など)
高分子:ポリウレタン、ポリ乳酸(縫合糸、ドラッグデリバリーシステムなど)
セラミックス:ハイドロキシアパタイト(骨補填材など)
生体由来素材:コラーゲン、ゼラチン(創傷被覆材、再生医療用足場など)
医療デバイス(Medical Devices)とは
医療デバイスは、日本の法律(医薬品医療機器等法:旧薬事法)において、疾病の診断、治療、予防などを目的とした機械器具や器材を指します。手術用器具、診断機器、補綴物、治療機器など、非常に広範な範囲を含みます。
例:
装着型医療機器:人工関節、ステント、インスリンポンプなど
診断用機器:MRI、CT、血糖値測定器など
治療用機器:電気刺激装置、放射線治療装置など
生体材料と医療デバイスの関係
生体材料は医療デバイスの構成要素の一部として利用されることが多いです。 例:人工関節(医療デバイス)はチタン合金(生体材料)で作られている。
生体材料・医療デバイスの評価・物性評価・強度試験
「生体材料・医療デバイスの評価」「物性評価」「強度試験」は、いずれも安全性・有効性・耐久性を科学的・工学的に確認するための重要な工程です。それぞれの意味と内容を正確に整理して説明します。
1. 生体材料・医療デバイスの評価とは?
定義:
生体材料や医療デバイスが、生体内または医療現場で使用するのに適しているかどうかを、科学的・技術的に検証するプロセスです。
主な評価項目:
生体適合性(biocompatibility)
細胞毒性(in vitro)、アレルギー、免疫反応、炎症反応など
ISO に基づいて評価
機能評価(functional performance)
デバイスが期待される医療効果を発揮するか(例:ステントの拡張性能)
滅菌・清浄度
滅菌方法(ガンマ線、エチレンオキサイドなど)の適合性と残留毒性の有無
安定性・劣化性
長期使用時の性能の維持(加速劣化試験など)
2. 物性評価(Physical Property Evaluation)とは?
定義:
材料そのものの物理的性質を定量的に測定する評価です。医療用で使用するためには、体内環境(湿潤・温度・pH)でも安定して機能することが求められます。
主な評価項目:
機械的性質
引張強度、圧縮強度、曲げ強度、弾性率(ヤング率)など
熱的性質
ガラス転移温度、融点、熱分解温度、熱膨張係数など
化学的性質
分子量分布、組成分析
表面特性
粗さ、濡れ性(接触角)、電荷、エネルギー
3. 強度試験(Mechanical Strength Testing)とは?
定義:
使用中に生じる外力に耐えられるかを確認する試験。主に医療デバイスの安全性や信頼性を確認する目的で実施されます。
主な試験方法:
引張試験(Tensile Test)
試料を両端から引っ張って破断までの力や変形を測定
圧縮試験(Compression Test)
骨補填材や人工軟骨などの圧縮に対する耐性
曲げ試験(Bending Test)
カテーテルやインプラントなどのしなり・復元性の確認
疲労試験(Fatigue Test)
繰り返し荷重に対する耐久性(例:心臓ペースメーカーのリード線)
摩耗試験(Wear Test)
人工関節など、摩擦面の耐久性評価
生体材料・医療デバイスの評価・物性評価・強度試験のアプリケーション例
以下に「生体材料・医療デバイスの評価・物性評価・強度試験」の具体的なアプリケーション例(応用事例)を、用途ごとに分けて紹介します。これにより、それぞれの評価手法が現実の医療現場や製品開発でどのように使われているかが明確になります。
1. 生体材料の評価のアプリケーション例
① 人工血管の生体適合性評価
目的:血栓形成や免疫反応を起こさず、血液と安定して接触できるかを確認。
評価法:
血液適合性試験:血小板付着、溶血試験
細胞毒性試験:マウス線維芽細胞などを用いたin vitro試験
② 骨補填材(ハイドロキシアパタイト)の生体吸収性評価
目的:骨と結合し、適切に吸収・置換されるか
評価法:
ラットの頭蓋骨やウサギの脛骨へのインプラント
X線CT・病理学的観察で骨形成と材料吸収の様子を確認
2. 物性評価のアプリケーション例
① 吸収性縫合糸の熱的・分解特性評価
目的:体温下で一定期間機械的強度を維持し、やがて分解される性質の確認
評価法:
示差走査熱量測定:ガラス転移温度・融点の測定
熱重量測定:熱分解挙動の確認
加水分解試験:PBS中に浸漬し、分子量変化や質量損失を観察
② カテーテルの柔軟性と表面親水性評価
目的:血管内をスムーズに挿入でき、血栓形成を防ぐ
評価法:
接触角測定:表面の親水性(濡れ性)を評価
曲げ試験または三点曲げ法:柔軟性の定量評価
3. 強度試験のアプリケーション例
① 人工関節(例:股関節インプラント)の耐久性評価
目的:体重や歩行による繰り返し荷重に耐えられるか
評価法:
疲労試験:ISO 7206-4 に基づき、数百万回の繰り返し荷重をかけて破損を確認
摩耗試験:関節部品の摩耗粉の生成量とその化学分析
② ステントの拡張力・破裂圧試験
目的:血管を確実に広げ、破裂せずに保持できるか
評価法:
ラジアルフォース試験:ステントが円筒内でどれだけの圧力に耐えられるか
バルーン拡張試験:拡張圧力での破裂有無、拡張後の寸法の安定性
その他の応用例
再生医療用スキャフォールド
評価項目: 細胞付着性、分解性、力学的強度
試験手法例: 細胞培養、加水分解試験、圧縮試験
インスリンポンプ用材料
評価項目: 耐薬品性、密封性
試験手法例: FTIR分析、浸透試験
医療用接着剤
評価項目: 接着強度、乾燥時間、皮膚刺激性
試験手法例: 引張せん断試験、皮膚貼付試験(パッチテスト)
Cellscale社 UniVert の生体材料・医療デバイスの評価・物性評価・強度試験への活用
CellScale社のUniVert(ユニバート)は、バイオマテリアルや軟組織向けに特化したコンパクトなマテリアルテストシステムで、生体材料・医療デバイスの評価、物性評価、強度試験に広く活用可能です。

