抗がん研究を支えるライブセルイメージング
がん細胞の増殖・細胞死・遊走・浸潤・薬剤応答を時間軸で可視化
抗がん剤候補を評価するとき、実験終了時点の細胞数や蛍光強度だけでは、「いつ応答が始まったのか」「効果が一過性か持続的か」「薬剤処理後に一部の細胞が生き残り、再び増殖したか」まで判断できないことがあります。
Etaluma社のLumascope(ルマスコープ)は、細胞培養インキュベーター内に設置できるコンパクトな倒立型蛍光顕微鏡です。がん細胞を培養環境に置いたまま、明視野・位相差・3色蛍光によるタイムラプス撮影を行い、抗がん剤添加後の細胞応答を経時的に記録できます。
2D培養細胞から3Dスフェロイド、蛍光レポーターを用いた細胞モデルまで、抗がん研究における画像ベースの薬剤評価を支援します。

抗がん研究では「最終結果」だけでなく「変化の過程」が重要です
抗がん剤候補を添加した後、がん細胞では増殖停止、形態変化、細胞周期の変化、アポトーシス、遊走能の低下など、複数の応答が異なる時間軸で進行します。
例えば、実験終了時点の生存細胞数が同じ場合でも、そこに至る過程は次のように異なる可能性があります。
早期に細胞死が誘導された
細胞は死滅せず、増殖のみが停止した
薬剤添加から一定時間後に遅れて応答した
一時的に増殖が抑制された後、再び増殖した
一部の細胞集団だけが薬剤に応答した
細胞数には大きな変化がない一方、遊走・浸潤能が低下した
ライブセルイメージングをエンドポイントアッセイや分子生物学的解析と組み合わせることで、抗がん剤候補の効果を「どの程度変化したか」だけでなく、「いつ、どのように変化したか」という時間情報とともに評価できます。
抗がん研究における主な観察・評価項目
がん細胞の増殖抑制
明視野・位相差画像から、細胞数、コンフルエンス、コロニー面積、細胞分裂の頻度などを経時的に観察します。
薬剤濃度や処理条件ごとの増殖曲線を比較することで、増殖抑制が始まるタイミングや応答の持続性を確認できます。
主な評価例:
細胞数の変化
コンフルエンスの推移
コロニーサイズ
細胞分裂頻度
薬剤処理後の再増殖
Ki67などの増殖マーカーを用いた免疫蛍光観察
アポトーシス・細胞死
対応する蛍光プローブやレポーターと組み合わせ、抗がん剤添加後のアポトーシスや細胞膜障害、細胞死の進行をタイムラプスで記録できます。
形態像と蛍光シグナルを組み合わせることで、細胞の収縮、円形化、剥離、膜透過性の変化などを時間軸に沿って確認できます。
主な評価例:
Caspase活性
Annexin Vシグナル
死細胞染色
核の凝縮や断片化
細胞膜障害
細胞死が始まるまでの時間
生細胞数と死細胞数の推移
抗がん剤が「細胞増殖を止めた」のか、「細胞死を誘導した」のかを区別するうえでも、経時観察は有用です。
がん細胞の遊走・浸潤
がん細胞の転移能や浸潤性を調べる研究では、細胞がどの方向へ、どの速度で移動したかを連続的に捉えることが重要です。
ワウンドヒーリングアッセイ、スクラッチアッセイ、マイクロ流体デバイス、スフェロイドからの細胞伸展などと組み合わせ、薬剤や阻害剤が細胞運動に与える影響を観察できます。
主な評価例:
創傷領域の閉鎖率
細胞遊走距離・速度
移動方向
細胞形態や突起の変化
スフェロイドからの細胞伸展
コラーゲンマトリックスへの浸潤
薬剤添加前後の運動性の違い
蛍光レポーターによるシグナル応答
Lumascopeは青・緑・赤の3色蛍光に対応しており、蛍光タンパク質や対応するプローブを利用した複数指標の観察が可能です。
