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マウス心臓の切片作製

10月19日
読了時間: 14分

研究目的に合わせた組織切片とコンプレストーム


マウス心臓の切片作製では、観察したい部位や解析目的に合わせて、組織の処理方法、切断方向、切片厚を選ぶことが重要です。心筋細胞や血管の配置を調べる固定組織切片と、膜電位・カルシウム動態を測定する生組織スライスでは、求められる条件が異なります。

Precisionary社のCompresstome®(コンプレストーム)は、アガロースで支持した試料を振動ブレードで切断する振動ミクロトームです。固定心臓の組織構造解析から生心筋スライスの研究まで、目的に応じた切片作製を支援します。


Compresstome VF-510-0Z




マウス心臓の組織切片は、解析目的から作製方法を選ぶ

「心臓の切片」といっても、薄い組織切片を用いた病理・形態観察と、厚みのある切片を用いた三次元観察や機能解析では、適した試料処理や装置が変わります。切片作製に入る前に、何を測定するかを整理しましょう。

解析目的

試料・切片の考え方

主に検討する作製方法

H&E染色などによる形態観察

観察目的に合う薄切組織を用意する

パラフィン包埋後のロータリーミクロトーム、または凍結切片を作製するクライオスタット

免疫染色・共焦点イメージング・三次元構造解析

細胞や血管の立体的な配置を観察する固定厚切片を用意する

振動ミクロトームによる切片作製。必要に応じて組織透明化と組み合わせる

膜電位・Ca²⁺動態などの機能解析

生存性と測定機能を保った生組織スライスを用意する

振動ミクロトームと、目的に適した試料保持・回復・測定条件を組み合わせる

Precisionary社は、心臓研究向けに振動ミクロトーム、ロータリーミクロトーム、クライオスタットを用途別に案内しています。コンプレストームは、とくに生組織スライスや固定厚切片を検討する際の選択肢です。



マウス心臓の切片では「部位」と「切断方向」をそろえる

左心室・右心室・心室中隔を区別する

マウス心臓の心室切片には、左心室、右心室、心室中隔などの異なる領域が含まれます。また、心尖部から心基部に向かって、切片に現れる形や構造が変化します。比較実験では、切片厚だけでなく、どの高さ・どの領域を観察したかもそろえて記録することが大切です。遺伝子改変群や薬剤処理群を比較する場合も、目的領域の対応を確認してから画像や測定値を比較します。


横断切片・長軸切片・接線方向の切片を使い分ける

切断方向

検討する観察・解析

条件設計のポイント

横断切片・短軸切片

心室断面の領域比較、心尖部から心基部への分布の解析

心臓長軸に対する切断角度と、切片の採取位置を記録する

長軸切片

心臓の長軸方向に沿う心筋細胞の配向や組織の連続性の観察

目的の心室壁や中隔を含む切断面を決める

心外膜に対する接線方向の切片

局所の心筋細胞配向を意識した心筋スライス研究

局所的な細胞配向と解析目的に合わせて切断面を検討する

マウス心室の領域別解析では横断切片が、細胞配向の三次元解析では短軸・長軸の切片が使われています。切断方向は研究上の問いに合わせて選びます。

心尖部から連続切片を採取する場合は、切片番号に加えて、乳頭筋などの解剖学的な目印を記録すると、解析位置を確認しやすくなります。心臓の大きさが異なる試料間では、同じ切片番号だけで同じ解剖学的位置と判断せず、実際の構造も確認しましょう。



コンプレストームがマウス心臓の切片作製を支援する仕組み

アガロース包埋と圧縮機構で試料を支持

コンプレストームは、専用試料チューブ内で組織をアガロースに包埋します。試料の周囲を支持し、先端がテーパー状になったチューブから送り出す際の圧縮機構と組み合わせることで、切断時の移動や変形を抑える設計です。

心臓のように内腔を持つ試料では、外側の包埋に加えて、内腔の支持状態も確認します。目的や試料処理に応じてアガロースなどによる内腔支持を検討することが、切断時の安定性を考えるポイントになります。


Auto Zero-Z®で不要な上下動を抑制

Auto Zero-Z®は、ブレードのZ軸方向の振動を抑えるPrecisionary社の技術です。切片表面の細胞損傷やチャタリングを低減することを目的としています。

チャタリングは、切片表面に周期的な筋状の凹凸が生じる現象です。画像解析に使う切片を作製する際は、厚さに加えて、表面状態や組織の連続性も確認します。


VF-510-0Zは厚さ調整と切断を自動化

VF-510-0Zは自動のデジタル厚さ調整を備え、単回切断と連続切断を選択できます。心臓の位置関係を追いながら複数の切片を採取したい研究や、反復する切片作製の操作を整理したい場合に検討できます。

