液中測定装置
- Orange Science
- 7月24日
- 読了時間: 12分
液中測定装置とは
「液中測定装置」とは、液体中に存在する物質や物性を定量・定性評価するための装置です。科学研究、医療、環境分析、食品検査、製薬プロセスなど幅広い分野で利用されます。
主な測定対象
化学成分(イオン、金属、溶存ガスなど)
pH、導電率、濁度、溶存酸素などの物理化学的特性
微粒子の動態やサイズ分布
生体試料中の細胞活動や代謝物
溶液中での反応速度や物質移動
応用分野の例
バイオ医薬品製造(培養液モニタリング、発酵プロセス管理)
水質管理・環境分析
食品工業(成分分析や異物検出)
化学プロセスの制御
ライフサイエンス研究(細胞代謝や反応測定)
生体サンプルの液中での引張試験・圧縮試験
生体サンプル(例:軟組織、血管、筋肉、培養組織、ハイドロゲルなど)を液中で引張試験や圧縮試験するためには、以下のような専用の試験装置と工夫された環境構築が必要です。
液中での機械試験を行うための基本構成
1. 試験装置本体(材料試験機)
生体材料対応の微小力対応ユニバーサル試験機(例:CellScale社 UniVert)
通常の万能試験機ではサンプルが繊細すぎたり、乾燥してしまうため不適です。
2. 液中試験用チャンバー(バス)
試験中にサンプルをPBSや培養液、人工体液などで満たしたチャンバー(液槽)内に保持する。
一般的な工夫:
温度制御(例:37℃恒温)
酸素供給(長時間試験や細胞含有組織では重要)
換液対応(培養環境維持が必要な場合)
3. 試料の固定と引張・圧縮機構
サンプル固定の工夫が重要:
引張試験:専用のクランプや接着法(滑らない、壊さない設計)
圧縮試験:上下プレートで均一に荷重をかける構造
生体サンプル用の治具を使用します。
4. 荷重・変位の高感度測定系
生体材料は非常に柔らかく微小な力で変形します。
高精度ロードセルと高分解能の変位センサーが必要です。
装置例:CellScale社の「UniVert」+「液体バス」
高感度ロードセル
細胞培養に使える液体チャンバー対応
引張/圧縮/曲げ/せん断など多様なモードに対応
ソフトマテリアル・生体材料専用設計
実験のポイント
乾燥を避ける(生体材料は乾燥に弱く、力学特性が変わる)
生理条件の再現(pH、温度、イオン環境など)
破壊しない固定法(クランプ圧が高すぎると測定に影響)
生体サンプルの引張試験・圧縮試験に液中測定装置を使用する目的
生体サンプルの引張試験・圧縮試験に液中測定装置を使用する目的は、主に次のような理由によって生体環境を正確に模倣し、信頼性の高い力学特性データを得るためです。
液中測定を行う主な目的
1. 生理的環境の再現(in vivoに近づける)
生体組織や細胞を構成する材料(例:コラーゲン、軟骨、血管)は水分を大量に含む柔らかい材料です。
空気中では乾燥による変性・収縮・硬化が起こり、本来の力学特性が変化してしまいます。
液中では温度・pH・イオン強度などを制御可能で、生体内環境に近い状態を維持できます。
2. 正確で一貫性のある力学データの取得
水分状態が異なるだけで、引張強度・弾性率・破断点が大きく変化します。
液中での測定により、再現性・比較可能性のあるデータを取得できます(特に臨床・創薬研究では重要)。
3. 細胞や組織の生存維持(バイオアクティブ試験)
培養組織やオルガノイド、細胞スフェロイドなどの力学特性評価では、細胞の生存や活性維持が必要。
液中環境であれば酸素や栄養の供給が可能で、測定後に細胞バイアビリティや遺伝子発現も追跡できます。
4. 長時間・動的試験が可能
疲労試験や時間依存的な粘弾性解析(クリープ・応力緩和など)では、サンプルが時間的に安定している必要があります。
