top of page

筋腱接合部 MTJ の力学評価と電気刺激培養

5 時間前
読了時間: 12分

筋腱接合部(MTJ:myotendinous junction)は、骨格筋と腱の境界で、筋収縮によって生じる力を腱へ伝える部位です。MTJの損傷や再生、人工筋腱組織の開発を研究する際には、接合部の形態や分子マーカーに加えて、引張に対する応答と筋細胞の収縮に伴う変形を評価することが重要です。

オレンジサイエンスでは、CellScale社の一軸引張・圧縮試験装置UniVertと、IonOptix社の筋細胞電気刺激培養システムC-Paceを取り扱っています。研究工程に合わせて、UniVertによる力学評価やC-Paceによる電気刺激をご検討いただけます。



CellScale社UniVert












筋腱接合部 MTJ とは

筋腱接合部は、筋線維の末端と腱側の細胞外マトリックスが接する領域です。ヒトMTJの超微細構造を調べた研究では、腱側の隆起と筋細胞側のくぼみが入り組んだ三次元構造が報告されています。この構造と細胞・マトリックス間の結合によって、筋と腱は力を伝達する機械的なユニットを形成します。

MTJを対象とした研究では、生体組織の構造と力学特性を調べる方法に加え、筋細胞と腱細胞の共培養や、脱細胞化マトリックスを使って接合部を再現する方法が用いられています。モデルの評価では、筋側と腱側の形成状況、境界での細胞の配置、収縮時の変形を関連づけて検討します。



筋腱接合部の研究で評価したい項目

MTJモデルの形成と機能を検討するには、分子・形態・力学・収縮応答を組み合わせて評価します。研究目的に応じて、次の項目を選択できます。

評価の視点

主な評価項目

検討できる内容

分子

COL22A1/コラーゲンXXII、paxillin、talinなど

MTJに関連する分子の発現と局在

形態

筋細胞と腱細胞の配向、接合領域の構造

筋側・腱側の組織化と境界の形成

力学

荷重と変位、剛性、最大荷重、繰り返し負荷への応答

組織・構築体の変形と損傷の生じ方

収縮応答

電気刺激に対する収縮、接合部周辺の変位・ひずみ

筋細胞の収縮と腱側の変形の関係

MTJ関連マーカーの発現と、荷重を伝える接合構造の形成は、別々に確認する必要があります。マーカーの局在を画像で確認しながら、力学試験や収縮時のひずみ解析を行うことで、構築体の特徴を複数の面から検討できます。



UniVertによる筋腱接合部と足場材料の力学評価

CellScale社のUniVertは、生体軟組織、ハイドロゲル、スキャフォールドなどを対象とする一軸の機械試験装置です。引張・圧縮試験に対応し、試料と目的に合わせてロードセル、治具、液中測定槽、イメージングシステムを選択できます。

MTJ研究では、筋腱接合部を含む組織、筋腱を模した人工構築体、接合領域に用いる足場材料の力学評価に向けて、UniVertの構成を検討できます。試料の形状と予想荷重に適した固定方法を設計することが、測定の出発点になります。


引張試験で組織全体の応答を調べる

引張試験では、試料に与えた変位に対する荷重を記録し、荷重と変位の関係から剛性や最大荷重を評価します。破断まで試験する場合には、破断時の変形量と破断位置を記録します。

MTJを含む試料では、筋側、接合部、腱側のどこに変形や破断が生じたかを観察することが重要です。つかみ部での滑りや固定による損傷も確認し、接合部そのものの応答と区別して解析します。

試料寸法を用いると、公称応力・公称ひずみの計算や、選択した範囲での弾性率の算出が可能です。ただし、筋・腱・接合部が連続する不均一な試料では、全体の測定値から接合部だけの材料特性を求めることはできません。解析では、使用した断面積、標点間距離、ひずみの計測方法を明確にします。


液中での測定と画像を用いたひずみ評価

UniVertには、液中で測定するためのFluid Bathチャンバーが用意されています。温度制御に対応する構成では、試料の水和状態と温度を管理しながら試験できます。

イメージングシステムと画像解析を組み合わせると、試料表面の変形や局所ひずみを調べることもできます。MTJ周辺への変形の集中を検討する際には、装置の変位データと試料の画像を対応づけて解析します。対象領域を撮影できるか、画像の特徴を追跡できるかを、試料と治具の選定時に確認します。


繰り返し負荷と時間に依存する応答を比較する

UniVertは、ランプ、保持、繰り返し負荷を含む試験プロトコルに対応しています。研究目的に合わせて、負荷と除荷の曲線、繰り返しに伴う剛性の変化、変形を保持した際の応力緩和などを比較できます。

人工MTJの足場材料を検討する場合には、材料の配合や線維構造、培養前後でこれらの指標を比較する実験が考えられます。試験速度、負荷範囲、温度、試料寸法をそろえることで、材料や培養条件の違いを評価しやすくなります。


