スフェロイド硬さ測定装置・ゲル硬さ測定装置
- Orange Science
- 7月24日
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更新日:7月25日
スフェロイド硬さ測定装置とは
スフェロイド硬さ測定装置とは、「3次元細胞塊(スフェロイド)」の機械的性質、特に硬さ(剛性・弾性)を測定するための実験装置です。スフェロイドは、がん研究や再生医療、薬剤スクリーニングなどでよく使われる3次元細胞モデルで、従来の2D培養よりもin vivo(生体内)に近い応答を示すことから注目されています。
【スフェロイド硬さ測定装置で測定できる内容】
ヤング率(Elastic modulus) → スフェロイドの変形に対する抵抗力
粘弾性(Viscoelasticity) → 時間依存的な変形特性(がん細胞に特に重要)
変形率・圧縮率 → 外力に対してどの程度変形するか
【主な測定方法】
圧縮試験(Micro-compression) 微小なプローブでスフェロイドを垂直に押し潰し、力と変形量の関係を記録
AFM(原子間力顕微鏡)による硬さ測定 カンチレバーで局所的な力を加えて表面の硬さを解析
マイクロピペット吸引法 細いガラスピペットで吸引し、変形の大きさから硬さを推定
磁気・光学的変形法(例:磁性ビーズを用いた牽引) スフェロイド内または周囲に与えた刺激に対する変形を解析
【応用例】
がんスフェロイドの悪性度評価(がん細胞は軟らかい傾向)
薬剤によるスフェロイド構造の変化評価
組織工学における3D組織の力学的成熟度の評価
ゲル硬さ測定装置とは
ゲル硬さ測定装置とは、ハイドロゲルや寒天ゲルなどのゲル状試料の「硬さ(機械的特性)」を評価・定量化するための装置です。ここでの「硬さ」とは、主に弾性(ヤング率)、変形抵抗性、粘弾性、破断強度などを指します。
【ゲル硬さ測定の目的】
ゲルは医療、食品、化粧品、バイオマテリアルなど多くの分野で使用されており、それぞれの用途に応じた最適な硬さ・弾性特性が求められます。
例えば:
組織工学用ハイドロゲル: 組織とマッチした硬さが必要
ドラッグデリバリー用マトリクス: 崩壊性や拡散特性と関連
食品ゲル(ゼリー・寒天): 食感や破断時の感覚に直結
【主な測定方法と原理】
圧縮試験
弾性率、降伏点、破断強度など
汎用的、ゲル塊に直接押し込み
レオメーター(粘弾性測定)
粘弾性(G'・G'')、剪断応答
周波数依存性も測れる
インデンテーション(押し込み)
局所硬さ、ヤング率
微小領域に対応(例:細胞スケール)
DMA(動的粘弾性測定装置)
振動負荷による弾性・粘性
時間・温度依存の性質が測れる
AFM
微小ゲル・薄膜の局所硬さ
ナノ~ミクロスケールの評価
スフェロイドやゲルの硬さ試験を実施する目的
スフェロイドやゲルの硬さ試験(機械的特性の評価)を実施する目的は、主に以下の3つに分類できます。
1. 生物学的・医学的機能との関連性の評価
細胞応答や組織機能における硬さの重要性
スフェロイド(3D細胞塊)では、硬さががんの悪性度・増殖・浸潤能などと強く関係しています。 例:悪性腫瘍はより軟らかい傾向があり、薬剤耐性と関係する場合も。
ハイドロゲルは細胞の接着・分化・移動に影響を与えるため、組織工学や再生医療での足場材には組織に近い硬さ調整が不可欠です。
目的例
がん研究:硬さと腫瘍進行・薬剤応答の関連分析
神経幹細胞研究:軟らかいゲルで分化を誘導
組織工学:最適な硬さで移植材料を設計
2. 材料・製品の性能評価と品質管理
目的に合った機械的特性の確認
ゲルの強度や変形特性は、機能性材料としての安全性や使用感に直結します。