形態情報と蛍光シグナルを同じ時間軸で取得することで、抗がん剤候補によるシグナル変化と、その後に生じる増殖停止や細胞死との関係を検討できます。
主な評価例:
遺伝子発現レポーター
細胞周期レポーター
タンパク質発現
細胞内シグナル応答
酸化ストレス
カルシウム応答
蛍光標識した複数細胞集団の追跡
使用する蛍光色素や蛍光タンパク質については、Lumascopeの励起・蛍光波長との適合性を事前に確認する必要があります。
3Dスフェロイド・がんオルガノイド
2D培養に加え、腫瘍スフェロイドやがんオルガノイドを用いた薬剤評価にもライブセルイメージングを活用できます。
明視野・位相差による全体形態の観察と蛍光情報を組み合わせることで、次のような変化を経時的に確認できます。
スフェロイドの面積・直径
形状や辺縁部の変化
増殖・縮小・崩壊の過程
生細胞・死細胞シグナルの分布
マトリックス内への細胞浸潤
薬剤処理後の回復・再増殖
条件ごとの応答差
Lumascopeは広視野蛍光顕微鏡であるため、厚みのある3D試料の深部構造を高い光学分解能で解析する用途では、共焦点顕微鏡などとの使い分けが必要です。目的がスフェロイド全体の成長、形態、蛍光分布、細胞伸展の経時観察であれば、有用な選択肢となります。
Lumascopeが抗がん研究に適している理由
1. インキュベーター内で長時間観察
Lumascopeは、細胞培養インキュベーター内に設置できるコンパクト設計です。
撮影のたびに培養容器をインキュベーターから取り出す必要がないため、温度、CO₂、湿度などの培養条件の変動を抑えながら、数時間から数日間にわたるタイムラプス撮影を行えます。
薬剤応答が始まるまでに時間を要する実験や、遅発性の細胞死、処理後の再増殖を観察したい研究に適しています。
2. 明視野・位相差・3色蛍光を組み合わせた観察
モデルおよび構成により、明視野、位相差、青・緑・赤の3色蛍光観察に対応します。
ラベルフリーの形態観察と蛍光マーカーを組み合わせることで、細胞数や形態だけでなく、タンパク質発現、シグナル応答、細胞死などを同じ実験内で追跡できます。
3. 光毒性と蛍光退色に配慮した光学設計
LED光源と高感度CMOSセンサーを採用し、比較的弱い励起光でも蛍光シグナルを取得できるよう設計されています。
長時間のライブセルイメージングでは、励起光の強度、露光時間、撮影間隔を最適化することで、光毒性や蛍光退色の影響を抑えた観察が可能になります。
4. 多点・多条件の撮影を自動化
LS850は高速自動XYステージとオートフォーカスを搭載しており、複数のウェル、複数の視野、複数の薬剤条件を自動で撮影できます。
次のような比較実験に適しています。
薬剤濃度系列の比較
単剤と併用条件の比較
複数のがん細胞株の比較
対照群と遺伝子改変群の比較
複数視野を用いたばらつきの評価
2D培養と3D培養の比較
5. 幅広い培養容器・実験系に対応
マイクロプレート、フラスコ、ディッシュ、スライド、マイクロ流体チップなど、さまざまなラボウェアに対応します。
既存の細胞培養プロトコルや薬剤評価系を大きく変更せず、ライブセルイメージングを追加しやすい構成です。
6. 取得画像を定量解析に利用可能
LumaView Proでは、画像、タイムラプス、動画、Zスタックなどのデータを取得できます。
取得した画像は、オプションのLumaquantやImageJをはじめとする画像解析環境と組み合わせ、細胞数、核数、蛍光強度、細胞追跡、コンフルエンス、ワウンド領域などの解析に利用できます。
