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メカニカルストレス

メカニカルストレスとは

メカニカルストレスとは、細胞生物学分野では細胞や組織が体内で受ける機械的刺激のことを意味します。日常的な人間の活動や運動、自然な動きの中では、体内の細胞や組織に物理的な力(伸展、圧縮、ねじり、せん断、曲げの力など)がかかっています。

細胞はこれらのメカニカルストレスを感知し生化学的経路を介して反応しています。

 

メカノストレスと呼ばれることもあり、「メカノストレス」は特に生体や細胞の力学的応答、細胞のメカノトランスダクション(力を感知し応答するプロセス)を強調する場合に用いられることが多く、細胞生物学や医学の分野で使用されることが多いです。

細胞を研究・観察する際には、メカニカルストレスを与ながら細胞を培養することで、体内環境を再現した状態で細胞の研究を行うことができます。

細胞分野で用いられるメカニカルストレスの種類

1. 引張ストレス

  • 例: 血管内皮細胞が血流による引っ張り力を受ける場合。

  • 影響: 細胞の形態変化、細胞骨格の再編成、遺伝子発現の変化。

2. 圧縮ストレス

  • 例: 軟骨細胞が関節の動きや圧力によって圧縮される場合。

  • 影響: 細胞の増殖や分化に影響を与える可能性。

3. せん断ストレス

  • 例: 血流が血管内皮細胞に沿って流れる際に発生する流体せん断力。

  • 影響: 血管の恒常性維持、炎症反応の調節。

4. 張力

  • 例: 筋細胞が運動中に伸び縮みする場合。

  • 影響: 細胞の成長や分化、再生プロセスに影響。

5. 圧力ストレス

  • 例: 肺の細胞が呼吸による気圧の変動を受ける場合。

  • 影響: 肺胞細胞の機能や構造の維持に影響。

メカニカルストレスの生理的役割

  • 発生・分化: 力学的な刺激は幹細胞の分化を誘導することがあります。

  • 組織修復: 損傷部位での細胞移動や増殖を調節する。

  • 恒常性維持: 血管や骨、筋肉などの組織の正常な機能維持に寄与。

細胞のメカニカルストレス応答は、メカノトランスダクションと呼ばれるプロセスを通じて行われ、細胞の表面に存在するメカノセンサーが物理的な力を検出し、これを化学信号に変換して細胞内に伝達します。この過程が、細胞の適応、修復、増殖などの重要な生理的プロセスに影響を与えます。

メカニカルストレスを用いる目的

メカニカルストレスを用いることであらゆる細胞の動きを知ることができます。

細胞への短時間・長時間ストレスによる研究や各細胞へのメカニカルストレス実験、細胞内のシグナル伝達に関する研究、細胞形態の研究、リアルタイムでの細胞観察、タンパク質発現の研究、遺伝子発現、イオンチャンネル、再生医療に関わる細胞の研究、歯学や整形外科に関連する細胞の研究など、多種多様な目的でメカニカルストレスは応用されています。