医療用ゲル(ドラッグデリバリーキャリア等)は体内環境下での崩壊・分散特性に影響。
食品・化粧品では、硬さや粘弾性が官能評価(食感や塗り心地)と対応します。
目的例:
製品の硬さが規定範囲内にあるかを確認(QC)
薬剤を含むゲルの硬化・崩壊挙動を予測
消費者が求める「口当たり」「肌感」の最適化
3. 経時変化や環境応答性の評価
ゲルやスフェロイドの変性や老化の追跡
硬さの変化は、材料の劣化・化学反応・細胞のリモデリングなどの指標になります。
再生医療の分野では、細胞が分泌するマトリックスによる硬化・軟化の進行を評価可能。
目的例:
ハイドロゲルの時間経過による安定性検証
細胞がスフェロイド内で作るECM(細胞外マトリクス)の変化追跡
温度・pH・酵素処理などに対する応答性の測定
スフェロイド硬さ測定装置やゲルの硬さ試験装置が活用される分野
スフェロイド硬さ測定装置やゲルの硬さ試験は、ライフサイエンスから材料工学、医療・食品産業まで、多岐にわたる分野で使用されています。
【1. 医学・生物学・再生医療分野】
がん研究
スフェロイドの硬さによる悪性度・薬剤耐性の評価。
例:柔らかいがんスフェロイドは浸潤性が高い。
再生医療・組織工学
細胞足場(ゲル)の硬さが、分化・接着・増殖に影響。
例:神経幹細胞には低硬度ゲル、骨芽細胞には高硬度ゲルが適する。
創傷治癒研究
ECMのリモデリングや硬化進行の評価。
神経科学
脳組織に近い弾性のゲルを使った神経細胞の培養と研究。
幹細胞研究
硬さに応じた分化制御の研究(メカノバイオロジー)。
【2. 医薬品開発・ドラッグデリバリー】
ドラッグデリバリーシステム(DDS)
ゲルキャリアの崩壊特性、硬さによる放出制御の設計。
薬剤スクリーニング
スフェロイドを用いた高精度な薬剤応答評価。硬さ変化が薬効の指標になることも。
バイオアッセイ開発
スフェロイド硬度を含む多因子解析。
【3. 材料工学・バイオマテリアル研究】
バイオマテリアル設計
インプラントや人工組織材料に求められる硬さの最適化。
ハイドロゲル開発
応力-ひずみ特性、破断強度などの材料特性評価。
マイクロ・ナノスケール材料開発
微小スフェロイドや微細ゲル構造の力学特性評価。
【4. 食品・化粧品産業】
食品科学
ゼリー、寒天、こんにゃくなどの硬さの定量評価。官能評価との相関分析。
化粧品開発
ジェル・クリームの塗布感や安定性に関わる物性評価。例:ゲル状美容液のテクスチャー最適化。
【5. 環境・農業・化学研究】
環境応答性材料
温度・pH・酵素で変化するゲルの硬さ変化をモニタリング。
農業バイオ
土壌モデルや種子ゲルコーティングの物性評価。
スフェロイド硬さ測定装置やゲル硬さ測定装置のアプリケーション例
スフェロイド硬さ測定装置やゲル硬さ測定装置は、細胞バイオロジー・材料開発・再生医療・薬剤評価などの分野で、以下のような具体的なアプリケーション(応用事例)に使用されています。
【スフェロイド硬さ測定装置のアプリケーション例】
1. がんスフェロイドの悪性度評価
概要: がん細胞から形成された3Dスフェロイドの硬さ(ヤング率)を測定し、腫瘍の進行度や転移性と関連づける。
使用理由: 軟らかいスフェロイドほど高い浸潤性・転移能を示すことがある。
2. 抗がん剤スクリーニング
概要: 抗がん剤投与前後のスフェロイドの硬さの変化を計測。
使用理由: 効果的な薬剤はスフェロイドの構造を破壊し、硬さに変化が現れる。
3. 幹細胞分化のメカノバイオロジー研究
概要: 幹細胞由来スフェロイドの硬さを追跡し、分化の進行度や組織化との相関を評価。
使用理由: 硬さが細胞外マトリクスの構築や分化状態を反映する。
