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疲労試験

  • Orange Science
  • 6月23日
  • 読了時間: 12分

更新日:6月27日


概要

疲労試験には、何サイクルにもわたって試験片に負荷を与え、その機械的応答への影響を調べることが含まれます。試験方法には、引張、圧縮、曲げ、膨張などがあります。高ひずみ速度試験では、ひずみ速度によって材料の応答がどのように変化するかを調べるために、試験片に速度で負荷をかけます。


疲労試験も高ひずみ速度試験も、高い加速度と速度に対応できるアクチュエータが有効です。UniVertシステムには、これらの要件を効率的に満たす補助アクチュエータを取り付けることができます。


生体材料に特有

この種の試験は、通常、生体内で繰返し荷重を受ける筋骨格系や心臓血管系の組織に必要です。基礎研究の場合、試験のセットアップは、生体内の条件を再現するように簡単に構成することができます。整形外科用材料や用途によっては、確立された試験規格が存在します。


生体材料の疲労試験一般的な用途

  • 筋骨格系組織および合成代替材料

  • 動脈や心臓弁などの心臓血管組織




「疲労試験・Fatigue testing」とは

疲労試験とは、材料や構造物に繰り返しの荷重(繰返し応力、またはサイクル荷重)を加えることで、その疲労強度寿命(耐久性)を評価するための試験です。 多くの構造材料は、たとえ一回の荷重では破壊されなくても、繰り返し荷重によって微細な損傷が蓄積し、最終的に破断する(疲労破壊)ことがあります。



目的

  • 材料が何回の荷重で破断するか(疲労寿命)を調べる

  • 応力レベルと破断までのサイクル数(S-N曲線)を得る

  • 安全設計に必要なデータを取得する(航空機、橋梁、自動車部品など)



主な試験の種類

回転曲げ疲労試験

  • 円筒状試料を回転させ、一定の曲げ応力を与えて疲労させる。

引張-圧縮疲労試験

  • 試料に交互に引張りと圧縮を加える。機械的な試験機で制御される。

曲げ疲労試験

  • 梁などに繰返し曲げ荷重をかける。

ねじり疲労試験

  • 試料に繰返しのねじり応力を加える。



疲労試験の結果として得られるもの

  • S-N曲線(Wöhler曲線):応力(Stress)と破断までのサイクル数(Number of cycles)をプロットしたグラフ

  • 疲労限度:ある応力レベル以下なら、理論的に無限に繰返しても破断しないとされる限界(鉄鋼材料などに見られる)


応用分野

  • 航空宇宙、鉄道、建築、自動車、発電機器など、繰返し荷重がかかる構造物の信頼性設計

  • 医療機器(インプラントなど)の耐久性評価

  • 電子部品のはんだ接合部やフレキシブル基板の寿命試験

  • バイオマテリアル・生体材料の評価




疲労試験の目的は

疲労試験の目的は、材料や製品が繰返し荷重にどのように耐え、どの時点で破壊に至るかを評価することです。バイオマテリアル(生体材料)においては、人体内という特殊で長期間にわたる使用環境下での安全性と信頼性を検証するために、疲労試験は不可欠です。


