top of page

脂肪組織・脂肪細胞研究のための組織切片作製

5 時間前
読了時間: 13分

脂肪組織は、単に脂質を蓄える組織ではありません。エネルギー代謝や内分泌機能に関わる脂肪細胞に加え、免疫細胞、間質細胞、血管系の細胞、細胞外マトリックスなどから構成される複雑な組織です。肥満、糖尿病、インスリン抵抗性、慢性炎症をはじめとする病態を理解するには、脂肪細胞だけでなく、周囲の細胞や組織構造を含めて評価することが重要です。

脂肪組織から厚みのそろった組織切片を作製できれば、組織内の構造や細胞間相互作用を維持した状態で、イメージング、組織学的解析、免疫染色、スライス培養、薬剤応答評価などを行いやすくなります。

Precisionary社のCompresstome®は、試料を低融点アガロースで包埋し、圧縮技術と振動ブレードを組み合わせて切片を作製する振動ミクロトームです。柔らかく変形しやすい脂肪組織の切片作製において、試料を周囲から支持しながら切削できる方法を提供します。


脂肪組織の由来、生組織・固定組織、希望する切片厚、切片作製後の解析方法に合わせて、機種や条件をご案内します。


Compresstome VF-510-0Z





脂肪組織研究で組織切片を用いる意義

脂肪細胞だけでは捉えにくい組織環境を観察

脂肪組織では、脂肪細胞と免疫細胞、間質細胞、血管、細胞外マトリックスが相互に関係しています。特に肥満に伴う脂肪組織のリモデリングでは、脂肪細胞の肥大だけでなく、マクロファージなどの免疫細胞の集積、毛細血管密度の変化、線維芽細胞の活性化などが関わります。

単離した脂肪細胞や細胞株は、特定の細胞機能を詳しく解析するのに適しています。一方、組織切片は、複数の細胞種と組織構造を含む試料を用いて、より生体内に近い環境で反応を観察したい場合に有用です。


研究モデル

主な利点

検討すべき点

脂肪細胞株・単離脂肪細胞

条件を制御しやすく、特定の細胞応答を解析しやすい

組織構造や他の細胞種との相互作用を再現しにくい

脂肪組織片・エクスプラント

比較的簡便に組織環境を維持できる

試料の形状や大きさがそろわないと、培地や薬剤の拡散条件にばらつきが生じやすい

厚みをそろえた脂肪組織切片

組織構造を保ちながら、切片間で条件を比較しやすい

組織の由来や目的に応じた切片厚・切削条件・培養条件の最適化が必要



脂肪組織の切片作製で生じやすい課題

脂肪組織は柔らかく、脂質を多く含むため、切削時に試料が動く、押しつぶされる、裂ける、均一な厚みにそろわないといった問題が起こることがあります。生組織を用いる場合は、形態だけでなく、細胞生存性や代謝機能への影響も考慮しなければなりません。


主な検討項目は次のとおりです。

  • 試料採取から切片作製までの時間と保存温度

  • 皮下脂肪、内臓脂肪など採取部位による組織特性の違い

  • ヒト、マウス、ラットなど動物種による違い

  • 生組織か固定組織か

  • 試料の大きさ、向き、支持方法

  • 目的に適した切片厚

  • 切片作製後の培養、染色、イメージング条件


再現性の高い実験を行うには、切片厚だけでなく、試料の前処理から切片作製後の評価までを一連のワークフローとして検討する必要があります。



Compresstome®による脂肪組織の切片作製

低融点アガロースで柔らかい試料を支持

Compresstome®では、試料を低融点アガロースで包埋してから切片を作製します。アガロースが試料の周囲を支えるため、柔らかい組織でも切削位置を安定させやすくなります。


切削位置で試料を安定させる圧縮技術

アガロース包埋した試料は、プランジャーによってステンレス製の試料チューブ内を進みます。試料チューブ先端の圧縮リップで試料を穏やかに支持し、その位置を振動ブレードで切削するのがCompresstome®の特長です。この構造によって切削中の試料の動きや変形を抑え、均一で表面の滑らかな切片作製を支援します。


