剥離試験・ピーリング試験による接着強度評価
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生体材料・ハイドロゲル・接着剤のPeel testingに対応するCellScale UniVert

剥離試験は、接着された2つの材料を一定の角度や速度で引きはがし、界面の接着強度や剥離挙動を評価する試験です。「Peel testing」「ピーリング試験」「ピーリングテスト」「引きはがし試験」とも呼ばれます。
テープや一般的な接着剤だけでなく、近年ではハイドロゲル、生体接着剤、組織シーラント、創傷被覆材、医療機器用薄膜、ウェアラブルセンサーなど、軟らかく含水性の高い材料に対する剥離試験の重要性が高まっています。
CellScale社のUniVertは、生体材料や軟質材料の力学特性評価に適した卓上型メカニカルテスターです。専用・カスタム治具と制御された荷重・変位を組み合わせることで、接着界面の力学特性や剥離強度を評価できます。

剥離試験とは

剥離試験では、接着された材料の一方をもう一方から連続的に引きはがしながら、荷重と変位を記録します。
一般的な引張試験が試料全体の引張強度や弾性率を評価するのに対し、剥離試験は材料同士の界面で剥離がどのように始まり、どのように進行するかを評価する方法です。
試験方法 | 主な評価対象 | 荷重の方向・特徴 |
|---|---|---|
剥離試験 | 接着界面、層間接着、剥離挙動 | 接着界面を端部から連続的に引きはがす |
引張試験 | 材料の引張強度、弾性率、破断特性 | 試料を軸方向に引っ張る |
せん断試験 | せん断強度、接着界面のずれへの抵抗 | 接着面と平行方向に荷重を加える |
剥離試験は、材料内部の破壊よりも、接着界面の分離や層間剥離が性能を左右する材料の評価に適しています。
剥離試験で評価できる項目

試験条件や試料形状、治具構成に応じて、次のような指標を評価できます。
剥離強度
単位幅当たりの剥離力
定常剥離力
界面接着エネルギー
界面靭性
剥離開始時と進展時の挙動
接着破壊と凝集破壊の違い
剥離速度による接着特性の変化
水分、温度、表面状態による影響
接着界面の耐久性
層間剥離やデラミネーションの進行
UniVertでは、力と変位を制御しながら接着界面を段階的に分離し、剥離時の荷重変化を記録できます。CellScale社の剥離試験解説では、90度および180度の試験構成、一定速度での剥離、液中・温度制御下での評価などが紹介されています。
生体材料の剥離試験が難しい理由
生体材料や軟質材料は、一般的な工業材料とは異なる性質を持っています。
軟らかく、変形しやすい
ハイドロゲルや軟組織は荷重によって大きく変形します。試料全体の変形と、接着界面で発生する剥離を区別して評価する必要があります。
滑りやすく、保持が難しい
含水性の高い試料や生体組織は、一般的なグリップでは滑りやすく、固定部でのずれが測定結果に影響することがあります。
水分や温度の影響を受けやすい
生体接着剤やハイドロゲルの接着特性は、湿度、温度、表面水分、浸漬時間などによって変化します。乾燥状態で得られた結果が、生理学的環境での性能を反映するとは限りません。
試料形状が不均一
生体組織は厚さや形状が一定ではありません。安定した保持と適切な試験条件の設定が、比較可能なデータを得るうえで重要です。
UniVertが剥離試験に適している理由

1.低荷重領域から測定できる
UniVertは、軟組織、ハイドロゲル、薄膜などの低荷重試験を想定して設計されています。交換可能なロードセルにより、試料や予想荷重に応じた測定構成を選択できます。
特に小さな剥離力を測定する場合、ロードセルの容量と分解能を試料に合わせることが重要です。UniVertでは、適切なセンサー構成により約0.02 Nからの測定に対応します。
2.90度・180度などの剥離試験構成に対応
剥離試験では、試験角度が測定結果に大きく影響します。
UniVertでは、試料や研究目的に合わせた専用・カスタム治具を使用することで、90度剥離試験や180度剥離試験などの構成を検討できます。ステージの移動を組み合わせ、剥離中の角度を維持する試験構成についてもご相談いただけます。
※使用する角度、治具、ステージ構成は試料寸法や試験規格によって異なります。
3.液中・温度制御下での剥離試験
UniVertは、オプションのメディアバスやカスタムチャンバーを使用することで、液中または温度制御環境でのメカニカルテストに対応できます。
PBS、培地、水などに浸漬した状態で試験することにより、ハイドロゲル、生体接着剤、軟組織などを、実際の使用環境に近い条件で評価できます。標準的な空気中試験と液中試験を比較し、水和状態が接着性能に与える影響を調べることも可能です。