4. 組織構造成熟の指標
概要: 心筋・肝臓などのオルガノイドの硬さを測定し、機能的成熟を評価。
使用理由: 組織機能の確立は、力学的特性に現れる。
【ゲル硬さ測定装置のアプリケーション例】
1. ハイドロゲル足場材の力学的最適化
概要: 再生医療用ゲルのヤング率や粘弾性を測定。
使用理由: 細胞が好む硬さに調整することで、生着や分化を促進。
2. ドラッグデリバリーゲルの崩壊・拡散評価
概要: 薬剤含有ゲルの硬さや粘弾性を測り、体内環境下での挙動を予測。
使用理由: 適切な硬さは、薬剤の放出スピードや持続時間に関与。
3. 食品ゲルのテクスチャー分析
概要: 寒天・ゼラチン・ペクチンなどの食品ゲルの破断強度や弾性を測定。
使用理由: 官能評価(食感)との相関を取り、レシピ改良に活用。
4. 化粧品ゲル製品の品質管理
概要: 美容液や保湿ジェルの粘弾性や押し込み応答を定量化。
使用理由: 消費者の好む「のび」「弾力感」を数値で評価。
5. 温度・pH応答性ゲルの評価
概要: 環境刺激により硬さが変化するゲル材料(スマートゲル)の評価。
使用理由: 環境応答型材料の機能設計に必要な物性解析。
スフェロイドやゲルの硬さ試験 CellScale社 MicroTesterシステム
CellScale社の MicroTesterシステム は、スフェロイドやゲルのような微小・軟質な試料の力学特性(硬さ・弾性・粘弾性)を高精度で測定するために最適化された機械試験システムです。以下に、具体的な活用方法を解説します。

【MicroTesterの概要と特徴】
対象試料: 直径数百μm〜数mmの微小試料(例:スフェロイド、マイクロゲル、ハイドロゲル片)
試験方式: 単軸圧縮・引張試験、クリープ、リラクゼーション試験などに対応
測定環境: 温度制御・液中試験も可能(生理的条件に近い測定)
センサー感度: μN~mNレベルの荷重センサーにより、極めて小さな力の測定が可能
【1. スフェロイドの硬さ試験での活用】
アプリケーション例
圧縮試験でヤング率を測定
スフェロイドを上下から圧縮し、荷重-変形曲線を取得。ヤング率や破断点を定量化。
薬剤処理前後の力学的変化を比較
抗がん剤や分化誘導剤投与後のスフェロイド硬さの変化を評価。薬剤応答性の新たな指標として。
細胞外マトリクス(ECM)の形成状態を反映
ECMの蓄積が進むほどスフェロイドは硬化し、組織成熟度の間接指標になる。
【2. ゲルの硬さ試験での活用】
アプリケーション例
軟質ハイドロゲルの圧縮・引張特性評価
ゲルの弾性率、降伏応力、破断強度を測定。ゲル材料の設計・最適化に貢献。
液中環境下での力学試験
生理食塩水や培養液中で測定可能。細胞足場やDDSゲルの実環境評価に有用。
時間依存性(粘弾性)の評価
クリープ試験やストレスリラクゼーション試験によって、時間軸での変形挙動も取得可能。
【研究・開発における活用分野】
再生医療・バイオマテリアル
足場材の設計、細胞分化応答に適した硬さの同定
がん研究
スフェロイドの悪性度・薬剤耐性評価
組織工学
組織構築物の成熟度・構造評価(特に心筋、肝臓、軟骨オルガノイド)
材料開発(ゲル・ポリマー)
新規ゲル材料の粘弾性・耐久性試験
食品・化粧品試験
微小ゲルの力学特性評価
【MicroTesterが選ばれる理由】
微小試料対応
スフェロイドやミリ以下サイズのゲルにも対応
液中試験可能
生体適合性試料の評価に必須
高感度荷重計
軟質材料の力学解析に最適
画像連動型測定も可能
試料の変形をビジュアルで確認・記録できるオプション
MicroTesterの活用イメージ
スフェロイド
機械的な成熟や治療応答性の定量指標として活用