生組織と固定組織の両方に対応

推奨モデルのVF-510-0Zは、生組織と固定組織の切片作製に対応する全自動モデルです。切片を1枚ずつ作製するSingleモードと連続切削を行うContinuousモードを選択でき、切片厚をデジタルで設定できます。


Auto Zero-Zによる上下方向の振動抑制

VF-510-0Zには、ブレードのZ軸方向の振動を抑えるAuto Zero-Z技術が搭載されています。切削方向以外の不要な動きを抑えることで、組織構造と切片表面へのダメージを抑えた切片作製を支援します。



脂肪組織研究の推奨モデル:VF-510-0Z


「Compresstome®(コンプレストーム)」

VF-510-0Zは、Precisionary社の全自動Compresstome®です。精密切断組織スライスや器官型スライス培養を含む幅広い用途向けのモデルです。


項目

VF-510-0Zの仕様

切削方式

全自動、Single/Continuousモード

切片厚設定

デジタル自動設定

切片厚設定範囲

1~999 µm

マイクロメーター分解能

1 µm

ブレード振動周波数

0~65 Hz、調整可能

試料送り速度

0~4 mm/s、調整可能

対応試料径

15.5 mm、20 mm

最大試料長

25 mm

本体寸法

330 × 255 × 195 mm

本体重量

6 kg

※実際に作製できる切片厚や適切な条件は、脂肪組織の種類、試料状態、包埋条件、使用ブレード、下流の解析方法などによって異なります。






脂肪組織切片を活用できる研究分野

肥満・糖尿病・インスリン抵抗性研究

脂肪細胞の肥大、インスリンシグナル、脂質代謝、炎症性変化などを、組織環境を含めて評価する研究に利用できます。異なるBMI、病態、採取部位に由来するヒト脂肪組織を比較する研究モデルとしても検討できます。


脂肪細胞と免疫細胞の相互作用

脂肪組織にはマクロファージをはじめとする免疫細胞が存在します。組織切片を用いることで、脂肪細胞と免疫細胞の位置関係、炎症性変化、crown-like structureなどを対象とした組織学的解析やイメージングへの展開が可能です。


薬剤応答・毒性・代謝評価

厚みや大きさをそろえた組織切片は、対照群と処置群を比較するex vivo試験の標準化に役立ちます。候補化合物、サイトカイン、ホルモンなどに対する組織レベルの応答評価に利用できます。


組織学・免疫染色・イメージング

脂肪細胞の形態、脂肪滴関連タンパク質、免疫細胞マーカー、増殖・細胞死マーカーなどを対象とした解析に利用できます。研究目的に応じて、生組織のライブイメージング、固定後の免疫蛍光染色、組織学的評価などへつなげられます。


白色・褐色・ベージュ脂肪組織の研究

脂肪組織の種類や採取部位によって、細胞組成、代謝機能、細胞外マトリックスは異なります。複数の脂肪組織を同じ切片作製条件で比較するためのワークフロー構築にも活用できます。



脂肪組織切片を作製する基本ワークフロー

1. 試料と実験目的を明確にする

動物種、採取部位、生組織・固定組織、必要な試料数、切片作製後の解析方法を整理します。生組織では、採取から切片作製までの時間や保存条件も記録します。


2. 試料をトリミングし、切削方向を決める

試料チューブに収まる大きさに整え、観察したい構造や解析目的に応じて試料の向きを決めます。


3. 低融点アガロースで包埋する

試料周囲の気泡を避けながらアガロースで包埋し、チリングブロックを用いて速やかにゲル化させます。アガロース濃度は組織の硬さや切片の取り扱い方法に応じて調整します。


4. 切削条件を最適化して切片を作製する

目標厚、試料送り速度、振動周波数、ブレードの種類などを設定します。初回は複数条件を比較し、厚みの均一性、表面状態、形態、細胞生存性を確認します。


5. 目的の解析へ移行する

作製した切片を、スライス培養、ライブイメージング、組織染色、免疫蛍光、分子解析、薬剤応答評価などに使用します。培養を行う場合は、切片厚に応じた酸素・栄養供給も検討します。