なお、Lumascope・LumaView Proは画像取得システムです。抗がん剤候補の有効性を自動的に判定する装置ではないため、研究目的に応じたマーカー、対照群、解析方法、統計設計が必要です。
Lumascopeを用いたがん研究例
皮膚T細胞リンパ腫における細胞増殖評価
マギル大学とハーバード大学の研究者らによる皮膚T細胞リンパ腫の研究では、Ki67で染色した細胞株の免疫蛍光撮影にLumascopeが使用されました。
対照群と遺伝子発現を変化させた実験群の増殖差を画像ベースで評価し、GTSF1ががん進行に及ぼす影響の検討に活用されています。
参考:
メラノーマスフェロイドの浸潤・運動性観察
コラーゲンマトリックス内に埋め込まれたヒトメラノーマスフェロイドの研究では、個々の細胞がスフェロイドから伸展し、マトリックス内へ移動する様子がタイムラプス撮影されています。
スフェロイドの大きさだけでなく、周辺組織へ向かう細胞の動きや浸潤性を評価する研究例です。
狭い空間を移動するがん細胞のリアルタイム観察
肺がん細胞をマイクロ流体デバイス内で観察した研究では、狭い空間を移動する際の細胞形態、核変形、突起形成などがLumascopeによって連続撮影されました。
単一細胞の移動を数時間にわたって追跡することで、細胞骨格の変化と、その後のスフェロイド形成との関係が検討されています。
これらの研究例では前世代のLS720が使用されています。現行のLS850は、自動XYステージ、オートフォーカス、Zスタック、タイリングなどに対応した後継モデルです。
参考:
抗がん剤候補を評価する5ステップ
Step 1. 研究課題と評価指標を定める
最初に、増殖抑制、細胞死、遊走阻害、シグナル応答、3Dモデルの縮小など、抗がん剤候補によって確認したい変化を明確にします。
Step 2. 細胞モデルと蛍光マーカーを選定する
使用するがん細胞株、遺伝子改変細胞、共培養系、スフェロイドなどを選び、必要に応じて蛍光タンパク質や生細胞用プローブを組み合わせます。
溶媒対照、未処理対照、陽性対照、撮影のみを行う対照を用意すると、薬剤とイメージング条件の影響を区別しやすくなります。
Step 3. 培養容器と撮影位置を設定する
ディッシュ、フラスコ、マイクロプレートなどを装置にセットし、撮影するウェルや視野を設定します。
複数条件や複数視野を自動撮影する場合はLS850、限られた視野を定点観察する場合はLS820が候補になります。
Step 4. タイムラプス条件を最適化する
薬剤応答の速度に合わせて、撮影間隔、観察期間、露光時間、LED強度、フォーカス、Zスタック条件を設定します。
必要以上に撮影頻度や励起光を増やさず、十分なシグナルと細胞への負荷のバランスを取ることが重要です。
Step 5. 画像解析と別手法による検証を行う
取得画像から、細胞数、面積、蛍光強度、移動距離、応答開始時間などを解析します。
必要に応じて、プレートリーダー、フローサイトメトリー、遺伝子発現解析、タンパク質解析などの別手法と組み合わせ、画像から得られた結果を検証します。
抗がん研究に適したLumascopeモデル
LS820|定点観察・オートフォーカスモデル
特定の視野や限られた数のサンプルを長時間観察したい研究に適したモデルです。
主な用途:
ディッシュやフラスコ内の定点観察
アポトーシスのタイムラプス撮影
蛍光レポーターの経時観察
スフェロイドの成長・形態観察
オートフォーカス・Zスタック撮影
大学研究室でのライブセルイメージング導入

