高ひずみ速度試験(High-rate testing)による生体材料・軟組織の力学評価
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高ひずみ速度試験(High-rate testing)は、試験片へ異なる速度で荷重を加え、材料の力学的応答がひずみ速度によってどのように変化するかを評価する試験です。
軟組織、ハイドロゲル、エラストマー、スキャフォールドなどの材料は、変形させる速度によって、剛性、強度、破断挙動、エネルギー吸収特性が変化することがあります。そのため、単一の速度で実施する引張試験や圧縮試験だけでは、実際の使用環境や生体内における材料挙動を十分に把握できない場合があります。
CellScale社のUniVertは、生体材料や軟組織を対象とした卓上型の一軸材料試験システムです。引張試験、圧縮試験、繰り返し荷重試験などに対応し、UniVert SへS2 Performance Upgradeを追加することで、より高い速度、サイクル周波数、データ取得レートが必要な高ひずみ速度試験や疲労試験にも対応できます。

高ひずみ速度試験とは
ひずみ速度とは、試験片が単位時間あたりにどの程度変形したかを示す値です。
計算時に重要なのは、アクチュエータの移動速度と試験片に生じるひずみ速度が必ずしも同じではないことです。同じ100 mm/sで試験しても、試験片の標点間距離や固定条件、滑り、局所変形によって、実際のひずみ速度は変化します。
特に軟組織や柔軟な生体材料では、クロスヘッド変位だけでなく、試験片を撮影して実際の変形を確認することが、信頼性の高い評価につながります。
なぜ高ひずみ速度試験が必要なのか
生体組織や高分子材料の多くは、時間依存性を持つ粘弾性材料です。そのため、ゆっくり変形させた場合と、短時間で変形させた場合では、異なる応力-ひずみ応答を示すことがあります。
高ひずみ速度試験によって、次のような評価が可能になります。
ひずみ速度による弾性率の変化
最大応力や破断強度の変化
破断ひずみの変化
荷重速度による剛性の変化
エネルギー吸収特性
ヒステリシスやエネルギー損失
材料の速度依存性
急速な荷重に対する損傷・破壊挙動
生体内または実使用環境に近い速度条件での応答
低速条件から高速条件まで複数のひずみ速度で試験を行うことで、材料の力学特性をより包括的に把握できます。
高ひずみ速度試験と疲労試験の違い
高ひずみ速度試験と疲労試験は、高性能なアクチュエータが必要になる点では共通していますが、主な評価目的は異なります。
試験方法 | 主な目的 | 試験内容 |
|---|---|---|
高ひずみ速度試験 | 材料応答の速度依存性を評価 | 異なる速度で荷重を加え、応力、剛性、強度、破断挙動などを比較 |
疲労試験 | 繰り返し荷重による特性変化を評価 | 試験片へ一定の振幅や波形で繰り返し荷重を加える |
粘弾性試験 | 時間依存性を評価 | クリープ、応力緩和、ランプ&ホールドなどを実施 |
単調引張・圧縮試験 | 基本的な力学特性を評価 | 一定条件で破断または設定変位まで荷重を加える |
例えば、靭帯や腱、心臓弁などは、生体内で繰り返し荷重を受けると同時に、動作条件によって負荷速度も変化します。研究目的に応じて、高ひずみ速度試験と疲労試験を組み合わせることで、より実際の環境に近い材料評価が可能になります。
高ひずみ速度試験に対応するCellScale社UniVert