UniVertによる筋腱接合部と足場材料の力学評価





C-Paceによる筋細胞の電気刺激とMTJモデルの収縮評価

IonOptix社のC-Paceは、培養中の筋細胞に、設定したプロトコルで電気刺激を与えるシステムです。現行のC-Pace EMは、C-Dishカーボン電極と組み合わせて使用し、電圧、周波数、パルス幅や複数ステップの刺激条件を設定できます。骨格筋細胞やC2C12細胞への使用実績が紹介されています。

MTJモデルで筋細胞の収縮を誘導できれば、筋側の短縮と、接合部・腱側に生じる変形を対応づけて調べる実験を設計できます。顕微鏡動画と画像解析を用いることで、収縮に伴う変位やひずみを評価する方法が報告されています。

培養中の電気刺激条件を比較する研究では、細胞の種類、分化段階、電極配置に合わせて条件を検討します。刺激頻度や休止時間を変える際には、収縮応答と細胞生存性を確認し、非刺激群と比較します。

C-Paceは電気刺激を与える装置です。収縮の観察やひずみ解析には顕微鏡・解析手段が、収縮力を数値として測るには、対応する力計測系が別途必要です。

機械的な伸展刺激も培養中に与えたい場合には、C-Pace EMで制御するC-Stretchとの組み合わせも検討できます。電気刺激のみの構成と、伸展刺激を加える構成は、培養モデルと目的に合わせて選択します。








筋腱接合部と腱組織工学の研究事例

ヒトMTJモデルでのC-PACEによる収縮誘導

Josvaiらは、ヒト胚性幹細胞由来の骨格筋細胞とヒト初代腱細胞を空間的に配置した二次元共培養モデルを報告しています。収縮解析には、C-PACE Cell Culture Stimulatorと6ウェル用C-Dishを使用しました。

研究では、電気刺激による筋細胞の短縮と、接合部の腱細胞側に生じる引張ひずみをデジタル画像相関法(DIC)で解析しています。筋側の収縮と腱側の変形が対応する結果は、両者の機械的結合を検討する際の参考になります。この事例は、電気刺激を収縮解析に用いた実績であり、長期刺激によるMTJ形成促進を実証したものではありません。



腱細胞を含むスキャフォールドのUniVertによる引張評価

MathewとAmsdenは、線維構造の異なるスキャフォールドにウサギ腱細胞を播種し、静置培養と間欠的な動的培養を比較した研究を報告しています。CellScaleの使用機器紹介では、培養後の構築体を含む引張特性の評価にUniVert、動的な機械刺激にはMechanoCulture T6を使用したことが示されています。

この研究は腱の組織工学を対象としており、MTJそのものを再現したモデルではありません。培養時の機械刺激と培養後の力学試験を別工程として設計する際に参考になる事例です。




脱細胞化MTJマトリックスと繰り返し引張刺激

Iwasakiらは、ヒツジMTJ由来の脱細胞化マトリックスにヒト間葉系幹細胞を播種し、繰り返しひずみの影響を検討しました。マトリックス上ではMTJ関連マーカーの発現が認められましたが、刺激による変化はマーカーや筋系・腱系の分化指標によって異なりました。

この事例は、足場材料と刺激条件を組み合わせて検討する必要性を示しています。使用されたCellScale社の装置はMechanoCulture B1であり、UniVertの使用実績とは区別されます。



UniVertとC-Paceを用いた実験設計の進め方

以下は、両製品の機能をMTJ研究の工程に当てはめた実験設計例です。対象試料に応じて、測定構成と評価項目を調整します。


1. 研究目的と対象試料を決める

生体由来MTJの力学特性、人工構築体の接合強度、筋細胞の収縮応答など、検証したい項目を定めます。生体組織、二次元共培養モデル、三次元構築体では、使用できる固定方法と評価手段が異なります。


2. 足場材料と対照群を設計する

材料の組成、線維の配向、細胞の種類と配置、培養期間を整理します。非刺激群、刺激群、材料条件の異なる群など、研究仮説に必要な比較群を設定します。


3. C-Paceで電気刺激条件を検討する

筋細胞の収縮を確認しながら、周波数、パルス幅、電圧、刺激・休止時間を検討します。電極間隔や培地条件も記録し、刺激に伴う細胞の状態変化を評価します。


4. UniVertで力学特性を評価する

試料に適したロードセルと治具を選び、引張試験や繰り返し負荷試験を行います。破断試験と組織・分子解析を比較する場合には、同一条件で作製した試料を各評価に割り当てます。