ゲル材料
医療・研究応用を想定した物性評価、最適条件の探索に有効
CellScale社 MicroTesterシステム
スフェロイドやゲルの微細な硬さ試験に対応したソリューションをお探しの研究者・開発者の皆様へ、CellScale社のMicroTesterシステムをご紹介いたします。
CellScale社のMicroTesterシステムは、高精度な「スフェロイド硬さ測定装置」および「ゲル硬さ測定装置」として、多くの研究現場で採用されているマイクロスケール対応の力学評価システムです。本装置は、数百マイクロメートルから数ミリメートルスケールの柔らかい試料に対し、微小荷重制御による精密な「硬度測定」「硬さ試験」を可能にします。
たとえば、がんスフェロイドやオルガノイドの「スフェロイド硬さ測定」においては、悪性度評価や薬剤応答性の指標として、機械的特性の定量化が重視されています。また、再生医療・バイオマテリアル分野における「ゲル硬さ測定」では、細胞足場やドラッグデリバリーゲルの最適設計に貢献します。
さらにMicroTesterは、液中環境での測定にも対応しており、生理的条件下でのリアルな材料評価が可能です。操作性と高感度センサーによる正確なデータ取得により、学術研究から製品開発まで、幅広い用途において信頼性の高い機械的評価を実現します。
CellScale社のMicroTesterシステムは、スフェロイドやゲルなど軟質材料の力学特性評価における最適な選択肢です。

製品のご紹介
MicroTester
マイクロスケール圧縮強度測定装置
MicroTesterはマイクロスケール生体サンプルや微粒子の粘弾性測定に特化した粘弾性測定装置です。
1㎜以下径のビーム(カンチレバー)とプレートで直接サンプルに接触して、非破壊で約0.005~500µNの粘弾性試験が可能です。生体サンプルの試験に特化し工業用の試験機では実現できないコンパクトさ、試験レンジを実現し、精度の高い試験・解析が可能となりました。チャンバー前方に取り付けられた高解像度カメラにより、サンプルの変位の画像解析も可能です。

UniVert
卓上 引張・圧縮・3点曲げ試験機
CellScale社のUniVertは、生体サンプルなどのバイオマテリアル試験に最適です。クリップやプレートなど様々なアタッチメントに対応し、生体組織、ゲル、フィルム、ファイバーなどの多様なサンプルでの強度測定に優れています。
圧縮、引張、3点曲げなどのモードがあり、ロードセルは着脱式で、4.5N~200N(*1Kgモデルは1Kgまで)での測定が可能です。また、オプションのバスを取り付けることにより、横型、縦型での液中での測定も可能です。

オレンジサイエンスが取り扱うその他の製品
オレンジサイエンスでは、測定機器の他にも伸展刺激装置・圧縮刺激装置を取り扱っております。ご不明点や取り扱い装置に関する詳細など、お気軽にお問い合わせください。
CellScale/セルスケール社
Mechano Cultureシリーズの機械的刺激培養装置はモデルにより、360度伸展、シリコンチャンバー伸展、マテリアル伸展、流体圧縮、機械的圧縮+データ測定、マテリアル伸展+データ測定が可能です。

STREX/ストレックス社
独自のシリコンチャンバーを伸展させることにより、チャンバー上の細胞に伸展刺激を与えることが可能です。顕微鏡搭載モデルは、倒立顕微鏡での伸展細胞の観察も可能です。

IonOptix/イオンオプティクス社
C-Stretchシステムはシリコンチャンバーを採用した伸展培養装置です。C-Pace EMシステムと使用することにより、伸展刺激と同時に、電気刺激を与えることも可能です。