液中では蒸発や温度変化が制御しやすく、長時間の試験でも物理状態を一定に維持できます。
5. 薬剤・化合物の影響評価
試験液中に薬剤や酵素、添加成分を加えることで、力学特性への影響(例:分解、強化)をその場で評価できます。
組織工学・創薬・毒性評価などで応用されます。
例:液中での引張/圧縮試験の応用
組織工学
コラーゲンゲル、再生皮膚
構造的強度、設計パラメータ評価
心血管研究
血管、弁、筋組織
生体応力に対する応答評価
創薬・毒性試験
薬剤処理後のスフェロイド
力学変化による影響解析
リハビリ・整形外科
筋腱、関節軟骨
加齢・疾患モデルの比較
液中測定装置を使う最大の目的は、「生体本来の状態を保ったまま、正確な機械的データを得ること」です。これにより、研究・評価・開発の信頼性と再現性が大きく向上します。
生体サンプルの引張試験・圧縮試験に液中測定装置を使用するメリット
生体サンプルの引張試験・圧縮試験に液中測定装置を使用するメリットは、以下のように科学的信頼性と実用性の両面にわたります。
液中測定の主なメリット
1. 生理的条件を再現できる(in vivoに近い環境)
生体組織や細胞は水分を大量に含んだ柔らかい素材です。
空気中での測定では乾燥によって硬化や収縮が起こり、本来の力学特性を正確に評価できません。
液中では温度(例:37℃)やpH、イオン濃度を制御しながら、生体内に近い条件で測定が可能です。
2. サンプルの構造と機能を維持できる
特に細胞を含む生体組織・培養組織・ハイドロゲルなどは、空気中では構造が崩れやすく、力学応答が変わります。
液中では組織の物理的・生化学的安定性を保ちながら試験ができます。
3. 力学データの再現性・信頼性が向上する
測定条件(水分量、温度など)を一定に保つことで、試験間のバラツキが減り、データの再現性が向上します。
研究結果の信頼性や比較可能性が高まります。
4. 長時間・動的試験に対応できる
応力緩和試験、クリープ試験、疲労試験などでは長時間の測定が必要。
液中測定では、乾燥や温度変動の影響を抑えて安定した長時間測定が可能です。
5. 薬剤や化合物の影響を評価できる
測定液に薬剤や酵素を添加することで、その場で組織や材料の力学特性への影響を調べることができます。
創薬、再生医療、毒性評価などに有効です。
生体サンプルの引張試験・圧縮試験用液中測定装置が活用される分野
生体サンプルの引張試験・圧縮試験用液中測定装置は、以下のような医療・バイオ・工学系の幅広い分野で使用されています。これらの装置は、生体内環境を模倣しつつ、正確な力学特性の評価が求められる場面で不可欠です。
使用される主な研究・応用分野
1. 再生医療・組織工学
人工皮膚、血管、骨、軟骨、心筋組織などの再生組織の強度や柔軟性の評価
培養されたオルガノイドやスフェロイドの力学的成熟度の評価
バイオスキャフォールド(足場材料)の物性比較
2. バイオマテリアル研究
ハイドロゲル、コラーゲンゲル、ゲルマトリックスなどの新素材の弾性・粘弾性評価
生分解性材料の分解前後の力学性能測定
3. 生理学・筋骨格系研究
骨、腱、靭帯、軟骨、筋肉などの機械的特性測定(引張・圧縮・せん断)
疾患モデルや加齢変化による組織の物性変化の比較
4. 心血管研究
血管壁の弾性、人工血管やバイオ血管の引張・破断応力測定
心臓弁、心筋組織の圧縮・収縮に対する応力評価
5. 創薬・毒性評価
薬剤処理後の生体サンプルの構造的変化・軟化・硬化などの評価
力学的変化を指標とした化合物スクリーニング
6. 発生・発育研究
胎児組織や未成熟組織の成長に伴う機械的特性の変化
細胞層や細胞外マトリクスの発達と弾性の関係の研究
7. 歯学・口腔生理学
歯周組織や口腔粘膜、人工歯科材料の力学試験
唾液中環境での試験が必要な場合に液中装置を活用