UniVertは、軟組織、ハイドロゲル、エラストマー、スキャフォールド、3Dバイオプリント材料などの力学特性評価に適した卓上型の一軸材料試験システムです。
交換可能なロードセルや各種治具を使用することで、試験片の荷重範囲、形状、硬さに合わせてシステムを構成できます。引張・圧縮のほか、曲げ、剥離、穿刺、疲労、粘弾性評価など、幅広い試験へ拡張できます。
S2 Performance Upgradeによる高速試験
UniVert SにS2 Performance Upgradeを追加すると、標準構成よりもアクチュエータ速度、加速度、サイクル周波数、データ取得レートが向上します。
これにより、より高いひずみ速度での引張・圧縮試験や、高い周波数を必要とする繰り返し荷重試験に対応できます。
仕様 | UniVert S | UniVert S2構成 | UniVert 1kN |
|---|---|---|---|
最大荷重容量 | 200 N | 200 N | 1,000 N |
フォースセンサー範囲 | 0.02~200 N | 0.02~200 N | 0.02~1,000 N |
最大速度 | 20 mm/s | 100 mm/s | 20 mm/s |
最大加速度 | 1 m/s² | 2 m/s² | 1 m/s² |
最大サイクル周波数 | 2 Hz | 10 Hz | 2 Hz |
最大データ取得レート | 100 Hz | 500 Hz | 100 Hz |
※実際に達成可能なひずみ速度や周波数は、試験片の寸法、変形量、荷重、治具、試験波形などによって異なります。
UniVertが高ひずみ速度試験に適している理由
最大100 mm/sの試験速度
UniVert S2構成では、最大100 mm/sの速度制御に対応します。低速条件から高速条件まで速度を変えて試験を行うことで、材料のひずみ速度依存性を比較できます。
最大500 Hzのデータ取得
高速で進行する材料応答を評価するためには、試験速度だけでなく、十分なデータ取得レートが必要です。UniVert S2構成では、最大500 Hzでのデータ取得に対応します。
引張・圧縮の両方に対応
試験目的や材料の使用環境に合わせて、高速引張試験、高速圧縮試験、繰り返し荷重試験などを実施できます。
試験片に合わせてロードセルを選択
柔らかい生体組織から比較的高荷重の材料まで、予想荷重に応じたフォースセンサーを選択できます。測定レンジに適したセンサーを使用することで、微細な力学特性の違いを捉えやすくなります。
画像を利用したひずみ測定
軟組織やハイドロゲルでは、グリップ部での滑りや局所的な変形により、アクチュエータ変位と試験片の実ひずみが一致しない場合があります。Imaging Systemを組み合わせることで、試験片の画像を利用した非接触ひずみ測定やDIC(デジタル画像相関)によるひずみ分布の評価が可能です。
液中・温度制御下での試験
オプションのFluid Bathチャンバーを使用することで、試験片の乾燥を防ぎながら液中で測定できます。温度制御にも対応しているため、生体組織やハイドロゲルを、より生理学的な環境に近い条件で評価できます。

高ひずみ速度試験の主な対象
筋骨格系組織
腱、靭帯、筋肉、軟骨などの筋骨格系組織は、歩行、運動、転倒、衝撃などによって異なる速度の荷重を受けます。
複数のひずみ速度で引張試験や圧縮試験を行うことで、負荷速度による剛性、強度、破断挙動の変化を評価できます。
対象例
腱
靭帯
筋組織
軟骨
半月板
骨・人工骨
人工靭帯
整形外科用インプラント材料
心臓血管系組織
動脈、血管グラフト、心臓弁などは、生体内で継続的かつ周期的な荷重を受けています。
試験速度や繰り返し条件を変更することで、組織の速度依存性、弾性、耐久性、ヒステリシスなどを評価できます。
対象例
動脈
静脈
心臓弁
血管グラフト
人工血管
心血管系スキャフォールド
ハイドロゲル・スキャフォールド
ハイドロゲルや多孔質スキャフォールドは、配合、含水率、架橋密度、細孔構造などによって、速度依存的な力学応答を示す場合があります。
異なる速度条件で比較することで、静的試験だけでは確認しにくい材料特性や、実使用時の変形挙動を評価できます。
エラストマー・柔軟性ポリマー
ウェアラブルデバイス、ソフトロボティクス、医療機器に使用される柔軟材料では、変形速度による応答の変化が、耐久性や安全性に影響します。
高ひずみ速度試験と疲労試験を組み合わせることで、急速な変形と繰り返し変形の両面から材料を評価できます。
3Dバイオプリント材料・組織工学材料
バイオインクや3Dバイオプリント構造体では、材料単体の特性だけでなく、造形後の構造や細胞培養による力学特性の変化も重要です。
培養条件や時間、材料配合の異なる試験片を比較することで、組織成熟や材料設計に伴う力学特性の変化を定量化できます。
UniVertを使用した高ひずみ速度試験の流れ
1.試験目的と想定ひずみ速度を設定
生体内条件、実際の使用環境、過去の研究、規格などを参考に、必要なひずみ速度の範囲を設定します。
アクチュエータ速度ではなく、試験片の標点間距離を考慮して、目標ひずみ速度を算出することが重要です。
2.試験片に適したロードセルと治具を選択
予想される最大荷重に対して大きすぎるロードセルを選ぶと、微細な力の変化を捉えにくくなる場合があります。
試験片の硬さ、形状、表面状態、含水性なども考慮し、グリップや圧縮プラテンを選択します。
3.試験環境を統一
必要に応じて液中測定用バスを使用し、温度、溶液、試験片の含水状態を統一します。
生体材料では、試験中の乾燥や温度変化が測定結果に影響する可能性があります。
4.複数の速度条件で試験
低速、中速、高速など複数の条件を設定し、応力-ひずみ曲線、弾性率、最大応力、破断ひずみなどを比較します。
試験順序による影響を避けるため、必要に応じて試験条件のランダム化や、試験片ごとの条件分けも検討します。
5.速度依存性を解析
各ひずみ速度における測定値を比較し、材料応答とひずみ速度の関係を評価します。
画像計測を利用する場合は、クロスヘッド変位だけでなく、試験片中央部の局所ひずみやひずみ分布も解析します。

