アガロース包埋による組織切片作製
コンプレストームで試料を安定支持
組織切片の厚さや表面の状態をそろえるには、切断中の試料を安定して支えることが重要です。柔らかい組織や小さな試料では、刃が当たる際の変形や位置ずれが、切片作製の課題になります。
Precisionary社のコンプレストーム(Compresstome®)は、アガロース包埋と独自の圧縮技術を組み合わせたビブラトーム・振動ミクロトームです。試料を周囲から支えながら切断し、電気生理学、免疫組織化学、組織スライス培養などに用いる切片の作製を支援します。

アガロース包埋とは
アガロース包埋は、試料の周囲をアガロース溶液で満たし、ゲル化させて保持する工程です。コンプレストームでは、専用の試料チューブ内で組織を包埋して切片を作製します。
ここでいう包埋は、組織をゲルで支えるための処理です。ホルマリンなどによる化学固定とは別の工程で、生組織と固定済み組織の双方に適用できます。試料の状態と、その後の観察・測定に合わせて条件を選びます。

コンプレストームでアガロース包埋が重要な理由
底部の接着と、周囲からの支持を組み合わせる
メーカーの基本手順では、試料をチューブ内のプランジャー底部に接着し、その周囲をアガロースで包埋します。底部を保持する接着と、試料全体を支えるゲルを組み合わせる構成です。アガロースによる周囲からの支持は、切断時の試料の揺れや変形を抑えるために働きます。接着剤とアガロースには、それぞれ異なる役割があります。
圧縮技術により、切断位置で試料を支える
アガロースで包埋した試料は、チューブから送り出される際に先端で穏やかに圧縮され、その位置で振動刃によって切断されます。包埋したゲルとチューブの構造が、切断中の支持に関わります。コンプレストームは、この構成により切片表面のビビリ痕(チャターマーク)や厚さのばらつきを抑えることを目指した装置です。
試料の支持と、刃のZ軸方向の振動抑制を組み合わせる
Auto Zero-Z®テクノロジーは、刃のZ軸方向の振動を抑えるための技術です。アガロース包埋による試料の支持と組み合わせ、滑らかな組織切片の作製を支援します。切片の状態は、包埋条件、刃の状態、切断速度などにも左右されます。
アガロース包埋による組織切片作製の5ステップ
以下はコンプレストームを用いた基本工程の概要です。組織別の処理や具体的な設定は、手順書と実験目的に合わせて決めていきます。
1.試料と解析目的を確認する
組織の種類、新鮮組織か固定済み組織か、試料サイズ、必要な切断面と切片厚を整理します。培養や機能測定を行う場合は、生存性を保つための試料処理も合わせて検討します。
2.アガロース溶液を準備する
包埋に適したアガロースと溶液を選び、十分に溶解してから包埋に適した温度に調整します。低融点アガロースを使用する場合も、製品ごとのゲル化特性を確認します。
3.試料の向きと位置を決める
必要な切断面が得られる向きで、装置操作の基本手順に従って試料をプランジャー底部に保持します。小さな試料では、包埋中の傾きや位置ずれにも注意します。
4.周囲を包埋し、ゲル化させる
試料をチューブ内に配置し、周囲をアガロース溶液で満たします。気泡が残っていないか確認し、メーカー指定の冷却手順でゲル化させます。
5.切片を作製し、回収する
包埋した試料を装置にセットし、切片厚、送り速度、振動条件を設定します。回収した切片は、染色・観察・培養・機能測定など、次の工程に適した条件で扱います。
包埋・切片作製の条件を決めるポイント
アガロース包埋では、試料を支えるゲルの性質と、組織の硬さや形状との組み合わせが重要です。切片の品質が安定しないときは、包埋と装置設定を合わせて確認します。
確認する項目 | 条件を決める際のポイント |
|---|---|
アガロースの種類・濃度 | ゲルの強さ、組織の硬さ、必要な支持力を考慮する |
包埋時の温度・冷却 | アガロースのゲル化特性と、試料に適した温度管理を確認する |
試料の向き・位置 | 必要な切断面を決め、包埋時の傾きや位置ずれを確認する |
気泡・支持の状態 | 試料周囲の気泡や、組織が十分に支持されていない部分を確認する |
刃・切断条件 | 刃の状態と位置、切断速度、振動条件を見直す |
アガロース包埋を用いた組織切片の研究用途
脳切片・電気生理学・スライス培養
脳スライスを用いた電気生理学や培養では、組織の構造と生存性を考慮した切片作製が必要です。コンプレストームは、これらの研究に用いる組織切片作製の選択肢になります。
免疫組織化学・蛍光染色
免疫組織化学では、切片の厚さや平坦性が、染色と観察を行う際の試料条件になります。固定組織を含め、解析目的に適した切片厚と前処理を検討できます。
精密切断肺スライス(PCLS)
肺のように空隙を含む組織では、外側からの包埋に加え、内部を支持するための処理が重要になります。メーカーは、アガロースを用いた肺組織の支持と、PCLSの作製例を紹介しています。肺専用のプロトコルに沿って準備します。
オルガノイド・微小試料
小さな三次元試料では、切断面の位置や向きをそろえることが課題になります。メーカーは、オルガノイド研究への適用と、微小試料の包埋を補助する方法を紹介しています。試料サイズと解析目的に応じて保持方法を検討します。
アガロース包埋に対応するコンプレストームのモデル
オレンジサイエンスでは、研究用途や試料サイズに合わせてコンプレストームをご案内しています。
モデル | 主な特徴 | 検討する用途 |
|---|---|---|
VF-510-0Z | 全自動モデル | 電気生理学、組織スライス培養、イメージングなどの切片作製 |
VF-210-0Z | 半自動・手動厚み送り | 手動で切片厚を調整しながら進める切片作製 |
VF-800-0Z | 大口径・全自動モデル | 大きな試料やハイスループットの切片作製 |
使用する組織、試料の大きさ、希望する切片厚、作製枚数をもとに、適したモデルを選択できます。
アガロース包埋・組織切片作製のよくある質問
アガロース包埋は生組織にも使えますか?
生組織にも適用できます。生存性を必要とする実験では、包埋時の温度、処理時間、緩衝液
などを組織別のプロトコルに合わせます。
接着剤だけで切片作製を行えますか?
コンプレストームでは、アガロース包埋を基本工程として推奨しています。接着剤による底部の保持と、アガロースによる周囲からの支持を組み合わせます。
アガロースの濃度はどのくらいにすればよいですか?
組織の硬さ、アガロース製品の特性、目的の切片厚などによって適した条件が異なります。組織別の推奨条件を出発点に、支持力と切片の状態を確認して調整します。
低融点アガロースなら、どの製品でも使えますか?
製品の名称に加え、ゲル化温度、ゲルの強さ、使用する溶液との適合性を確認します。アガロースを溶かす温度と、試料を包埋する温度も分けて管理します。
切片の周囲に残ったアガロースは取り除けますか?
Precisionary社では、切片周囲のアガロースを除去する方法を案内しています。残すか除くかは、その後の染色・観察・培養の手順に合わせて判断します。
パラフィン包埋や凍結は必要ですか?
コンプレストームでは、アガロース包埋を用いて、パラフィン包埋や凍結を行わずに切片を作製できます。化学固定の要否は、組織と解析目的に応じて決めます。
アガロース包埋・組織切片作製のご相談
「柔らかい組織が切断中に変形する」「切片の厚さがそろわない」「培養や測定に適した切片を作製したい」といった課題をお持ちの方は、オレンジサイエンスへご相談ください。
お問い合わせの際は、次の情報をお知らせいただくと、試料に合う装置や使用条件を検討しやすくなります。
組織・試料の種類
新鮮組織/固定済み組織の別
試料サイズと、希望する切片厚
染色、蛍光観察、電気生理学、培養などの解析目的
現在の切片作製で困っていること