メカニカルストレスは身体中のあらゆる細胞に応用できるため、多くの応用例が考えられます。

メカニカルストレスを用いる目的

1. 組織や臓器の機能理解

  • 目的: 血管、筋肉、骨など、メカニカルストレスにさらされる組織や臓器がどのように機能を維持するかを理解する。

  • 応用: 血流によるせん断ストレスが血管内皮細胞の健康に与える影響や、骨のリモデリングにおける力学的刺激の役割を研究。

2. 細胞のメカノトランスダクションの研究

  • 目的: 細胞が物理的な力を感知し、どのように化学的シグナルに変換して応答するかを解明する。

  • 応用: メカノセンサーやシグナル伝達経路の特定、新しい治療ターゲットの発見。

3. 細胞の増殖・分化の調節

  • 目的: メカニカルストレスが幹細胞の増殖や分化に与える影響を研究し、組織工学や再生医療に応用する。

  • 応用: 特定の力学的条件下での幹細胞の適切な分化誘導による組織再生。

4. 病態生理学の研究

  • 目的: 疾患状態におけるメカニカルストレスの役割を解明する。

  • 応用: 高血圧や動脈硬化など、メカニカルストレスが関与する疾患の進行メカニズムの解明と治療法の開発。

5. バイオメカニクスの応用

  • 目的: 生体組織の力学的特性を理解し、人工臓器や医療デバイスの設計に活かす。

  • 応用: 力学的負荷に対して最適化された人工関節や心臓弁の設計。

6. 創薬・治療法の開発

  • 目的: メカニカルストレスを用いた細胞モデルを利用して、新しい薬剤の効果を検証する。

  • 応用: メカニカルストレスに関連する疾患に対する新薬の開発と評価。

7. 細胞の応答メカニズムの調査

  • 目的: メカニカルストレスが細胞の遺伝子発現、シグナル伝達、細胞骨格の再編成に与える影響を調査する。

  • 応用: ストレス応答が細胞の生存やアポトーシスにどのように関与するかを理解し、癌研究や老化研究に応用。

細胞研究においてメカニカルストレスを用いる目的は、細胞が物理的な力にどのように応答するかを理解し、これが生物学的プロセスや疾患の進行にどのように影響するかを解明することです。これらの目的を達成することで、メカニカルストレスが生命現象に与える影響を深く理解し、医学や生物工学の発展に貢献することが期待されています。

メカニカルストレスが応用される細胞の種類

メカニカルストレスは多くの細胞研究に活用されています。

代表的な細胞の例を挙げると、皮膚、腱、靭帯、軟骨、骨、筋肉、肺、心臓、血管の細胞や心筋細胞、ips細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、血管前駆細胞、血管内皮細胞、幹細胞、脂肪、上皮細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞など、身体内外のあらゆる細胞の研究に用いられています。

体外でのメカニカルストレス

日常的な運動や自然のプロセスでは、体内の細胞や組織に物理的な力(伸展、圧縮、せん断応力など)がかかります。細胞はこのような機械的刺激を感知し、機械的伝達と呼ばれる様々な生化学的経路を介して反応します。メカノトランスダクションに関与するさまざまなシグナル伝達物質、タンパク質、遺伝子などを理解することは、新しい治療法や薬剤を開発するための鍵となります。メカノバイオロジーの分野では、これらの物理的要因が、分子、細胞、組織レベルでの機械的伝達プロセスにどのように影響するかを研究しています。

in vitroでの機械的刺激の変化

  • 細胞の移動

  • 細胞増殖

  • エネルギー代謝

  • シグナルメディエーター

  • 細胞間コミュニケーション

  • 薬理作用への反応

  • タンパク質の合成、分泌、分解の速度

   *静止した環境下で培養された細胞と比較して

メカニカルストレス装置

オレンジサイエンスでは、CellScale社、STREX社、IonOptix社のメカニカルストレス装置を取り扱っています。メーカーそれぞれにユニークな特徴がございますので、お客様のご要望に近い製品をご提供できます。

CellScale/セルスケール社

Mechano Cultureシリーズのメカニカルストレス培養装置はモデルにより、360度伸展、シリコンチャンバー伸展、マテリアル伸展、流体圧縮、機械的圧縮+データ測定、マテリアル伸展+データ測定が可能です。

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STREX/ストレックス社

​独自のシリコンチャンバーを伸展させることにより、チャンバー上の細胞に伸展刺激を与えることが可能です。顕微鏡搭載モデルは、倒立顕微鏡での伸展細胞の観察も可能です。

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IonOptix/イオンオプティクス社

C-Stretchシステムはシリコンチャンバーを採用した伸展培養装置です。C-Pace EMシステムと使用することにより、伸展刺激と同時に、電気刺激を与えることも可能です。

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メカニカルストレスの用途別

1軸方向の伸展刺激

2軸方向の伸展刺激

シート状マテリアルの伸展

圧縮・加圧刺激

伸展・圧縮刺激+負荷測定

伸展刺激+電気刺激

デモ機貸し出しについて

一部製品の貸し出しを無料にて行っております。実際の試験環境や使用環境で装置をお試しいただき、機能や性能、使いやすさ、製品の大きさ等を事前にご確認いただけます。貸出可能な製品や貸出期間、詳細等はお問い合わせください。

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