一般的な疲労試験の目的

1. 疲労寿命の評価

  • 材料や製品が破断に至るまでに耐えられる繰返し荷重の回数(サイクル数)を把握する。

2. 疲労限度の決定

  • ある応力以下では破断しない(または非常に長寿命)という疲労限度が存在するかを確認。

3. 設計の信頼性向上

  • 設計時に安全率や耐用年数を見積もるために必要なデータを得る。

4. 材料・処理法・構造の比較評価

  • 表面処理・熱処理・溶接・接合方法などによる疲労特性の変化を評価する。

5. 欠陥・表面粗さの影響調査

  • ミクロな傷や加工痕が疲労寿命に与える影響を評価。


生体材料(バイオマテリアル)における疲労試験の目的

生体材料は、体内の生理的環境下(温度・体液・pH・腐食・荷重など)で長期に使用されるため、一般材料以上に高い安全性と信頼性が求められます。


1. 長期使用による破損の防止

  • 骨接合プレート、人工関節、歯科インプラントなどは数百万回の荷重に耐える必要がある。疲労試験により破壊モードを予測。


2. 生理的環境下での性能評価

  • 生体内では湿潤・塩分・酵素・pH変動などがあるため、体液模擬液中での疲労試験が必要。


3. 材料劣化や腐食疲労の評価

  • 金属(チタン合金、ステンレス)や高分子材料(PEEK、PMMA)などが経年劣化や腐食によって疲労強度が低下するかを評価。


4. 多軸・非定常荷重への耐性確認

  • 歩行・咀嚼などの生体運動に伴う複雑な荷重パターン(多軸・変動荷重)への耐久性確認。


5. 新素材・表面処理の評価

  • コーティング材(ハイドロキシアパタイト)、ナノ構造化表面、3Dプリント材料などの新技術の疲労性能の検証。


例:人工股関節ステムの疲労試験

  • ISO 7206-4 に基づき、人工股関節ステムに数百万回の繰返し曲げ荷重を加える。

  • 実際の歩行中の荷重サイクルを模擬。

  • 割れ、塑性変形、コーティング剥離などが発生しないか確認。


疲労試験で使用される基準例(生体材料)

  • ISO 10993-1:生体適合性全般

  • ISO 7206シリーズ:人工股関節部品の疲労試験

  • ASTM F1160:骨接合器具の疲労特性

  • ASTM F2077:椎間板インプラントの疲労試験



疲労試験が行われる関連分野

疲労試験は、機械的な繰返し荷重にさらされるすべての分野で実施される重要な信頼性評価手法です。以下に、代表的な分野とその目的、さらにバイオマテリアル(生体材料)分野における具体的な応用も含めて、説明します。


一般工学・産業分野での疲労試験の実施例

自動車・輸送機器

  • サスペンション、シャーシ、ホイール、溶接部、エンジン部品などの長期使用による破損防止。

航空・宇宙

  • 翼、胴体、エンジンブレードなどにおける軽量化設計と高信頼性の両立。

鉄道・船舶

  • 車軸、車輪、構造部材などの繰返し衝撃への耐久性評価。

土木・建築

  • 橋梁、支柱、舗装材の疲労寿命の把握。大型インフラの長期安全性評価。

エネルギー(風力、原子力など)

  • タービンブレード、溶接継手、配管などの長期振動や温度変化下での疲労強度の評価。

電子機器・半導体

  • はんだ接合部やフレキシブル基板など、微小領域の熱疲労・機械疲労の評価。



バイオマテリアル(生体材料)分野での疲労試験

生体材料分野では、材料そのものの疲労特性に加えて、生理環境(体液・pH・温度)下での繰返し機械負荷に対する応答が重要視されます。


応用分野と試験対象


整形外科インプラント

  • 人工股関節・膝関節・脊椎固定具などの歩行・運動時の繰返し荷重への耐久性を評価(例:ISO 7206シリーズ)。


歯科材料

  • インプラント、ブリッジ、義歯などの咀嚼負荷に対する耐久性評価(ASTM F2118など)。


心血管デバイス

  • ステント、人工弁、カテーテルなどが血流や拍動に起因する周期的負荷に耐えられるかを確認。疲労寿命は数億回に及ぶこともある。


生体吸収性材料

  • PLLAやPGAなどの分解とともに機械的強度が変化する材料の、疲労強度変化の追跡。


再生医療・組織工学材料

  • 細胞足場やハイドロゲルなどの動的刺激下での劣化や繰返し変形耐性の評価。



特徴的な試験条件(バイオマテリアル特有)

  • 体液模擬液(PBS, SBF)中での試験

  • 生理温度(約37℃)での長時間繰返し負荷

  • 腐食疲労・応力腐食割れの併用評価(特に金属材料)

  • 多軸・ランダム荷重(例:歩行中の関節など)



疲労試験が重要な理由

  • 工業分野では「予期せぬ疲労破壊」を防ぐために不可欠。

  • 生体材料分野では「人体内の長期安全性・信頼性確保」が主目的。

  • 特に医療機器は人命に直結するため、疲労性能の評価が非常に厳格に行われる。




バイオマテリアル・生体材料における疲労試験のアプリケーション例


人工股関節(ステム・ボール)