高ひずみ速度試験で確認したいポイント
再現性の高いデータを取得するためには、次の条件を事前に検討する必要があります。
目標とするひずみ速度
試験片の標点間距離
試験片の形状と寸法
最大荷重とロードセル容量
必要なアクチュエータ速度
加速度と目標速度への到達時間
データ取得レート
グリップ部での滑り
試験片中央部の実ひずみ
液中測定の必要性
温度制御の必要性
前処理・プリコンディショニング条件
試験片間のばらつき
破断まで試験するか、一定ひずみで停止するか
オレンジサイエンスでは、試験片、想定荷重、試験速度、測定環境などを確認し、研究目的に適したUniVertの構成をご提案します。
CellScale UniVertの主な特長
引張・圧縮に対応する卓上型一軸材料試験システム
UniVert S2構成では最大100 mm/sの試験速度
最大500 Hzのデータ取得レート
最大10 Hzのサイクル周波数
0.02 Nから1,000 Nまでの幅広いフォースセンサー範囲
試験片に合わせて交換できるロードセルと治具
高速引張試験・高速圧縮試験に対応
繰り返し荷重試験・疲労試験に対応
ランプ、ホールド、サイクルを組み合わせた多段階プロトコル
液中・温度制御下での測定に対応
画像による非接触ひずみ測定に対応
DICによるひずみ分布の評価に対応
ハイドロゲル、軟組織、スキャフォールド、ポリマーなど幅広い試験片に対応