LS850|多点観察・自動XYステージモデル
複数のウェル、視野、細胞株、薬剤条件を自動撮影したい研究に適したモデルです。
主な用途:
薬剤濃度系列の比較
単剤・併用条件の比較
マルチウェルプレートの自動撮影
複数視野のタイムラプス観察
がん細胞の遊走・浸潤評価
スフェロイドを用いた多条件評価
タイリング・Zスタック撮影

使用する培養容器、蛍光色素、撮影箇所数、観察期間によって適切なモデルと構成が異なります。研究計画に合わせたモデル選定については、オレンジサイエンスまでご相談ください。
このような研究におすすめです
抗がん剤候補の効果を経時的に評価したい
エンドポイント測定だけでは薬剤応答を十分に説明できない
がん細胞の増殖と細胞死を区別して観察したい
アポトーシスが始まるタイミングを把握したい
がん細胞の遊走・浸潤に対する薬剤効果を調べたい
腫瘍スフェロイドやがんオルガノイドを観察したい
複数の薬剤濃度や併用条件を比較したい
細胞をインキュベーターから取り出さずに観察したい
大型で複雑なシステムを使用せず、日常的にタイムラプス撮影を行いたい
抗がん剤候補の細胞応答を、時間軸で捉える
抗がん研究では、最終的な細胞数や生存率だけでなく、効果が現れるまでの時間、応答の持続性、細胞集団ごとの違い、薬剤処理後の再増殖を把握することが重要です。
Etaluma社のLumascopeは、インキュベーター内での明視野・位相差・3色蛍光タイムラプス撮影により、がん細胞の増殖、細胞死、遊走・浸潤、蛍光シグナル、3D腫瘍モデルの変化を継続的に記録します。
デモ、価格、納期、蛍光色素との適合性、培養容器への対応については、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせの際に、以下の情報をお知らせいただくと、適切な構成をご提案しやすくなります。
使用する細胞・試料
2D培養または3D培養
使用予定の蛍光色素・蛍光タンパク質
培養容器とウェル数
観察期間と撮影間隔
撮影する視野・条件数
希望する解析項目
よくある質問
Lumascopeで抗がん剤の効果を自動判定できますか?
Lumascopeは、薬剤添加後の細胞画像を経時的に取得するシステムです。細胞数、形態、蛍光シグナル、細胞移動などを画像解析できますが、薬剤の有効性を装置単独で判定するものではありません。適切な対照群、評価指標、画像解析方法、統計設計が必要です。
アポトーシスを観察できますか?
対応する蛍光プローブやレポーターと組み合わせることで、Caspase活性、膜透過性、核形態などの変化を経時的に観察できます。使用するプローブとLumascopeの蛍光波長との適合性をご確認ください。
細胞をインキュベーターから取り出さずに観察できますか?
はい。Lumascopeは細胞培養インキュベーター内に設置できる小型顕微鏡です。細胞を培養環境に置いたまま、長時間のタイムラプス撮影を行えます。
複数の薬剤条件を比較できますか?
はい。LS850は自動XYステージを搭載しており、マルチウェルプレート上の複数条件や複数視野を自動撮影できます。薬剤濃度系列、単剤・併用条件、複数細胞株の比較などに適しています。
スフェロイドやがんオルガノイドを観察できますか?
スフェロイドやオルガノイドの全体形態、面積、成長、崩壊、蛍光分布、周辺への細胞伸展などを経時的に観察できます。深部構造の詳細な光学断層解析が必要な場合は、共焦点顕微鏡などとの使い分けをご検討ください。
生細胞だけでなく固定細胞も撮影できますか?
はい。生細胞のタイムラプス撮影に加え、固定細胞の免疫蛍光観察にも使用できます。Lumascopeを用いてKi67染色細胞を撮影したがん研究例も報告されています。
長時間撮影による光毒性が心配です
LED強度、露光時間、撮影間隔、蛍光標識条件を最適化することが重要です。LumascopeはLED光源と高感度センサーを採用し、長時間のライブセルイメージングに配慮した設計ですが、細胞種やプローブに合わせた条件検討が必要です。
※本ページで紹介する内容は研究用途を対象としたものです。疾病の診断、治療または臨床上の有効性を示すものではありません。

etaluma社 ライブセルイメージングシステム Lumascope

エタルマのLumascope(ルマスコープ)は、優れた感度、解像度、ゼロピクセルシフトを備えた、半導体光学の新しいコンセプトで設計された、倒立型小型蛍光顕微鏡です。
そのコンセプトのデザインにより、インキュベーター、ドラフトチャンバーなどの限られたスペースの中で使用でき、幅広いラボウエアでのライブセルイメージングを可能にします。
LS820

LS820 は、現行のモデルにオートフォーカス機能が追加され、低コストでのオートフォーカス3色蛍光観察が可能になりました。ソフトウエアも新しくなり、より簡単に、高画質な画像データの取得ができます。
LS850

LS850 は、現行の自動XYステージのついたLS720全自動モデルの改良版です。新たな位相差技術により、位相差照明をコンパクトにし、オプションのタレットにより、4つの対物レンズを搭載することが可能となりました。
各モデルの詳細は下記からご確認下さい。