組織切片作製ソリューション
Precisionary社のビブラトームを使用して、組織研究用の健康で生存可能な組織スライスを作成します。

組織研究のための高品質で生存可能な組織スライスの入手
Precisionary Instruments 社のビブラトームは、サンプルの生理学的完全性を維持する正確で生存可能な組織切片を作成するように設計されており、下流の解析において最も信頼性の高いデータを確保します。
高精度ビブラトーム
Compresstome® は、サンプルの生存性と健全性を保ちながら、薄い組織スライスを作成するように設計されており、脳や肺の組織研究に理想的です。この完全自動システムは、研究で正確な結果を得るために重要な、組織切片の生理的完全性を確実に維持します。
VF-510-0Z
VF-510-0Zは特許取得済みの圧縮技術によりビビリ・チャタリングなしで切片を作製し、急性組織上の多くの生存細胞を維持。良質な実験結果を保証します。

VF-800-0Z
VF-800-0Z は、市場で唯一の大口径ビブラトーム組織切片作成スライサーです。ハイスループットな組織切片作製(最大20サンプル以上の同時切片作製)と大きな組織サンプルサイズ(臓器全体、肺葉など)に対応するように設計されています。

アプリケーション
実験別
臓器
動物モデル
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Compresstome©ビブラトームの利点
アガロース包埋
アガロース包埋とは、Compresstome©振動型マイクロトームで組織切片を切り出す前に、組織試料をアガロース溶液で包埋することです。切片作製にかかる時間はほんのわずかで、より健康的で滑らかな組織スライドを作製できます。
Auto Zero-Z®テクノロジー
振動ヘッドは、Z軸方向の振動をなくすように正確に調整されています。Auto Zero-Z®テクノロジーは、生きた組織サンプルの表面細胞へのダメージを軽減し、薄切片のチャタリングを低減してイメージング結果を向上させます。
豊富なアプリケーション例
Precisionary社は、20年近くにわたり組織スライス装置を専門に扱ってきた会社です。免疫組織学や組織切片の培養、電気生理学や植物研究など、幅広いアプリケーションと引用実績があります。
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