活用例と評価内容
1. 生体材料の力学的特性評価
内容:
ハイドロゲル(再生医療用スキャフォールドなど)の引張試験
コラーゲン/ゼラチンなどの圧縮試験
天然組織(皮膚、血管)の粘弾性評価
評価できる項目:
ヤング率(Elastic modulus)
破断強度・ひずみ
粘弾性挙動(オプションでDMA的試験も可能)
2. 医療デバイス部材のミクロ力学特性試験
内容:
縫合糸・吸収性材料の破断試験
マイクロサイズの生体接着剤や薄膜の力学特性評価
評価できる項目:
小さな荷重域での精密引張・圧縮データ
製品開発初期におけるプロトタイプの性能スクリーニング
3. 物性評価のサポート
内容:
温度制御チャンバーと組み合わせた加温下試験(例:37℃)
湿潤環境下での生体模倣試験
評価できる項目:
PBS中での生分解性素材の力学特性変化
環境条件による物性の変動(生理条件下 vs 室温)
アクセサリ
温度制御チャンバー
生理温度(例:37°C)での試験を再現

高分解能カメラ
試料の変形のビジュアル追跡

UniVertが有効な応用領域
再生医療用材料
ハイドロゲルスキャフォールド、細胞シートの機械試験
医療用接着剤
粘着強度、剥離強度の定量評価
軟部組織代替材料
人工皮膚、人工血管、軟骨の材料試験
吸収性医療材料
引張耐性の変化(分解過程の力学評価)
論文紹介: 一時的な生体内回路で最大の成果を

センシング、ドラッグデリバリー、その他の目的のための生体吸収性デバイスは、治療を強化し、モニタリングを提供する可能性を秘めています(vivo Circuits)。材料の観点からは、従来の電気ワイヤーを置き換えるような単純なことでさえ、困難な場合があります。最近、韓国の研究チームが、この用途のための複合材料についての論文を発表しました。彼らは、蜜蝋、タングステン粉末、グリコフロールの混合物を用いて、「Wペースト」と呼ぶ材料を作りました。
出来上がった素材には下記の特徴があります。
高い導電性
高い機械的安定性
スクリーン印刷が可能
等方的な電気経路を持つ
生体適合性がある
PBSでは約80日後に分解する。
製品のご紹介
CellScale社 UniVert/卓上 引張・圧縮・3点曲げ試験機
生体サンプルから工業製品の試験に

CellScale社のUniVertは、生体サンプルなどのバイオマテリアル試験に最適です。クリップやプレートなど様々なアタッチメントに対応し、生体組織、ゲル、フィルム、ファイバーなどの多様なサンプルでの強度測定に優れています。
圧縮、引張、3点曲げなどのモードがあり、ロードセルは着脱式で、4.5N~200N(*1Kgモデルは1Kgまで)での測定が可能です。また、オプションのバスを取り付けることにより、横型、縦型での液中での測定も可能です。
MicroTester
マイクロスケール圧縮強度測定装置
MicroTesterはマイクロスケール生体サンプルや微粒子の粘弾性測定に特化した粘弾性測定装置です。
1㎜以下径のビーム(カンチレバー)とプレートで直接サンプルに接触して、非破壊で約0.005~500µNの粘弾性試験が可能です。生体サンプルの試験に特化し工業用の試験機では実現できないコンパクトさ、試験レンジを実現し、精度の高い試験・解析が可能となりました。チャンバー前方に取り付けられた高解像度カメラにより、サンプルの変位の画像解析も可能です。

オレンジサイエンスが取り扱うその他の製品
オレンジサイエンスでは、測定機器の他にも伸展刺激装置・圧縮刺激装置を取り扱っております。ご不明点や取り扱い装置に関する詳細など、お気軽にお問い合わせください。
CellScale/セルスケール社
Mechano Cultureシリーズの機械的刺激培養装置はモデルにより、360度伸展、シリコンチャンバー伸展、マテリアル伸展、流体圧縮、機械的圧縮+データ測定、マテリアル伸展+データ測定が可能です。

STREX/ストレックス社
独自のシリコンチャンバーを伸展させることにより、チャンバー上の細胞に伸展刺激を与えることが可能です。顕微鏡搭載モデルは、倒立顕微鏡での伸展細胞の観察も可能です。

IonOptix/イオンオプティクス社
C-Stretchシステムはシリコンチャンバーを採用した伸展培養装置です。C-Pace EMシステムと使用することにより、伸展刺激と同時に、電気刺激を与えることも可能です。