高ひずみ速度試験に関するよくある質問
高ひずみ速度試験とは何ですか?
高ひずみ速度試験とは、試験片へ比較的速い速度で荷重を加え、材料の応力、剛性、強度、破断挙動などがひずみ速度によってどのように変化するかを評価する試験です。英語では「High-rate testing」または「High strain rate testing」と呼ばれます。
アクチュエータ速度とひずみ速度は同じですか?
同じではありません。ひずみ速度は、アクチュエータの移動速度だけでなく、試験片の標点間距離によって変化します。また、軟らかい試験片では、グリップ部の滑りや局所変形も実際のひずみに影響します。
UniVertでどの程度の速度まで試験できますか?
UniVert Sの標準構成は最大20 mm/s、S2 Performance Upgrade構成は最大100 mm/sです。実際に達成できるひずみ速度は、試験片寸法、変形量、治具、荷重条件、試験波形によって異なります。
高速引張試験と高速圧縮試験の両方に対応していますか?
はい。UniVertは引張試験と圧縮試験の両方に対応しています。試験片の形状や材料特性に合わせて、グリップ、圧縮プラテン、ロードセルなどを選択します。
高ひずみ速度試験と疲労試験を同じ装置で行えますか?
はい。UniVertでは、速度を変えた引張・圧縮試験に加えて、波形や振幅を設定した繰り返し荷重試験も実施できます。UniVert S2構成では、最大10 Hzのサイクル周波数に対応します。
液中で高ひずみ速度試験を実施できますか?
オプションのFluid Bathチャンバーを使用することで、液中での引張・圧縮試験が可能です。温度制御にも対応しており、生体組織やハイドロゲルの乾燥を防ぎながら測定できます。
画像から実際のひずみを測定できますか?
Scientific Imaging Systemを組み合わせることで、画像を利用した非接触ひずみ測定やDICによるひずみ分布の評価が可能です。グリップ間変位だけでは評価が難しい、不均一な変形を示す軟組織や生体材料に有効です。
衝撃試験にも使用できますか?
UniVert S2は最大100 mm/sの速度に対応する卓上型材料試験システムですが、落錘衝撃試験機やスプリット・ホプキンソン棒法のような極めて高いひずみ速度領域を対象とする装置とは異なります。必要なひずみ速度と試験片寸法から、UniVertで対応可能か事前に確認する必要があります。
高ひずみ速度試験の装置選定をご相談ください
高ひずみ速度試験では、装置の最大速度だけでなく、試験片の標点間距離、必要荷重、加速度、データ取得レート、治具、画像計測、試験環境を含めてシステムを選定することが重要です。
オレンジサイエンスでは、次のような情報をもとに、研究目的に適したCellScale UniVertの構成をご提案します。
試験片の種類
試験片の形状と寸法
想定される最大荷重
目標とするひずみ速度
引張または圧縮の試験方法
繰り返し荷重の周波数
液中・温度制御の必要性
画像計測・DICの必要性
参考にしている論文や試験規格
生体材料、軟組織、ハイドロゲル、スキャフォールドなどの高ひずみ速度試験をご検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。

製品のご紹介
CellScale社 UniVert/卓上 引張・圧縮・3点曲げ試験機
生体サンプルから工業製品の試験に

CellScale社のUniVertは、生体サンプルなどのバイオマテリアル試験に最適です。クリップやプレートなど様々なアタッチメントに対応し、生体組織、ゲル、フィルム、ファイバーなどの多様なサンプルでの強度測定に優れています。
圧縮、引張、3点曲げなどのモードがあり、ロードセルは着脱式で、4.5N~200N(*1Kgモデルは1Kgまで)での測定が可能です。また、オプションのバスを取り付けることにより、横型、縦型での液中での測定も可能です。
MicroTester
マイクロスケール圧縮強度測定装置
MicroTesterはマイクロスケール生体サンプルや微粒子の粘弾性測定に特化した粘弾性測定装置です。
1㎜以下径のビーム(カンチレバー)とプレートで直接サンプルに接触して、非破壊で約0.005~500µNの粘弾性試験が可能です。生体サンプルの試験に特化し工業用の試験機では実現できないコンパクトさ、試験レンジを実現し、精度の高い試験・解析が可能となりました。チャンバー前方に取り付けられた高解像度カメラにより、サンプルの変位の画像解析も可能です。

オレンジサイエンスが取り扱うその他の製品
オレンジサイエンスでは、測定機器の他にも伸展刺激装置・圧縮刺激装置を取り扱っております。ご不明点や取り扱い装置に関する詳細など、お気軽にお問い合わせください。
CellScale/セルスケール社
Mechano Cultureシリーズの機械的刺激培養装置はモデルにより、360度伸展、シリコンチャンバー伸展、マテリアル伸展、流体圧縮、機械的圧縮+データ測定、マテリアル伸展+データ測定が可能です。

STREX/ストレックス社
独自のシリコンチャンバーを伸展させることにより、チャンバー上の細胞に伸展刺激を与えることが可能です。顕微鏡搭載モデルは、倒立顕微鏡での伸展細胞の観察も可能です。

IonOptix/イオンオプティクス社
C-Stretchシステムはシリコンチャンバーを採用した伸展培養装置です。C-Pace EMシステムと使用することにより、伸展刺激と同時に、電気刺激を与えることも可能です。