厚さ設定の分解能は1 µmです。ただし、設定分解能と、特定のマウス心臓試料から良好に作製できる切片厚は異なります。実際の切片品質は試料状態や包埋・切断条件を含めて確認します。



マウス心臓の切片作製を設計する5つのステップ

以下は、条件検討の流れです。具体的な緩衝液、温度、固定、包埋濃度、回復条件は、使用する装置と研究プロトコルに合わせて設定します。


1.試料情報と評価項目を決める

マウスの系統・週齢・性別・疾患モデル、観察領域、固定組織か生組織かを整理します。免疫染色、共焦点イメージング、膜電位・Ca²⁺測定など、下流の解析から必要な切片条件を決めます。


2.切断面と採取位置の基準を決める

横断・長軸などの切断方向を決め、試料の向きやトリミング位置を記録します。連続切片を利用する場合は、切断開始位置、切片番号、解析に使う範囲をあらかじめ整理しておきます。


3.目的の方向を保持して包埋する

専用試料チューブ内でアガロース包埋し、目的の切断面を保持します。組織周囲の支持、気泡、内腔の状態を確認します。生組織では、包埋時の温度や準備にかかる時間にも配慮します。


4.試験切片で品質を確認する

ブレードの状態、切断速度、振動条件を調整し、切片の裂け、表面の凹凸、厚さの不均一、組織の変形を確認します。装置の数値設定だけでなく、実際に得られた切片が解析に適しているかを評価します。


5.位置情報とともに回収し、目的の解析へ進む

切片番号と採取位置が対応するように回収します。固定切片は染色・画像解析へ、生組織スライスは目的に合う回復・保持条件を経て機能解析へ進めます。

画像解析では観察領域や撮影条件を、生組織の測定では切断後の経過時間や測定条件をそろえることも検討します。同じ心臓から得た複数切片と、異なる個体から得た独立した試料は区別して実験を計画します。



マウス心臓の切片厚は何µmに設定する?

マウス心臓の組織切片に、すべての実験で共通する最適な厚さはありません。文献では、次のような条件が使われています。

試料・解析

文献で使用された切片厚

装置・参考文献

固定マウス心臓のホールマウント切片

100 µm

固定・透明化したマウス心臓の細胞配向解析

約300 µm

これらは各研究における条件例です。固定組織の厚切片では染色の浸透や観察深度を、生組織では酸素供給や目的の機能が維持されるかを考慮して条件を検討します。「薄いほど良い」「同じ厚さなら同じ品質」とは限りません。

論文で使用された旧モデルVF-300と現行のVF-510-0Zでは装置仕様が異なります。他機種を含む文献の厚さや切断設定は参考情報として扱い、使用機種と試料に合わせて確認してください。



コンプレストームを用いたマウス心臓の研究例

心筋細胞配向を共焦点画像から三次元解析

Dileepらの研究では、固定したマウス心臓に組織透明化を行い、Compresstome® VF-300を用いて短軸・長軸方向の切片を作製しています。WGA蛍光染色と共焦点顕微鏡、画像解析を組み合わせ、心室壁の心筋細胞配向を三次元的に解析しました。

厚切片を用いて心筋細胞の配置を調べる際に、切断面、試料処理、染色、画像解析を一体で設計した研究例です。


虚血後の心臓血管内皮応答を調べる組織解析

Liらの研究では、心筋梗塞モデルを含むマウス心臓を固定し、アガロース包埋後にCompresstome® VF-300で100 µmのホールマウント切片を作製しています。一部の切片はOCTに再包埋し、クライオスタットで10 µmに再切片化しています。

解析目的に応じて振動ミクロトームと凍結切片作製を組み合わせた例であり、組織切片をどの段階で、どの厚さにするかを考える際の参考になります。



マウス心臓の切片作製で起こりやすい課題

課題

主に確認する項目

切片が裂ける、試料が引き出される

ブレードの欠け・摩耗、切断速度、試料の支持状態

切片厚がそろわない、表面に凹凸が出る

組織の硬さとアガロース濃度の組み合わせ、速度・振動条件

内腔周辺が変形する、切断時に動く

包埋状態、内腔の支持、気泡や空隙の有無

切片は作製できても解析結果が安定しない

採取部位・方向の対応、染色や撮影条件、生組織の保持・測定条件

Precisionary社のガイドでは、切片の不均一に対して、包埋条件、ブレード、切断速度・振動条件の見直しが案内されています。条件を変更する場合は、変更点と切片の状態を記録し、どの要因が品質に関係しているかを確認します。



マウス心臓研究に合わせたコンプレストームのモデル選定

モデル

操作上の特徴

検討する場面

VF-510-0Z

全自動。自動の厚さ調整、単回・連続切断、Auto Zero-Z®に対応

生組織と固定組織の両方を扱う研究、連続切片作製や反復操作の自動化を検討する場合

VF-210-0Z

半自動。厚さ送りは手動

手動で切片厚を調整しながら、研究規模や操作方法に合う構成を検討する場合

モデルは試料サイズ、目標厚、作製枚数、下流解析に合わせて選定します。小さい心臓試料を扱う場合も、組織の寸法だけでなく、包埋後の試料とチューブの組み合わせを確認します。



マウス心臓の組織切片に関するよくある質問

マウス心臓の切片は、固定してから作製しますか?