4.剥離速度を制御できる
一定の剥離速度で試験を行うことで、定常剥離力や単位幅当たりの剥離力を比較しやすくなります。
また、複数の剥離速度で試験することにより、粘弾性的な接着剤やハイドロゲルにおける速度依存性も評価できます。
5.画像と力学データを組み合わせられる
剥離試験では、測定された荷重だけでなく、どこで、どのように破壊したかを確認することが重要です。
UniVertは画像取得に対応しており、接着界面で分離する「接着破壊」と、接着剤やハイドロゲル内部が破壊する「凝集破壊」の判別をサポートします。画像と荷重・変位データを組み合わせることで、剥離挙動をより詳細に解釈できます。
6.剥離試験以外の力学試験にも対応
UniVertは剥離試験専用機ではありません。治具やアクセサリーを変更することで、次のような試験にも対応できます。
引張試験
圧縮試験
3点曲げ試験
疲労・繰り返し試験
粘弾性・時間依存性試験
パンクチャー試験
せん断試験
ねじり試験

同じ試料について、接着界面の剥離特性と材料自体の引張特性を1台のプラットフォームで評価することも可能です。

剥離試験の対象となる試料
UniVertによるピーリング試験は、次のような材料や研究用途に活用できます。
試料・材料 | 主な評価目的 |
|---|---|
生体接着剤 | 組織への接着強度、界面靭性 |
組織シーラント | 生理学的環境での接着維持性能 |
接着性ハイドロゲル | 湿潤組織や基材に対する剥離強度 |
創傷被覆材 | 皮膚への接着性と剥離時の負担 |
テープ・粘着材料 | 剥離力、速度依存性、耐久性 |
薄膜・メンブレン | 層間接着、デラミネーション |
軟質ラミネート | 積層界面の剥離挙動 |
エラストマーコーティング | 基材との接着性 |
組織接合体 | 組織間または材料・組織間の接着 |
ウェアラブルデバイス | 皮膚・組織への追従性と接着安定性 |
医療機器用フィルム | 使用中・除去時の界面力学特性 |
椎間板などの層状組織 | 組織層間の接着強度 |

剥離試験の基本的な流れ
STEP 1.試験目的と評価指標を決める
剥離強度、界面靭性、定常剥離力、剥離開始挙動など、研究目的に応じて評価指標を選定します。
STEP 2.試験角度と試料寸法を設定する
90度または180度などの剥離角度、試料幅、接着面積、接着時間、試料厚さを決定します。
STEP 3.ロードセルと治具を選定する
予想される剥離力に合わせてロードセルを選び、軟らかく滑りやすい試料を安定して保持できる治具を構成します。
STEP 4.環境条件と剥離速度を設定する
温度、液中・空気中、表面水分、浸漬時間、剥離速度などを統一します。
STEP 5.荷重・変位と破壊モードを解析する
荷重-変位データから剥離力や界面特性を算出し、画像を用いて接着破壊、凝集破壊、層間剥離などを確認します。
CellScale装置を使用した剥離試験の研究事例
以下の研究では、UniVertの前身にあたるCellScale UStretchが使用されています。UStretchは現在、UniVertへ移行・統合された旧プラットフォームです。
固定液が椎間板組織の層間接着に与える影響
2026年に発表された研究では、ブタ椎間板の線維輪組織を複数の固定液に14日間浸漬し、固定方法が組織の力学特性に及ぼす影響を評価しました。
UStretchを使用した180度剥離試験によって、線維輪の層間接着剛性と接着強度を測定しています。ホルムアルデヒドを含む飽和食塩水溶液では、未固定試料と比較して層間接着が約59%低下しました。
この結果は、保存された生体組織の剥離試験では、固定液の選択が測定結果を大きく左右する可能性を示しています。
組織接着性ハイドロゲル–MXeneバイオセンサーの90度剥離試験
2026年にScience Advancesで発表された研究では、口腔内のTNF-αを検出する組織接着性ハイドロゲル–MXeneバイオセンサーが開発されました。
UStretchを使用し、ASTM D6862に基づく90度剥離試験によって、ブタ皮膚およびブタ歯肉への接着性を評価しています。試験では約5 kPaの予圧を約5秒間加えた後、1 mm/sの一定速度で剥離し、定常剥離力から界面靭性を算出しました。
さらに、接着時間やハイドロゲルの厚さを変化させ、組織への接着性能に与える影響が評価されています。
隣接椎間板疾患における線維輪の層間剥離評価
2025年に発表された研究では、脊椎の固定や損傷が隣接する椎間板の力学特性に与える影響を、ブタ脊椎モデルとヒト献体試料を用いて調べました。
線維輪の複数層からなる試料をUStretchに取り付け、180度、0.5 mm/sの条件で剥離試験を実施しました。その結果、固定によって線維輪内部の引張特性は低下した一方、層間の剥離強度には大きな変化が認められませんでした。
この研究は、材料自体の強度と界面の接着強度を、それぞれ個別に評価する重要性を示しています。
UniVertによる剥離試験についてご相談ください
剥離試験では、装置の荷重容量だけでなく、次の条件を試料に合わせて設計する必要があります。
試料の材質、形状、厚さ
予想される剥離力
90度・180度などの剥離角度
試料幅と接着面積
剥離速度
液中または温度制御の必要性
使用するグリップや治具
評価したい力学指標
参考にする試験規格
オレンジサイエンスでは、試料と研究目的を確認したうえで、UniVertのモデル、ロードセル、治具、メディアバス、画像取得システムなどの構成をご提案します。