  • ISO 7206シリーズに基づき、歩行を模擬した曲げ荷重の繰返し試験(最大500万回以上)を行い、破断・変形・コーティング剥離の有無を評価。


歯科用インプラント(チタン製)

  • ISO 14801に準拠し、斜め荷重を加えながら唾液模擬液中・体温条件下での疲労破壊の発生有無を確認。


心臓用ステント(金属・高分子)

  • 拍動(約10億回のサイクル)に伴う径方向の繰返し変形に耐えうるか評価。腐食疲労や疲労破断の有無をチェック。


脊椎固定具(スクリュー・ロッド)

  • ASTM F1717などの規格に準拠し、屈曲およびねじり疲労に対する長期耐性を評価。


生分解性プレート・スクリュー(PLLA等)

  • 分解進行中における残留強度・疲労耐性の推移を評価。強度が低下しても骨癒合が達成されるか確認。


組織工学用ハイドロゲル

  • 細胞増殖中に加わる微小な機械刺激下で、構造の繰返し変形耐性や材料劣化の評価を実施。



バイオマテリアル・生体材料の疲労試験に使用される装置

バイオマテリアル(生体材料)の疲労試験には、繰返し荷重を精密に制御でき、生体内環境を模擬できる試験装置が用いられます。代表的なのは、電動式または油圧式のユニバーサル型疲労試験機で、人工関節や骨固定具の高荷重・長期間の試験に使われます。また、小型・高周波駆動が可能な電磁式試験機は、歯科用インプラントやステントなどの微小構造体に適しています。生体模倣性を重視する場合には、体温や模擬体液中での試験が可能な恒温槽一体型の装置が使われ、腐食疲労や分解挙動も評価できます。さらに、組織工学材料など微小で柔軟な素材には、高感度・微小荷重対応のマイクロ疲労試験機が用いられます。これらの装置は、荷重容量、試験周波数、生理環境の再現性、試験モード(引張・ねじりなど)、国際規格への適合性などを考慮して選定されます。



CellScale社 UniVertシステムでの疲労試験

CellScale社の UniVertシステム は、バイオマテリアル・生体材料の疲労試験において高い柔軟性と高解像度を提供する多機能ユニバーサル試験装置として活用されます。以下にその主要な利用法と適合アプローチをまとめました。



UniVertの主な活用ポイント

  1. 繰返し(疲労)荷重試験

    • 引張・圧縮・曲げ・高率など多様な荷重モードに対応可能。装置には高加速度・高データ更新の補助アクチュエータを接続でき、疲労試験や高ストレインレート試験にも適応できます。

    • 筋骨格・心血管組織・合成代替材など、生体における定常・周期的荷重の再現が可能 。

  2. 環境制御下での模擬試験

    • 温調液槽を備え、体温に換算した温度(約37℃)および生理模擬液中での長期疲労・腐食疲労試験を実施可能 。

  3. 高解像度画像取得とリアルタイム歪み制御

    • CCDカメラと非接触変位計測による高精度な歪みマッピング(DIC)機能があり、微小・不均一なバイオマテリアルの挙動観察と制御に威力を発揮 。

  4. 多軸・複合負荷試験への拡張性

    • オプションでタッピング・ねじり・圧力などの軸を追加でき、例えば血管の圧・引張、関節のねじり+圧縮など複合モードにも対応。

  5. 小~大型試料に適した多段階荷重範囲

    • 0.5~最大10 kNまでカバーするロードセルと治具を選択可能。ハイドロゲルや細胞スキャフォールドから骨や場外圧負荷デバイスまで幅広く対応 。






対応アプリケーション例

  • 水膨潤ハイドロゲル:数百Hzの微小サイクル荷重 → 機械的劣化の深堀

  • 軟骨・骨組織:曲げ疲労により微小クラック進展の可視化

  • 血管やステントモデル:圧力膨張+引張やねじりによる複合負荷評価

  • 組織工学材料:細胞スキャフォールドの機能低下評価と歪み測定



導入にあたって考慮すべき点

  • 荷重容量:評価対象に応じたロードセル選択(例:10 N以下 → 軟組織、1000 N以上 → 骨)