生体サンプルの引張試験・圧縮試験用液中測定装置のアプリケーション例
生体サンプルの引張試験・圧縮試験用液中測定装置は、さまざまな生体材料や再生組織の力学的特性の評価に使用されています。以下に、代表的なアプリケーション例を具体的にご紹介します。
1. 人工血管・天然血管の引張試験
目的:血管の弾性や最大破断強度の評価
使用試料:ヒト・ラットの動脈/静脈、バイオ人工血管
測定環境:生理食塩水中(37℃)で引張荷重を加える
応用:バイオ人工血管開発、安全性評価、老化モデルの比較
2. 心筋組織の圧縮試験
目的:心筋や心臓パッチの柔軟性、応力反応の定量
使用試料:iPS由来心筋組織、動物由来心筋片
測定環境:培養液中、37℃条件下で周期的圧縮をかける
応用:心筋再生医療、薬剤応答評価、バイオパッチの開発
3. ハイドロゲル(コラーゲン・ゼラチン)の圧縮試験
目的:ゲル硬さ・弾性率の定量
使用試料:細胞含有または非含有の3Dゲル
測定環境:PBS中で等速圧縮
応用:スキャフォールド設計、3D細胞培養材の特性評価
4. 皮膚組織の引張試験
目的:天然皮膚および再生皮膚の力学的強度評価
使用試料:マウス皮膚、人工皮膚モデル
測定環境:培養液または湿潤条件下
応用:創傷治癒研究、皮膚代替品の比較試験
5. 細胞スフェロイドの微小圧縮試験
目的:細胞集塊の剛性や力学的成熟度を測定
使用試料:幹細胞スフェロイド、オルガノイド
測定環境:培養液中、顕微鏡下で微小圧縮
応用:細胞分化評価、毒性試験、創薬スクリーニング
6. 軟骨組織の圧縮弾性率評価
目的:健康軟骨と変性軟骨の比較
使用試料:ウシ・ヒトの軟骨円柱切片
測定環境:PBS中または栄養液中(37℃)
応用:関節疾患モデル、再生軟骨の機能評価
7. 生分解性ポリマーの力学劣化試験
目的:加水分解・酵素分解による力学特性変化を評価
使用試料:PLGA、PGAなどの医療材料
測定環境:酵素液や人工体液中に一定期間浸漬
応用:インプラント設計、医療機器開発
生体サンプルの液中引張試験・液中圧縮試験 CellScale社 Univertシステム
CellScale社の UniVertシステム は、生体サンプルの液中での引張試験・圧縮試験に特化したコンパクトで高精度な材料試験機です。特に軟組織、ハイドロゲル、細胞スフェロイド、再生医療材料などの繊細なサンプルに最適化されています。

UniVertの液中試験での活用ポイント
1. 液体バスチャンバー(BioChamber)との併用
UniVertには専用の液体バスチャンバー(BioChamber)が用意されており、生理食塩水、PBS、培養液などの液体中で試験が可能。
温度制御も可能(例:37℃)で、生体模倣環境での測定ができます。
2. 引張試験の用途
血管、腱、皮膚、再生組織、ゲル材料などを液中で伸展し、引張強度、弾性率、破断点などを評価。
サンプルに応じてクランプ(固定治具)のカスタマイズが可能。
微小力ロードセルで、柔らかい試料でも高精度に測定可能。
引張試験の例:
コラーゲンゲル
弾性率の比較(濃度依存)
PBS中、室温または37℃
人工皮膚
伸展耐性評価
培養液中、湿潤保持
動物由来血管片
疾患モデル比較
生理食塩水中
3. 圧縮試験の用途
ハイドロゲル、細胞スフェロイド、軟骨円柱、ミニオルガノイドなどの圧縮応答・弾性・剛性の測定。
高感度なロードセルと微細な圧縮プレートを使って、液中での圧縮が可能。
圧縮試験の例:
幹細胞スフェロイド
発達・成熟度に伴う剛性変化
培養液中、温度維持
軟骨スライス
健常/変性組織の弾性比較
PBS中、等速圧縮
ゲル状材料
濃度・架橋条件の物性評価
任意の液体中で繰り返し試験
UniVertが特に適する用途
再生医療
人工皮膚、心筋パッチ