※上記は一般的な流れであり、特定の試料に対する検証済みプロトコルではありません。研究目的と試料に合わせた条件最適化が必要です。



脂肪組織の切片厚はどのように決めるべきか

適切な切片厚は、観察対象と下流解析によって変わります。薄い切片は試薬や酸素が届きやすく、顕微鏡観察にも適していますが、柔らかい脂肪組織では取り扱いが難しくなる場合があります。厚い切片は組織構造を保持しやすい一方、培養時の酸素・栄養供給や、染色試薬の浸透を検討する必要があります。

前述のヒト脂肪組織スライス培養研究では、350、500、750 µmを比較し、500 µmが採用されました。また、Precisionary社Webサイトでは旧モデルVF-300-0Zを用いて生きた脂肪組織を切片化するデモ動画が公開されており、その例では250 µm以上の切片作製を示しています。


これらの数値は、すべての試料に共通する推奨値ではありません。脂肪組織の由来、試料状態、評価方法に合わせ、複数の厚みを比較して決定することが重要です。



よくある質問

脂肪組織と脂肪細胞は同じものですか?

同じではありません。脂肪細胞は脂肪組織を構成する主要な細胞ですが、脂肪組織には免疫細胞、間質細胞、血管系の細胞、細胞外マトリックスなども含まれます。組織切片を用いると、脂肪細胞と周囲の組織環境を同時に観察できます。


Compresstome®で生の脂肪組織を切片化できますか?

Compresstome®は生組織と固定組織の両方を対象とする振動ミクロトームです。Precisionary社は脂肪組織の生切片作製デモも公開しています。ただし、細胞生存性や切片品質は、試料採取後の時間、温度、アガロース包埋、切削条件などの影響を受けるため、目的に合わせた検証が必要です。


脂肪組織にはどの切片厚が適していますか?

一律の最適値はありません。スライス培養、ライブイメージング、免疫染色、分子解析など、目的に応じて必要な厚みが異なります。既報のヒト脂肪組織スライス培養では500 µmが使用されていますが、試料と実験系に合わせて複数条件を比較してください。


アガロース包埋はなぜ必要ですか?

アガロースは、柔らかい試料を周囲から支持し、切削時の動きや変形を抑える役割を持ちます。Compresstome®では、アガロース包埋と試料チューブ先端の圧縮構造を組み合わせて、切削位置を安定させます。


アガロースは切片作製後に外せますか?

目的に応じて、切片からアガロースを外す方法と、切片の周囲に残して取り扱いを容易にする方法があります。適切なアガロース濃度や取り扱いは、試料の硬さや下流解析に合わせて検討します。


ヒト脂肪組織にも使用できますか?

VF-510-0Zはヒトを含む複数の動物種の生組織・固定組織向けとして案内されています。実際の使用にあたっては、試料径、試料長、組織の状態、必要な切片厚を確認してください。また、ヒト試料の取得・使用には、所属機関の倫理審査や関連規程に従う必要があります。


作製した脂肪組織切片はどのような解析に利用できますか?

スライス培養、ライブイメージング、組織学的解析、免疫蛍光染色、薬剤応答評価、代謝・シグナル解析などへの利用が考えられます。必要な切片厚や前処理は解析方法によって異なります。


試料に適した機種や条件について相談できますか?

はい。脂肪組織の由来、試料サイズ、生組織・固定組織、希望する切片厚、切片作製後の解析内容をお知らせください。オレンジサイエンスが機種選定と条件検討をサポートします。



脂肪組織・脂肪細胞研究の切片作製をご相談ください

脂肪組織の切片品質は、試料の性状だけでなく、前処理、支持方法、切片厚、切削条件、切片作製後の取り扱いによって変わります。


次の情報をお知らせいただくと、より具体的にご案内できます。

  • 対象:ヒト、マウス、ラットなど

  • 脂肪組織の採取部位

  • 生組織または固定組織

  • 試料のおおよその大きさ

  • 希望する切片厚

  • スライス培養、イメージング、染色などの使用目的

  • 現在の切片作製で生じている課題



Compresstome VF-510-0Z






組織切片作製ソリューション


Precisionary社のビブラトームを使用して、組織研究用の健康で生存可能な組織スライスを作成します。



「Compresstome®(コンプレストーム)」

組織研究のための高品質で生存可能な組織スライスの入手

Precisionary Instruments 社のビブラトームは、サンプルの生理学的完全性を維持する正確で生存可能な組織切片を作成するように設計されており、下流の解析において最も信頼性の高いデータを確保します。