よくある質問
剥離試験とピーリング試験は同じですか?
一般的には同じ試験を指します。英語ではPeel testingと呼ばれ、日本語では「剥離試験」「ピーリング試験」「ピーリングテスト」「引きはがし試験」などの表現が使われます。
UniVertで90度剥離試験はできますか?
試料形状や要求される試験規格に合わせた治具とステージを構成することで、90度剥離試験に対応できます。剥離中に一定の角度を維持する必要があるため、具体的な構成については事前にご相談ください。
180度剥離試験にも対応できますか?
はい。CellScaleの旧UStretchを使用した研究では、生体組織の層間接着を評価する180度剥離試験の実績があります。現在は後継プラットフォームであるUniVertを使用した構成をご提案します。
ハイドロゲルを液中で試験できますか?
オプションのメディアバスやカスタムチャンバーを使用することで、液中および温度制御下での試験に対応できます。ハイドロゲルの水和状態を維持しながら評価したい場合に適しています。
小さな剥離力も測定できますか?
UniVertは低荷重の生体材料や軟質材料を想定して設計されています。予想される荷重に適したロードセルを選ぶことで、小さな剥離力の測定に対応できます。
接着破壊と凝集破壊を区別できますか?
荷重・変位データに加えて、画像による試験中および試験後の観察を行うことで、界面での接着破壊と材料内部での凝集破壊を判別しやすくなります。
剥離試験と引張試験を同じ装置で行えますか?
はい。UniVertは治具を交換することで、剥離試験のほか、引張、圧縮、曲げ、繰り返し試験などにも対応できます。接着界面と材料本体の力学特性を同じプラットフォームで評価できます。

製品のご紹介
CellScale社 UniVert/卓上 引張・圧縮・3点曲げ試験機
生体サンプルから工業製品の試験に

CellScale社のUniVertは、生体サンプルなどのバイオマテリアル試験に最適です。クリップやプレートなど様々なアタッチメントに対応し、生体組織、ゲル、フィルム、ファイバーなどの多様なサンプルでの強度測定に優れています。
圧縮、引張、3点曲げなどのモードがあり、ロードセルは着脱式で、4.5N~200N(*1Kgモデルは1Kgまで)での測定が可能です。また、オプションのバスを取り付けることにより、横型、縦型での液中での測定も可能です。
MicroTester
マイクロスケール圧縮強度測定装置
MicroTesterはマイクロスケール生体サンプルや微粒子の粘弾性測定に特化した粘弾性測定装置です。
1㎜以下径のビーム(カンチレバー)とプレートで直接サンプルに接触して、非破壊で約0.005~500µNの粘弾性試験が可能です。生体サンプルの試験に特化し工業用の試験機では実現できないコンパクトさ、試験レンジを実現し、精度の高い試験・解析が可能となりました。チャンバー前方に取り付けられた高解像度カメラにより、サンプルの変位の画像解析も可能です。

オレンジサイエンスが取り扱うその他の製品
オレンジサイエンスでは、測定機器の他にも伸展刺激装置・圧縮刺激装置を取り扱っております。ご不明点や取り扱い装置に関する詳細など、お気軽にお問い合わせください。
CellScale/セルスケール社
Mechano Cultureシリーズの機械的刺激培養装置はモデルにより、360度伸展、シリコンチャンバー伸展、マテリアル伸展、流体圧縮、機械的圧縮+データ測定、マテリアル伸展+データ測定が可能です。

STREX/ストレックス社
独自のシリコンチャンバーを伸展させることにより、チャンバー上の細胞に伸展刺激を与えることが可能です。顕微鏡搭載モデルは、倒立顕微鏡での伸展細胞の観察も可能です。

IonOptix/イオンオプティクス社
C-Stretchシステムはシリコンチャンバーを採用した伸展培養装置です。C-Pace EMシステムと使用することにより、伸展刺激と同時に、電気刺激を与えることも可能です。