解析目的によって異なります。形態・分子局在などの観察には固定組織を、膜電位やCa²⁺動態などの機能解析には生組織を検討します。固定方法は染色標的や解析方法に合わせて選びます。


横断切片と長軸切片は、どちらを選べばよいですか?

心室断面の領域比較や心尖部から心基部への分布を調べたい場合は横断切片、長軸方向の細胞配向や組織の連続性を調べたい場合は長軸切片を検討します。どちらの場合も、解析対象と採取位置を明確にします。


アガロース濃度は一定でよいですか?

組織の硬さ、固定の有無、内腔、目標厚などに合わせて検討します。Precisionary社も、試料と包埋条件の組み合わせによって切片品質が変わることを案内しています。論文や別の組織で使用した濃度を、そのまま共通条件にはしないことが大切です。


コンプレストームは生組織と固定組織の両方に使えますか?

VF-510-0Zは、生組織と固定組織の切片作製に対応しています。生組織の機能解析には、切片作製に加えて、試料保持、回復、測定系の条件検討が必要です。


連続切片を別々の染色や解析に使えますか?

隣接する切片を異なる染色などに割り当てる設計は検討できます。切片番号と採取位置を管理し、隣接切片であっても同一細胞を観察しているとは限らない点に配慮して、目的に合う比較方法を選びます。


マウス心臓の切片作製・装置選定をご相談ください

マウス心臓の切片作製を検討している方、現在の切片で裂けや厚さのばらつき、組織の変形に課題がある方は、オレンジサイエンスにご相談ください。

お問い合わせの際に次の情報をお知らせいただくと、研究目的に合うモデルや条件を検討しやすくなります。

  • マウスの系統・週齢・疾患モデルと対象部位

  • 生組織または固定組織

  • 試料のおおよその寸法

  • 希望する切断方向・切片厚・作製枚数

  • 免疫染色、共焦点イメージング、電気生理、Ca²⁺測定などの解析目的

  • 現在の作製方法と、改善したい切片の状態


オレンジサイエンスは、研究機器の導入前相談から導入後の技術サポートまで対応しています。



「Compresstome®(コンプレストーム)」




参考文献




組織切片作製ソリューション


Precisionary社のビブラトームを使用して、組織研究用の健康で生存可能な組織スライスを作成します。



「Compresstome®(コンプレストーム)」

組織研究のための高品質で生存可能な組織スライスの入手

Precisionary Instruments 社のビブラトームは、サンプルの生理学的完全性を維持する正確で生存可能な組織切片を作成するように設計されており、下流の解析において最も信頼性の高いデータを確保します。


高精度ビブラトーム

Compresstome® は、サンプルの生存性と健全性を保ちながら、薄い組織スライスを作成するように設計されており、脳や肺の組織研究に理想的です。この完全自動システムは、研究で正確な結果を得るために重要な、組織切片の生理的完全性を確実に維持します。


VF-510-0Z

VF-510-0Zは特許取得済みの圧縮技術によりビビリ・チャタリングなしで切片を作製し、急性組織上の多くの生存細胞を維持。良質な実験結果を保証します。


Compresstome VF-510-0Z




VF-800-0Z

VF-800-0Z は、市場で唯一の大口径ビブラトーム組織切片作成スライサーです。ハイスループットな組織切片作製(最大20サンプル以上の同時切片作製)と大きな組織サンプルサイズ(臓器全体、肺葉など)に対応するように設計されています。



Compresstome VF-800-0Z





アプリケーション


実験別


臓器


動物モデル



関連コンテンツ





Compresstome©ビブラトームの利点


アガロース包埋

アガロース包埋とは、Compresstome©振動型マイクロトームで組織切片を切り出す前に、組織試料をアガロース溶液で包埋することです。切片作製にかかる時間はほんのわずかで、より健康的で滑らかな組織スライドを作製できます。


Auto Zero-Z®テクノロジー

振動ヘッドは、Z軸方向の振動をなくすように正確に調整されています。Auto Zero-Z®テクノロジーは、生きた組織サンプルの表面細胞へのダメージを軽減し、薄切片のチャタリングを低減してイメージング結果を向上させます。


豊富なアプリケーション例

Precisionary社は、20年近くにわたり組織スライス装置を専門に扱ってきた会社です。免疫組織学や組織切片の培養、電気生理学や植物研究など、幅広いアプリケーションと引用実績があります。








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