力学的成熟度の評価
バイオマテリアル
ハイドロゲル、コラーゲンゲル
弾性率・強度の比較
筋骨格研究
軟部組織、靭帯
疾患モデルや負荷実験
創薬研究
細胞スフェロイド、オルガノイド
薬剤処理後の剛性評価
CellScale社のUniVertシステムは、液中で生体サンプルの微小な力学応答を高精度に測定できる非常に柔軟な装置です。液体バス、温度制御、多様な治具、微小力ロードセルなどにより、生体模倣環境下での試験を正確かつ再現性高く行えます。
CellScale社のUnivertシステムによる生体サンプルの液中測定
生体材料の精密な機械特性評価をご検討中の研究・開発現場において、CellScale社のUnivertシステムは極めて有用な選択肢です。本製品は、生体サンプルの特性に最適化された高感度な試験機であり、引張・圧縮・せん断試験など多様な力学評価に対応します。
特に本システムは、液中測定に対応する専用チャンバーを備えており、PBSや培養液などの生理条件下で試料の測定が可能です。これにより、組織・細胞・ハイドロゲル等の生体サンプルが本来持つ力学的特性を、変性させることなく高精度に解析できます。
さらに、液中測定装置としての優れた汎用性により、再生医療、組織工学、バイオマテリアル開発、創薬研究など幅広い分野でご活用いただけます。信頼性の高いデータ取得と柔軟な試験設計を可能にするUnivertシステムは、研究の質とスピードを大きく向上させるツールとして、高く評価されています。

製品のご紹介
CellScale社 UniVert/卓上 引張・圧縮・3点曲げ試験機
生体サンプルから工業製品の試験に

CellScale社のUniVertは、生体サンプルなどのバイオマテリアル試験に最適です。クリップやプレートなど様々なアタッチメントに対応し、生体組織、ゲル、フィルム、ファイバーなどの多様なサンプルでの強度測定に優れています。
圧縮、引張、3点曲げなどのモードがあり、ロードセルは着脱式で、4.5N~200N(*1Kgモデルは1Kgまで)での測定が可能です。また、オプションのバスを取り付けることにより、横型、縦型での液中での測定も可能です。
MicroTester
マイクロスケール圧縮強度測定装置
MicroTesterはマイクロスケール生体サンプルや微粒子の粘弾性測定に特化した粘弾性測定装置です。
1㎜以下径のビーム(カンチレバー)とプレートで直接サンプルに接触して、非破壊で約0.005~500µNの粘弾性試験が可能です。生体サンプルの試験に特化し工業用の試験機では実現できないコンパクトさ、試験レンジを実現し、精度の高い試験・解析が可能となりました。チャンバー前方に取り付けられた高解像度カメラにより、サンプルの変位の画像解析も可能です。

オレンジサイエンスが取り扱うその他の製品
オレンジサイエンスでは、測定機器の他にも伸展刺激装置・圧縮刺激装置を取り扱っております。ご不明点や取り扱い装置に関する詳細など、お気軽にお問い合わせください。
CellScale/セルスケール社
Mechano Cultureシリーズの機械的刺激培養装置はモデルにより、360度伸展、シリコンチャンバー伸展、マテリアル伸展、流体圧縮、機械的圧縮+データ測定、マテリアル伸展+データ測定が可能です。

STREX/ストレックス社
独自のシリコンチャンバーを伸展させることにより、チャンバー上の細胞に伸展刺激を与えることが可能です。顕微鏡搭載モデルは、倒立顕微鏡での伸展細胞の観察も可能です。

IonOptix/イオンオプティクス社
C-Stretchシステムはシリコンチャンバーを採用した伸展培養装置です。C-Pace EMシステムと使用することにより、伸展刺激と同時に、電気刺激を与えることも可能です。