  • 周波数・速度:高サイクル疲労には補助アクチュエータの導入が有効

  • 環境設定:試料が常に生理条件下であるように設計された液槽や温調に対応

  • 解析要件:DICや多軸解析に基づく高精度試験法を採用



UniVertは、多荷重モード・環境制御・高解像度計測を一体化し、生体材料の疲労特性評価において極めて汎用性が高い装置です。人工組織、インプラント材料、細胞スキャフォールドなど、多岐にわたる研究テーマで活用が進んでおり、特にリアルタイム観察と複合負荷対応という点で他装置に比べ優位性があります。



CellScale社のUniVertシステム:生体材料に特化した高精度疲労試験ソリューション

近年の医療・再生医療分野における技術革新に伴い、生体材料(バイオマテリアル)の信頼性評価はますます重要性を増しています。特に、筋骨格系組織や合成代替材料、さらには動脈や心臓弁などの心臓血管組織といった複雑かつ高応力下に曝される対象に対しては、きわめて高精度な疲労試験が求められます。


こうしたニーズに対応する試験装置として、CellScale社のUniVertシステムは最適な選択肢です。本システムは、生体材料・バイオマテリアルに特化した設計がなされており、試料の微細な変形や劣化挙動を繰返し荷重下で的確に評価することが可能です。


温度制御式の液体バス(水平型または垂直型)に対応しており、37℃の生理環境下や模擬体液中での長時間にわたる疲労試験が実現され、感度の高い試料を実環境に近い条件下で安定的に評価できます。


UniVertシステムは、柔軟な構成、高感度な力・変位制御、優れた拡張性を備えており、研究開発から品質管理まで幅広い応用が可能です。再生医療や医療機器の開発に携わる研究機関・企業の皆様に、信頼性の高い試験結果と業務効率の向上をもたらすシステムです。









製品のご紹介


CellScale社 UniVert/卓上 引張・圧縮・3点曲げ試験機

生体サンプルから工業製品の試験に






 CellScale社のUniVertは、生体サンプルなどのバイオマテリアル試験に最適です。クリップやプレートなど様々なアタッチメントに対応し、生体組織、ゲル、フィルム、ファイバーなどの多様なサンプルでの強度測定に優れています。


 圧縮、引張、3点曲げなどのモードがあり、ロードセルは着脱式で、4.5N~200N(*1Kgモデルは1Kgまで)での測定が可能です。また、オプションのバスを取り付けることにより、横型、縦型での液中での測定も可能です。







MicroTester

マイクロスケール圧縮強度測定装置

MicroTesterはマイクロスケール生体サンプルや微粒子の粘弾性測定に特化した粘弾性測定装置です。

 

1㎜以下径のビーム(カンチレバー)とプレートで直接サンプルに接触して、非破壊で約0.005~500µNの粘弾性試験が可能です。生体サンプルの試験に特化し工業用の試験機では実現できないコンパクトさ、試験レンジを実現し、精度の高い試験・解析が可能となりました。チャンバー前方に取り付けられた高解像度カメラにより、サンプルの変位の画像解析も可能です。








オレンジサイエンスが取り扱うその他の製品


オレンジサイエンスでは、測定機器の他にも伸展刺激装置・圧縮刺激装置を取り扱っております。ご不明点や取り扱い装置に関する詳細など、お気軽にお問い合わせください。


CellScale/セルスケール社

​Mechano Cultureシリーズの機械的刺激培養装置はモデルにより、360度伸展、シリコンチャンバー伸展、マテリアル伸展、流体圧縮、機械的圧縮+データ測定、マテリアル伸展+データ測定が可能です。







STREX/ストレックス社

​独自のシリコンチャンバーを伸展させることにより、チャンバー上の細胞に伸展刺激を与えることが可能です。顕微鏡搭載モデルは、倒立顕微鏡での伸展細胞の観察も可能です。







IonOptix/イオンオプティクス社

​C-Stretchシステムはシリコンチャンバーを採用した伸展培養装置です。C-Pace EMシステムと使用することにより、伸展刺激と同時に、電気刺激を与えることも可能です。







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