高精度ビブラトーム

Compresstome® は、サンプルの生存性と健全性を保ちながら、薄い組織スライスを作成するように設計されており、脳や肺の組織研究に理想的です。この完全自動システムは、研究で正確な結果を得るために重要な、組織切片の生理的完全性を確実に維持します。


VF-510-0Z

VF-510-0Zは特許取得済みの圧縮技術によりビビリ・チャタリングなしで切片を作製し、急性組織上の多くの生存細胞を維持。良質な実験結果を保証します。


Compresstome VF-510-0Z




VF-800-0Z

VF-800-0Z は、市場で唯一の大口径ビブラトーム組織切片作成スライサーです。ハイスループットな組織切片作製(最大20サンプル以上の同時切片作製)と大きな組織サンプルサイズ(臓器全体、肺葉など)に対応するように設計されています。



Compresstome VF-800-0Z





アプリケーション


実験別


臓器


動物モデル



関連コンテンツ





Compresstome©ビブラトームの利点


アガロース包埋

アガロース包埋とは、Compresstome©振動型マイクロトームで組織切片を切り出す前に、組織試料をアガロース溶液で包埋することです。切片作製にかかる時間はほんのわずかで、より健康的で滑らかな組織スライドを作製できます。


Auto Zero-Z®テクノロジー

振動ヘッドは、Z軸方向の振動をなくすように正確に調整されています。Auto Zero-Z®テクノロジーは、生きた組織サンプルの表面細胞へのダメージを軽減し、薄切片のチャタリングを低減してイメージング結果を向上させます。


豊富なアプリケーション例

Precisionary社は、20年近くにわたり組織スライス装置を専門に扱ってきた会社です。免疫組織学や組織切片の培養、電気生理学や植物研究など、幅広いアプリケーションと引用実績があります。








関連製品


flexiVent

肺機能測定・解析

flexiVent肺機能測定・解析ソリューションは、in vivo呼吸力学測定のゴールドスタンダードとして広く知られています。従来の肺換気の抵抗とコンプライアンス力学を超え、中枢気道、末端気道、実質の力学的特性に関する重要な詳細を測定・解析します。

flexiVentは実験条件を精密にコントロールすることで、最高の感度と再現性を実現しています。

オレンジサイエンスはemka TECHNOLOGIESの日本総代理店であり、日本国内においてemka TECHNOLOGIES社との唯一の取引窓口です。



flexiVent




vivoFlow+

呼吸機能解析

vivoFlow+は無拘束での呼吸機能解析装置です。全身、ヘッドアウト、ダブルチャンバーでの呼吸機能解析を提供します。


プレチスモグラフィは、意識のある自発呼吸の実験室被験者の肺機能を研究するための標準的な方法です。気圧脈波法では、被験者が呼吸している間、薬物やその他の刺激にさらされる前後に生じる流量と圧力の変化を測定します。さまざまな被験者のサイズやタイプに容易に適応でき、被験者を連続した実験日に何時間も研究する縦断的研究によく使用されます。



vivoFlow+




Etaluma Lumascope

インキュベーター内で使用できる3色蛍光ライブセルイメージング蛍光顕微鏡

EtalumaのLumascope(ルマスコープ)は、優れた感度、解像度、ゼロピクセルシフトを備えた、半導体光学の新しいコンセプトで設計された、倒立型小型蛍光顕微鏡です。日々顕微鏡を使用する科学者によって考案、設計され、そのコンセプトデザインにより、インキュベーター、ドラフトチャンバーなどの限られたスペースの中で使用でき、幅広いラボウエアでのライブセルイメージングを可能にします。


多点観察モデル、定点観察モデルがあり、様々な観察シーンに対応できます。



Etaluma Lumascope





その他の製品は下記からご覧ください




オレンジサイエンス

bottom of page