5. 分子と形態の結果を対応づける

力学試験と収縮解析の結果を、MTJ関連マーカーの発現・局在や接合領域の形態と比較します。材料条件、刺激条件、培養期間が、どの評価項目に影響したかを整理します。

比較項目

UniVert

C-Pace

主な役割

外部から荷重を与えて力学応答を測る

培養中の筋細胞に電気刺激を与える

主な対象

固定可能な組織、足場材料、人工構築体

電極と培養容器に適合する筋細胞・培養モデル

取得・設定する情報

荷重、変位、試験プロトコル

電圧、周波数、パルス幅、刺激シーケンス

追加する評価手段

寸法測定、画像を用いた局所ひずみ解析

顕微鏡動画、画像解析、必要に応じて力計測系

両製品を、電気刺激による培養・収縮評価と、その後の力学試験という工程で検討できます。直接接続した同時測定を計画する場合には、試料固定、電極、測定槽、制御・同期方法を含めた個別の構成確認が必要です。



筋腱接合部 MTJ の研究に関するFAQ

UniVertで筋腱接合部だけの力学特性を測れますか

UniVertの引張試験では、固定した試料全体の荷重と変位を取得します。MTJだけの局所応答を調べるには、試料の切り出し方や標点の設定、接合部を撮影する画像解析を組み合わせた設計が必要です。不均一な試料では、全体の変位と局所ひずみを区別して解析します。


C-Paceは腱細胞を直接収縮させる装置ですか

C-Paceは、筋細胞などへの電気刺激に用いるシステムです。MTJ共培養モデルでは、刺激された筋細胞の収縮に伴い、機械的に結合した腱細胞側が変形するかを観察できます。腱細胞側に生じたひずみと、電気刺激への直接的な収縮応答は区別します。


文献に記載された刺激条件をそのまま使えますか

文献の条件は検討の出発点になりますが、細胞の種類、分化段階、培養モデル、電極間隔、培地などによって応答が変わります。ご自身の実験系で収縮と細胞生存性を確認し、非刺激群と比較して条件を設定します。


人工MTJの足場材料も評価できますか

UniVertは、ハイドロゲルやスキャフォールドなどの力学試験に対応しています。MTJ用の材料を評価する際には、試料寸法、予想荷重、固定方法、液中測定の必要性に合わせて構成を選びます。細胞を含む構築体では、材料単独と培養後の試料を比較する設計も考えられます。



筋腱接合部の力学評価と電気刺激培養のご相談

筋腱接合部を含む組織の引張試験、人工MTJの足場材料評価、筋細胞への電気刺激など、研究目的に合わせた装置構成についてオレンジサイエンスへご相談ください。

お問い合わせの際に、対象試料、試料寸法、予想荷重、培養容器、評価したい指標をお知らせいただくと、UniVertのロードセル・治具やC-Paceの電極・刺激構成を具体的に検討できます。




CellScale社UniVert











参考文献




製品のご紹介


CellScale社 UniVert/卓上 引張・圧縮・3点曲げ試験機

生体サンプルから工業製品の試験に



UniVert



 CellScale社のUniVertは、生体サンプルなどのバイオマテリアル試験に最適です。クリップやプレートなど様々なアタッチメントに対応し、生体組織、ゲル、フィルム、ファイバーなどの多様なサンプルでの強度測定に優れています。


 圧縮、引張、3点曲げなどのモードがあり、ロードセルは着脱式で、0.02N~1000N(*モデル・組み合わせによる)での測定が可能です。また、オプションのバスを取り付けることにより、横型、縦型での液中での測定も可能です。







MicroTester

マイクロスケール圧縮強度測定装置

MicroTesterはマイクロスケール生体サンプルや微粒子の粘弾性測定に特化した粘弾性測定装置です。

 

1㎜以下径のビーム(カンチレバー)とプレートで直接サンプルに接触して、非破壊で約0.005~500µNの粘弾性試験が可能です。生体サンプルの試験に特化し工業用の試験機では実現できないコンパクトさ、試験レンジを実現し、精度の高い試験・解析が可能となりました。チャンバー前方に取り付けられた高解像度カメラにより、サンプルの変位の画像解析も可能です。



MicroTester





オレンジサイエンスが取り扱うその他の製品


オレンジサイエンスでは、測定機器の他にも伸展刺激装置・圧縮刺激装置を取り扱っております。ご不明点や取り扱い装置に関する詳細など、お気軽にお問い合わせください。


CellScale/セルスケール社

​Mechano Cultureシリーズの機械的刺激培養装置はモデルにより、360度伸展、シリコンチャンバー伸展、マテリアル伸展、流体圧縮、機械的圧縮+データ測定、マテリアル伸展+データ測定が可能です。



Mechano Cultureシリーズ




STREX/ストレックス社

​独自のシリコンチャンバーを伸展させることにより、チャンバー上の細胞に伸展刺激を与えることが可能です。顕微鏡搭載モデルは、倒立顕微鏡での伸展細胞の観察も可能です。



STBシリーズ




IonOptix/イオンオプティクス社

​C-Stretchシステムはシリコンチャンバーを採用した伸展培養装置です。C-Pace EMシステムと使用することにより、伸展刺激と同時に、電気刺激を与えることも可能です。



IonOptix ​C-Stretchシステム




関連コンテンツ



オレンジサイエンスでは、その他にも、様々な装置を取り扱っております。




オレンジサイエンス

bottom of page